ありがちなファンタジー作品 小品(書きかけ)
ありがちなファンタジー作品を書きたいという欲求だけで書きました。
クロスボウの矢が上手くつがえない。
手が震える。
眼下には大量のオークの群れが梯子をもって城壁へ迫ってきている。
慌てる、呼吸も荒くなる。
数日前まで街の学校に通う学生の身分だったのが、地域に魔族の大群が来たというので。武器などもったことなかった身が3日の訓練で城壁に配備させられたのだから。
弦からカランと城壁の通路に矢が落ちる。
「小僧おちつけ」
顔をあげると隣のクロスボウを手にオークに狙いをつけている老人だ。
「お前さんが初陣だというのはわしもよく知っている」
そういいながら一矢。
ひゅんと音を立てて、眼下のオークに吸い込まれるように。
命中。
倒れるオーク。
爺さんは次の矢を手に取る。
「慌てるのはよくわかる、お前さんが頑張らなくても大丈夫だ。ほら門を見てみろ」
遠くを見ると門上にいる司令官が斉射と叫ぶ。
大量の矢がオークの群れに雨のように降り注ぐ。
勢いが鈍る。
しかしオークたちは死体を越えて次から次へとくる。
早く僕も矢を撃たないと。
慌てる手で地に落ちた矢を取る。
「訓練を思い出せ」
肩を叩かれた。
「深呼吸だ、そしたら弦のここをつまめ」
矢を手に取り、指摘されたとおりに弦をつまむ。
「そうだそのまま、いいぞ、きちんとセットで来たな、撃ってみろ」
矢は戦場の血なまぐささと関係ない快晴の青空に向けて放たれ、そして矢じりの重さに下向きになりそして地面へ突き刺さった。
「もう一矢だ」
僕は先ほどの手順を思い出してもう一度発射した。
今度はオークに命中。
「よくやったな、これがお前の初戦果というわけだ」
「はい」
僕は腹の底から声を出した。
それは戦場に駆り立てられたという恐怖感をはねのけるため。
下を見ると、オークが城壁に梯子を立てかけ始めている。
司令官が叫ぶ。
「投石開始」
オークに向けて大量の石が降り注ぐ。
老人が喋る。
「オークは対したことない、先兵だからな、何体かは登ってくるがすぐに撃退できる」
「お前さん学生だろ」
「そうですが何で知ってるんですか?」
「そら学校の前に俺の酒屋があるからな」
「ま、話はあとだオークを倒すぞ」
僕は弓矢を撃ち、城壁を登ってきたオークは街の正規軍がたおしてくれた。
オークたちは壊走して逃げていく。
「やれやれ、第一波終わりといったところか、第2波は当分後だろう、坊主お疲れだな」
老人は背伸びをしてクロスボウを置いた。
僕もクロスボウを置く。
「所で僕のことを知っているんですか」
「あれだ、さっきも言ったが、学校の前に酒場があるだろ、あれは俺が経営しているんだ」
「お前さん、うちの店に来たことがあるだろ」
「ええ、学校の不良グループに誘われて酒を飲まされそうになって、その後カードゲームをしました」
「マスターだからな、来た客のことは忘れない」
「坊主名前は?」
「トルク・エビン、父はマルク・エビン、母はカーク・エビンです」
「君はマルクの息子か」
「マルクもうちの店の常連でね、14で酒を飲んで、よくギャンブルに興じてたよ」
「堅物の父が?それは知らなかったです」
「昔はあいつもやんちゃだったからな、とはいえうちはいいとこのお坊ちゃんの来る酒場だ」
「ギャンブルに酒に、歌を歌ったり踊ったり、健全なものさ、金をせびったり喧嘩が起こったり本当の悪は少ないがな「」
「そうなんですか」
「そんなものさ、とはいえ学長はうちの店を学生を堕落させるといってるがね」
「学長と知り合い?」
「ああ昔からの旧友でね、若い時の武勇伝もたくさんあるのさ」
「俺は酒場の跡継ぎであいつは貴族の出だから結局年を取ったら袂を分かったけどな」
「所でお前さん、まだ16にもなってないようだが、なぜ戦場に?」
「それはですね」
僕は説明を始めた。
3日前のこと、学校が終わり、学校前の酒場で皆で飲もうかと相談していたところに先生が入ってきた。
「皆さん、学校はしばらく休校です」
「街の周りに魔族の大群が攻めてきました、我々も街を護るために民兵として参加します」
教室内のケビンが即答した。
「参加します」
ケビンは騎士の家系。
幼いころからそう教えられて育ってきたのだから当然だろう。
他の生徒は戸惑っていた。
何せこの学校は、商人の家系が多い。
ケビンが例外なのだ。
結局僕は親友のケビンとの友情のために参加することを決めた。
「ということです」
「友のためか中々やるね」
「結局魔族の目的は何なんでしょうか?
「さあな魔族の考えることなど分からんよ」
--司令部--
街の中心部にある教会。
城のない商業都市であるこの街は、教会が臨時の司令部として採択されている。
礼拝用の椅子が取っ払われ、戦神の封じられた像が置かれている。
「これが今回、偵察兵の報じた魔族の攻勢です」
臨時に都市防衛に組み入れられた盗賊ギルドの長。
偵察兵として使われている彼らがケビンの父親たる騎士団長に報告する。
「ふむ、この街を落とすには数が少ないか」
騎士団長が配下の騎士に尋ねる。
「他の都市からの援軍はどうなってる」
「それが、リース、トール、ハイル、他の近辺の都市も魔族の攻勢を受けている模様です」
「地図がこちらに」
「これは」
騎士団長が驚きの声を上げる。
「参謀、明らかにこれはあれだ」
傍らに控えていた参謀が答える。
「明らかにあれでしょうな」
「あれとはなんですか?」
若い騎士が質問した。
「破壊神都市ゾールを囲む都市が襲撃を受けている」
「どう考えてもゾールにある破壊神の躯が狙いだ」
「躯、なぜそんなものを?」
若い騎士は物を知らないようだ。
「参謀、説明してやれ」
「破壊神都市ゾールには破壊神の躯が存在するのですが、毎年大地の力を吸収し復活へ向けて再生しております。
ゾールでは破壊神の躯を解体することで、貴重な魔法資源を採取しております。魔族たちの狙いは破壊神の復活ではないかと」
「参謀ありがとう」
騎士団長が答える。
「破壊神ですから、異世界の邪教徒といえど参戦者は少ないでしょうな」
参謀が続けた。
「とすると敵は魔族中心か」
「破壊神都市ゾールの防衛はどうなっている」
参謀が答える。
「同盟を結んだ地球人類、EUの機械化部隊と破壊神研究の魔法使い精鋭が守ってはおりますが、軍事の専門家は総数が少なく早急な援軍が必要かと」
「よし、援軍2000を送ろう」
「街の守りはどうなります?」
騎士団長は答える。
「戦神の像があるから大丈夫だ、奇跡の力を行使させる」
「はい」
騎士たちは敬礼を返す。
会議は残りの兵士による街の防衛の話になった。
街は円形の城壁に守られている。
城壁が破られたときに備え、内部に騎士を隊長とする市民自警団の配備。
城壁上へ配備している市民兵の休息交代時間の決定。
物資や武器を持っている商人たちからの籠城戦物資の購入。
色々と話題に上る。
一人の騎士が聴いた。
「ご子息が前線に配置されているようですがいかがいたしますか」
「私はそのようなおべっかは好まない」
騎士団長は答える。
「お前のようなものは、戦争の邪魔だ、城壁勤めを命ずる」
失言をしたとさっと青ざめる騎士。
「さて、諸君、邪魔者もいなくなった、それでは戦争だ」
--破壊神都市ゾール--
ゾールでは混乱が広がっていた。
人口のほとんどが破壊神を解体し加工するための職人なのだ。
職人は荒っぽい連中が多いが、戦争の専門家というわけではない。
魔族の大群がゾールへ向かっていると旅人が見つけたのが4日前。
早馬がゾールに報告をもたらしたのは2日前。
ゾールを抜け出すものは後を絶たない。
ゾールへ魔族が到達するのは明後日だと噂が飛んでいた。
街のメインストリートは脱出のための道具や食料を求める人でごった返している。
それを窓から見下ろしながら、領主のギュスタ・ワイルズはため息をついた。
「みたか、この混乱ぶりを、魔法使い連盟6つの杖が長年かけて作り上げてきた非常時対策術も全く機能しておらん」
傍らに控える執事が答える。
「そのようで」
ゆったりとした灰色のローブを来た男が答える。
魔法使いの服装だ。
「これは心外、我々は破壊神の復活速度増加から破壊神資源の枯渇、魔族の大群の到来まで様々な対策を立ててきました」
「それではこの市民の脱出も、予測の内だというのかね」
「御意」
「我々魔法使いの魔法は広域破壊、市民がいれば多数の犠牲者が出ますし魔法も使いにくい、それに地球人類は市民を戦争にまき来ないよう明言しております」
「そうなのか」
「地球人類の言葉でいえば、ゲリラ戦、我々魔法使いの戦いはそれですからな」
「ゲリラ戦、聞いてはいる」
「それに、市民軍を2000は確保できております、我々魔法使いの盾になってもらいましょう」
全く市民をなんと考えているのか、領主は魔法使いという人種に嫌悪感を示す。
人を盾としか思えない。
そんな存在に、市民兵たちが命を懸けるだろうか。
「分かっているだろうが、事は破壊神の復活問題だ、失敗すれば周囲の都市は全て壊滅だぞ」
「分かっておりますわかっております、お任せください」
そういって魔法使いは部屋の分厚い扉を開け退出していった。
「執事、周辺国からの援軍はどうなっている」
「魔法使いのネットワークによれば、どの都市も魔族の攻勢を受けていると」
「おそらくわが都市への足止めかと」
「ううむ、援軍はあまり期待できないか」
「伝令」
伝令兵が入ってきた。
「都市ソーンから兵2000、3日後に到着するとのこと」
「おお、ありがたい」
「ソーンに、貴都からの援軍感謝すると伝えるように」
「伝令、指令室に物価の統制を行うよう伝えてくれ」
「戦争に付け込んで無辜の市民に高値で売りつける商人が出ないよう市街の見回りを増やすよう」
「他に伝令は」
「ない」
伝令が退出する。
さてどうしたものか、市民軍2000人、都市正規軍1000人、EU軍500人、魔法使い300人。
2000の援軍が来るとはいえ、敵の魔族は1万を超える。
上級魔族となれば地球人類の兵器は役に立たない。
上級魔族に対抗できるのは、魔法使いだけだ。
魔法使いたちといえば訓練はしていたが、研究肌が多い。
彼らの戦闘理論が机上の空論とならなければよいが。
後書きは仕上がった時に書きます。