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つまらない世界は終わりました  作者: 伊勢海老
1/2

つまらないは贅沢だった

最近家の前に猫同士が争っているなと思って通り過ぎたら1方は狸でした、まさか種族を超えた争いをこの目で見る日が来ようとは。


初投稿で誤字脱字など色々あると思いますがよろりくお願いします。

 気がつくと俺は山の少し飛び出て草原になっている木陰に横たわっていた、そして俺の視界の右側に真っ黒い綺麗な青い目をした猫がいる。

  おかしいなこういった状況なら美少女がいるはずなのに。


「世知辛いなぁ」


  猫が呟く。

  あ、この猫喋るんだ、熱中症で頭でもやったか?それともすでに死んで天界とかそれらしいとこに来たのか?このダンディーな声してる猫が案内してくれる的な?


「なんかかっこいいことを言ってみたがどうだ、今の私かっこいい?」


「少なくともかっこいいと自分から聞く人間・・・じゃなくて猫はかっこよくないです。あの、ここは何処ですか?」


「なるほどやはりインパクトに掛けていたか」


「どういう言葉の捉え方をしたらそうなるですか、あと俺の質問には答えてくれないんですね」


「ん?なんだ目が覚めていたのですか待ちかねました」


「今の独り言なの!?」


「冗談ですよこんな独り言を言うことは流石にたまにしか無い」


  あ、たまにはあるんだ。


「それはさておきこんにちは、私は暁茜の使い魔タチですよろしく、ちなみにここは貴方が倒れた場所から二百メートルほど離れた場所にある山の中腹です」


「へぇ」


  なんと、俺はどうやら助かってしまったらしい携帯電話すら携帯していない俺だったが運だけは携帯していたようだ。


「俺の名前は柊瞬といいます、現状を上手く飲み込めないのですがえっとタチさんが俺を助けてくれたんですか?あと最大の質問なんですが猫である貴方がなぜ喋っているのでしょうか?」


「生憎私は何もしておりません私はずっとあなたがおかしな事をしているのをここで面白おかしく眺めておりました」


「性格悪いなあんた!」


  とんだ人でなし・・・じゃなくて猫でなしだな、うん。


「もうひとつの質問に答えると私は使い魔ですので言葉位喋れます」


「使い魔ですか、なんだか急にファンタジーになりましたね、もしかして俺を助けたのは貴方のご主人ですか?」


「その通りです無駄に冴えてますね」


  なぜこの猫は上から目線なんだろう、確かに俺は今寝転んでる状態なのでこの猫は俺を見下ろしていて上から目線であるが、話を聞いている限り助けたのはご主人でありお前ではない。


  それはさておき色々おかしな事が起きているので状況を整理していいだろうか?

 

  本日つまりは八月一日、高校三年生である俺、柊瞬は外へ出かけた。

  夏休みのせいで生活リズムは崩壊しなんとか元通りにしようと徹夜してみたが昼に限界を感じたので外に出たら眠気なんて無くなるだろと安直な考えの元ジャージに三百円だけポケットにぶち込んでここから一番近いコンビニに週刊誌を徒歩で買いに行った。


  そういえば今日最高気温更新だったっけ、まあいいや夏休みやること無くて筋トレしまくった俺にもはや敵などいない、太陽でも月でもなんでもかかってこい。


  「案外遠いな」


  それから十分程歩いて見たが予想以上に遠いことが俺の調べで分かった、今丁度半分位で十分かてことは往復四十分・・・長ぇ!

  流石田舎だぜ完全に侮っていた、さてどうするこのまま引き返して家に帰るか?いやそれだと折角ここまで来た俺の努力はどうなるここは攻めるべきだろうか、いや待てこの機会を逃すとコンビニの方が近くなってコンビニに行かざるを得ない、でもそうしたら四十分コース確定だぞやはり帰った方が・・・だめだ、俺には決めかねん。


  俺はポケットから百円玉を一枚取り出し親指で弾いた、ここで表が出れば俺はそのまま歩いてコンビニまで行き逆に裏が出れば引き返す俺の命運はこの百円玉に委ねられた、さあ!俺の行くべき方向はどちらだ!


「ん?」


  俺は上がっていく空中の百円玉を目で追いかけ俺が弾いた力と重量が釣り合った俺の視界の中に何かが物凄いスピードで空を通り過ぎていくのを捉えた、逆光でこちらからは黒い塊にしか見えなかったが鳥では無いのは確かだ、なんだあれ。


「あ!俺の百円!」


  空中の未確認飛行物体に気を取られ金属が地面に落ちる音を聞いた時には俺の百円玉は排水溝に吸い込まれていた。

  先日の台風の影響で排水溝には水が絶え間無く流れている、もう取るのは不可能だろう。

  やられた・・・さっきのあれは幻覚か何かだろうか改めて上を見渡しても雲一つない青空が広がっているだけだし、この灼熱地獄によって熱中症になったかもしれない、そうだとするともう帰った方がいいだろうこのままではさらに熱中症が悪化するかもしれないが幸い筋トレの成果か何か知らないけど汗は止まっているしなんだか体も軽くなってきた。


「なら攻めるか」


 このままノコノコ家に帰ったら俺はただ外に出て百円落として帰った哀れな人間になるじゃないか、俺は溝に吸い込まれていった百円玉の為にもこのミッションを完遂する義務がある、百円お前の敵は俺がとる。

 

  そして今に至る。


  馬鹿だ俺・・・例え徹夜明けの謎テンションでもあそこまで酷くなるものなのか、しかも筋トレってまだ始めて三日だし、汗止まるってそれ熱中症の末期症状じゃあないか。だが今回は本当に運が良かった、ここは田舎だから人なんて昼間は一時間に一人通るか通らないかの道だったからなあのままだと死んでてもおかしくなかった。


「どうされました?私に褒められて感動し言葉も出ませんか?」


「・・・えっと、はいそうですね、それよりも貴方のご主人に会いたいんですが直接お礼を言いたいので」


「ツッコミを諦めただと!?お前さてはニュータイプか」


  これも俺が突っ込まきゃならんのか。


「あとご主人でしたらそこに居ますよ」


「え?」


  俺はタチのいる方向とは逆に首を曲げる、すると俺とは垂直にうつ伏せになっている女の人と目があった、その距離わずか十センチ。


「うおっ!」


  思わず驚きの声を上げてしまう。


「やっと気づいてくれた待ちくたびれたよ」


  彼女は黒いローブを身に纏い長い黒髪を風になびかせながら笑顔で微笑んだ。

  待ちくたびれるならせめて何かしらのアクションをおこしてください。


「初めまして柊瞬君私は暁茜ですこの辺りを縄張りとする魔法使いです」


  彼女暁茜は躊躇うことなくそう言った。


「魔法使いですか先程は助けてくれてありがとうございます」


  俺はそう言いながら体を起こす。


「あれ?もっと驚くか疑うとかすると思ったのに」


「まあ喋る猫見たあとですからねそりゃあ信じますよ」


「ふーんなんだか思っていた反応と違ってあんまりこちら側としては楽しくないけれどまあいいや、にしてもあんたのあの悶え苦しんでいた顔傑作だったわあの顔で私とお笑いで天下取らない?」


「初対面なのに馬鹿にし過ぎじゃね!?」


  俺自身そこら辺の記憶は無いのでなんだか腑に落ちないが取り敢えず突っ込んでおく。というかこの人すごく馴れ馴れしい、まだ会話を初めてすぐなのになんだこの仲のいい親戚のお姉さんみたいな感覚は。


「で見たところ山の中腹でしたっけ?出来れば早く下山したいんですけど、魔法使いなら箒とかで空飛んで降ろしてくれるんですか?」

  俺は立ち上がり外を見渡す、先程まで熱中症だったので立ちくらみ程度は覚悟していたがそんなことは無く逆に元気な程だった、手厚い看病を受けたのか、それとも魔法使いという程だし何か俺に魔法か何かをしてくれたのかもしれない。


「あっ」


  茜が何かを見落としていたかの様な声を挙げる。


「不安になるような声出すの止見てくださいよ——もしかして箒無くしたとかじゃないでしょうね?」


「大丈夫箒ならあるよほら・・・でも」


  何そのゴツイ箒、デコってんじゃんギラギラじゃん。もう箒の原型留めてないくらい改造済なんですけど。

  例えるならスマホを箒だとしてギラギラコテコテのスマホカバーで画面まで見えなくしてある見たいな感じ。多分箒に跨る部分なのだろうかそこだけは何も改造というかデコレーションはされていない、そう考えるとスマホの例えだと画面のタッチ操作出来る部分だけを除いてスマホカバーを付けているという方が正しいかな、まあそれだと普通のスマホカバーになっちゃうが、何となく言いたいことは分かると思う。


「でも?」


  それにはあえて突っ込まない俺大人。


「まだ私空飛ぶの慣れてなくてさっき柊君を担いで飛んだじゃない?」


「いや気を失ってたしわからないですけど」


「それで魔力使い切っちゃったんだよねなので今体を動かすのも一苦労です」


  あーあるほど分かったこいつ馬鹿だ。

  何か初見でこいつと会話すると違和感があったのはそういうことだったらしい。

  だからさっきからうつ伏せで寝そべったまま動こうとしないのか。


「だ、大丈夫!最悪歩けるまで魔力が回復したら下山するって方法あるし」


「いや茜様の回復を待って下山していたら日が暮れるでしょうな」


  タチが会話に参加する。


「ふむ、なら仕方ない私の魔力が全回復するまで待とう!」


「待とう!ってどんだけ行き当たりばったりな性格なんだよ、助けてもらって言うのもなんだがもっと後先考えて行動しろよ!」


  こいつの第一印象は頼り甲斐のあるお姉さんみたいなイメージだったのに・・・化けの皮剥がれるの早すぎだろ。




「一つ提案があるのですがいいですか?」


「なんだタチ言ってみろよ」


  あの後数時間茜の回復を待つのも嫌なので俺たちは色々打開策を練るために動けない茜の周りに集まり会議を開いていた。


「柊さんが箒の乗り方を学んで皆を連れ降りるというのはどうでしょう」


「え、俺でも空飛べんの?!」


「まぁ人間なら少なからず魔力は持っているものですし今回は上に上がるのではなく降りるだけなのでさほど難しくは無いはずですよ」


「へぇーこういうのって箒に乗れんの女性だけかと思ってたわ」


  俺の中では女性が箒に跨っている印象が強い、漫画の見すぎか?


「いえ、少なからず男性の魔法使いもいますよただ女性のほうが魔力の基礎値が高い場合が多くて魔法使いは女性が圧倒的に多いですね」


「だとしたら魔法使いは女ばっかってことか・・・いいね!」


「その思考なんか童貞臭いわね」


「さて俺はどうしたらいい?」


  茜がよく分からないことを言っているがスルーした。


「まずあなたの総魔力を見させてもらいますそこに落ちている葉っぱを握ってください」


「こうか?」


「そのまま何かしら呪文を唱えてください」


「随分曖昧だな何でもいいのか?」


「えーっとまあ何でもいいですよ」


「じゃあえーっと、封印されし我が力を今解き放て!とか?」


  あれ、何も起こらない、もしかして俺には魔力が一切無いとかそういうオチじゃないだろうな。

  俺に魔力が無かったのは残念だが今は次の打開策を考えねば。


「えー随分恥ずかしい言葉を聞けたところで魔力を計りましょうか」


「てめーやりやがったな!」


  まあこんな少し考えれば分かるような子供騙しに引っかかる俺が悪いな、うん。


「まあまあキャットフード・・・じゃなくてキャットジョークですよ沸点低いですね」


  やっぱりこの猫あとで埋めてやろう。


「あひゃひゃひゃ!瞬だっさ!流石にあの呪文は無いわ、厨二病こじらせすぎでしょ」


  あいつも後で埋めておこう。


「では普通にやりますね、まず手を私の頭に置いて・・・そうです、ほうなるほど問題無いようですねその魔力だと箒は余裕で扱えますよ」


「で次はどうしたらいいんだ」


「箒に跨ってください」


「こうか?」


「はいそうです、そのまま何かしらの呪文を」


「それはいいから」


「・・・適当に飛んでください」


「拗ねんなよ!」


「私が何回も乗って魔力を通わせてあるから適当でも飛べる筈よ、箒に魔力を通わすのが一番難しいから」


  魔力が少し回復したのか立ち上がってこちらに茜が近ずいてきた、また絶好調には程遠い茜のだらしない歩き方はさておきよく見るとこいつなかなかの美人だぞ、スタイルもいい、見た目だと二十台前半と言ったところか・・・ん、まてよこれは茜が乗っている箒だろ——つまりは。


「どうしたの?早く一回練習で飛んで見なさいよ」


「そういやお前この箒を股に挟んで飛んでるんだな」


「なっ!さてはとんでもない事想像してるな」


  茜の顔が若干赤くなりつつも呆れた様な口調で返してきた。

  案外この魔法使いはピュアなのかもしれない、今度馬鹿にされたらそこら辺から攻めていこう。


「いいから早くしろ!」


「え」


  照れ隠しか何かよく分からないが何故か俺は茜になかなか強めに押され体勢を崩した、そのまま力の流れに負けこけた先には何も無かった、つまりは空中に投げ出された。

  俺は重量に従ってそのまま落ちてゆく。


  何してくれてんだあの魔法使い!まずい死ぬ!


「箒を信じて飛ぼうとしてみてください」


  タチが落ちる俺を見下ろして叫んだ。

  飛ぶ?飛ぶと言えば最近魔法使いが出る人気アニメ映画を見直したばかりだったな。こんな感じか?


  俺は体制を整えて目を瞑り頭の中で上に上がるのを意識する、これが上手く行かなかったらこのまま俺死ぬんだよななんだか走馬灯の様なものが浮かんでこようとしている気がする。

  このまま死んだら後々俺の部屋のPC漁られるそして家族に秘蔵ファイルがばれる、やべぇじゃん、こんなところで死ぬわけにはいかん!


「あ、おかえり」


「へ?」


  声が聞こえたので目を開け上を向くとゆっくりであるがタチと茜の顔が近くなっていく、無事落ちる前と同じ場所に着地することが出来た。どうやら俺の性癖はまだばれずに済みそうだ。


「どう?簡単だったでしょ?」


「・・・おい、そこのバカ、バンジージャンプの用意はすんだか」


「そのバンジージャンプ絶対命綱ないよね!」


  当然だ、一歩間違えれば今頃飛んでいるのが俺の魂だけとかになっていたかもしれない、本当にこいつはいらんことばっかしやがる。


「あ、あれは確かに反省しているわ、でも元はと言えば瞬があんなセクハラみたいなこと言うのが悪いでしょう?ね?」


「まぁそれもそうか、でも次あんな注意力の無い行動したら許さんからな」


「肝に命じます」


  説教もこのくらいにして俺はこのあとすぐ二人と一匹を箒に乗せ人通りの少ない神社に降りた、魔力が底を尽きかけているのか若干の体のだるさを感じたので軽く休憩してから帰ることにした、幸いこの神社には神主やらは不在で田舎なので人も滅多に来ないので罰当たりかも知れないがお賽銭箱の前にある階段に右から俺、茜、タチの順に仲良く横に座った。

  時刻はもう三時を回っている。


「そう言えばまだちゃんと自己紹介してないな」


「そういえばそうね、にしては随分仲良くなっちゃったね」


  だいぶ魔力が戻ってきたのか顔色が良くなってきた茜が笑顔で告げる。


「俺はお前にツッコミを入れていた記憶しかないのだが」


「自己紹介なら私から先に行かせてかただきましょう!」


  タチが張り切っている、この短い時間でタチという猫がどんな猫なのか分かってきた俺からすればだいたいろくなことを言わないと想像できる。


「真面目にしろよ」


  釘は刺しておく。


「・・・吾輩は猫である、名前はまだ無」


「あ、そういうのいいんで」


「・・・暁茜様の使い魔やってますタチです百六十二才ですオスです以上」


  釘の刺し方が緩かったようだ、今度は本当の釘でも刺しておくか、全くすぐ拗ねやがって——ん?


「百六十二才?!」


「魔界の猫は長生きなのよ」


  茜が説明する。

  なんだそれ長生きの度合い超えてるだろ。

  まあ色々信じ難い光景を目の当たりにしたので長寿で喋る猫がいても今更あまり驚かないが。


「ふーんで、その魔界って言うのはなんなの?魔王でも住んでんの?」


「いやいや、魔法使いの世界略して魔界よ」


  略し方おもろ、それ考えたやつギャグ線高め。


「魔法使いしかいない世界があるのか?」


「あるというか今この世界中の魔法使い皆魔界出身よ十八歳になったら外に出られるようになるの、場所は秘密で言えないけど存在するわ」

 

「だとしたら女性だらけの花園じゃん!」


「いや男性もちゃんといるから、あの世界で生まれた男も魔界で普通に職について働いてるわ」


「なんだよつまんな」


「瞬こそつまらない脳みそしてるわね、質問は以上かしら?」


「おい、そんな罵倒産まれて初めて聞いたぞ」


  先程から拗ねているタチの変わりに茜が色々説明してくれた。


「では次私ね」と茜が話し始める。


「暁茜二十歳この町に最近来た魔法使い、特技は死にかけると強くなります」


「あんたはサイヤ人なのか?!」


「懐かしいわね海軍との頂上決戦」


「ドラゴンボールとワンピース混じっちゃったよ、うろ覚えならそのネタ使っちゃダメだろ!」


「いやぁあれは痺れましたねぇ、人体錬成」


「タチもネタ分かんないなら乗ってくるなよ!もう世紀末みたいな世界観になってるよ!」


  タチは復活したようだ。

  こいつらと居るとかなりのエネルギーを持っていかれる。


「で?何かしらの質問はある?」


「あ、一つだけ」


「はいはいなんでしょう」


「どうして俺を助けたんだ?別に助けるとかなら救急車とかでも良かったんだぞ?わざわざ動けなくなるまでの魔力を使って俺を助けた理由を知りたい」


「あ!それ言い忘れてた!ナイス!」


  いやナイスと言われても。もし俺が質問しなれけばずっと忘れていたのかこいつは。それとも俺が質問すると思ってあえて言わなかったのか、そうするとこいつはバカを演じている賢いやつなんだけど——流石にそれはないか。


「でね、そのことなんだけれど貴方私を見たわよね」


「見たってそりゃぁ見てますけど今も」


  何を言いたいのだろう。


「相変わらず感が鈍いなぁ瞬は」


  そんな同窓会で中学の頃の同級生に会ったみたいなノリで来られても・・・。


「まぁつまり私たちはあそこら辺を瞬が倒れる前に一度通っていると言ったら分かるかな?」


「・・・・・・なるほどあの影あんたらか」


「その通り!」


  家からでてしばらくの時に上を通った大きい影はこいつらなのか。だが未だにそれが俺を助けたのかには繋がらない、と思う。俺が鈍いだけかもしれないが・・・。


「貴方は私たちを見た、認識した、しかも魔法を使っている所を」


「んん?うん確かにそうだな」


  茜達をを見た後もう一度上を見上げた頃には既に何も居なかったので俺から言わしてみれば認識どころかそれが人とは全く思っていなかったけれど、つまりは茜とタチは俺に見られたと勘違いをした訳だ。


「魔法使いの掟的な、なんか分厚い本の中のどこかしらに書いてあるんだけど」


「曖昧ですな」


「魔界以外では魔法を使っている所を見られては行けないって書いてあるんだよね」


「へぇ」


  魔法使いも苦労してんだな。

 

「あの掟はまあ言わば魔界の法律よ、それを私は破った事になる、日本でも法律を破ると罰せられる、それは魔界も同じことなんじゃよ」


「じゃよってなんじゃよ」


「ああ最後の方はおじいちゃんから言われたことそのまま喋った」


「で、お前はどんな感じに魔界で裁かれる訳?」


「知らないけど私には切り札があるから悪くて家の庭の雑草抜きとかかな?」


「罪軽くね?」


「そうねこの場合瞬の方が罪に関しては重いかもしれないわね、取り敢えずどの道魔界で裁きを受けるからそこまでのゲートを作るし下がってー」


「はいはい、よっこら・・・ん?今なんて言った?」


  俺の質問を無視し茜がそれこそ魔法使いかのように呪文の詠唱を始めるすると茜の足元から光輝いた円が現れる。


「失礼」


  その円の輝きがより一層強くなった瞬間タチが後から俺にドロップキックする、そのまま円の中にヘッドスライディングをかました俺は馬鹿と猫と共に円の光に包まれ神社から消えた。


  〜魔界首都アルキダ裁判所内〜


  ああなんだか物凄く酷い夢を見た気がする酷い夢、夢だうん、早まるなまだ目を開けてはならない、もしかしたら俺はベッドで睡眠中に寝ぼけて顔面にヤスリをかけた後ハンガーに吊るしてあるジャージにそのまま腕を通して寝た可能性だってあ

「起きろー」

  パチンパチンという効果音ではあったが両頬に伝わった痛みはその優しさのある音からは掛け離れていた、首が左右に激しく揺れそれに従って脳が揺れる、意識が再び無くなりかけた時茜からの目覚ましは終わった。


「お前往復ビンタで人を殺しかけたぞ!どんな怪力だよこのくそ女!少しぐらいこの現実から目を晒させろよ──っておい何だこの状況」


  茜を怒鳴っていた最中感じたこともない冷たい視線と殺意に俺は我に帰る、そして内装を一目見ただけてここが裁判所だと分かった、どうやらここは既に魔界らしい、服装も見慣れないものばかりだ、ここで俺はにわかに信じ難いが魔法使いを見たという罪で裁かれるのだろう勿論反論はするつもりだが俺が意識する点はそこではなく俺がまだ一言も弁解しめいないのに既に空気がとてつもなくひりついている事だった。

  具体的にどのような状況かと言うと先程のヘッドスライディングで顔面血だらけの俺をまるで猫を持つかの様にジャージの襟を片手で持つ茜、そして前方約十五メートル斜め四十五度の椅子にすわっている鬼の形相をした老人、その隣で笑いを必死に堪えているお姉さん、その少し下に見て見ぬふりをしている老若男女たち、後ろには老人に恐れを成しているギャラリー。


「あいつ死刑!」


  鬼の形相をした老人が立ち上がり人差し指を俺の方に指しそう怒鳴った。

 

  ふむ流石に起きてすぐ死刑宣告ということは無いだろうから別の意味があるのだろう、そうこれはきっと文化の違いによる挨拶のようなものかもしれない、こんにちはかおはようございますみたいな感じだろう、ここは挨拶を返しておいた方が良いだろうか、郷に入れば郷に従えということわざもある通りここは相手側の挨拶と同じ様にするのがベストだ、こちらの世界ではこんにちはの後はこんにちは、ならばあいつ死刑の後はあいつ死刑?なんかぱっとしないな、ここは安牌を取ってオールマイティな言葉でいくか。

  俺は茜から手を離してもらい深々とお辞儀をして。


「お前もな」


  と返した。

  お前もな、この言葉は相手に向かって発した言葉を相手が同意した上に相手も同じ気持ちですよと伝える言葉、つまりは最強!


「ガルシアさんこいつ本当に死刑にしていい?」


「裁判中に裁判長及び裁判官に暴言、二年又は三十万ルーツの支払いっと」


  この裁判の進行をしている裁判長の隣にいる黒髪の眼鏡が似合うお姉さんが何か恐ろしいことを呟きながら紙に書いていく。


「あれ違うの!?」


「瞬何言ってんの?馬鹿なの?死ぬの?」


  茜から馬鹿と言われたのはどうしようもなく心に来る物があるが、どうやらあの裁判長は言ったそのままの意味で合っているらしいのであの裁判長は俺に即死刑宣告をしたことになる、あれこれやばくね?


「もうおじいちゃんも真面目にして」


「じゃが茜ちゃんこいつめっちゃ腹立つんじゃけど」


「そうだもう少し俺の話も聞いてもら・・・おじいちゃん?」


「うんおじいちゃん」


「あの裁判長が?」


「あれ言ってなかったっけ?」


  俺は自分がした行いを改めて振り返る、茜のおじいさんが観ている中で茜をくそ女呼ばわり・・・。


  俺終わった。


「更に被告人柊瞬は被告人暁茜にセクハラ行為を行った疑惑があります」


「ガタッ」


「裁判長落ち着いてください、被告人柊瞬さんそれは本当ですか?」


「してないですよする訳ないじゃないですかこのく・・・茜さんにはそんな行為をした覚えはありません」


「この件に関しては報告してくださった方から直接証言して頂きます」


「誰だそんなホラ吹きは出て来い!」


「証言者タチさんです」


「世知辛いなぁ」


「おまえかよ!」


「この柊瞬容疑者は暁茜箒を貸した時に『この箒お前が又に挟んでるんだよな』見たいな事を言っていました」


「それは確かに私言われたわ」


「よし死刑」


「異性に対するセクハラ行為懲役十年又は三百万ルーツの罰金」


「あんな事言うんじゃなかったぁぁぁ!」


「結果は出たようじゃな被告人暁茜の判決を言い渡す人間界での目撃罪はその後の対処が迅速であったため罰金一万ルーツに処すがもし家で庭の草むしりしてくれたら私が替りに払うため無罪!」


「はーいおじいちゃんありがとう!」


「被告人柊瞬の判決を言い渡す」


「魔法使い目撃罪、裁判中に裁判長に暴言、異性に対するセクハラ行為これらの罪によって懲役十年及び三百三十万ルーツの罰金に処す」


「・・・はい」


  人生なんてつまんねーもんだと思ってたよそんな考えは贅沢だったんだ、まさかこんな形で俺の人生詰むとは。


「おじいちゃんそういえばまだ言ってなかったっけ私たち付き合ってるの」


「「は?」」


  裁判長と俺が頭にはてなを浮かべる。


「お、おい何言ってんだよ」


「私にいい考えあるから少し黙ってて」


「あ、茜ちゃん付き合ってるのって本当かの?」


「うん本当だよだから瞬をあんまり悪く言って欲しく無かったなおじいちゃん」


「ご、ごめんよ茜ちゃんまさか付き合ってるなんておもっとらんかったもんでのこれからはこの男のこと悪く言わんから冗談でも死刑なんて言わないから許してくれんかの?」


「いいけどその代わり瞬の罪を軽くしてくれない?」


「いやぁ流石にそれは難しいかのぅ」


「おじいちゃん嫌い」


「仕方ないなぁ今回だけだぞ?」


  どうにかなっちゃったよ。

  どんだけ孫に甘いんだよ。


「それじゃあ懲役十年を取り消し罰金三百万ルーツの刑に処す」


「ありがとうおじいちゃん大好きだよ!」


「どういたしましてじゃ、それじゃあこれにて閉廷!」

家族にノリで今度猫買うわ〜と言ったら

「なら私出ていくわ」とマジトーンで母親から言われました。

世知辛い・・・。



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