1話
短編? いいえ連載です。
「今すぐ私に告りなさい!」
そう言う少女は吉祥さや
吉祥印刷の令嬢であり、その美しい美貌と人並みはずれた頭脳は一部からは女神と称される。
だが、しかし。性格はワガママで傲慢。美しいが棘のある、まるで薔薇のようだとも言われる。
「……俺を誰だと思っている。お前が地に頭を擦りつけて乞うならば少しは考えるがな」
さて、それに返すは五十嵐京介。
五十嵐コーポレーションの跡取り。頭脳明晰スポーツ万能顔も良い、そこに『金持ち』というタグが付いているのだ。モテないハズがない。性格も素っ気ないところはあるが、基本的には親切なため『王子』と呼ばれている。
「なんですって!? 私がそれを望んでいるのよ、この私が!」
「フン。お前の言葉、そのまま返してやろう。『俺がそれを望んでいるんだ』」
そして顔をつきあわせにらみ合った後、同時に顔を背け自分の席へ戻っていった。
ところで、この二人の本音がわかった者はいただろうか?
二人の本音はこれである。
「今すぐ私に告りなさい! (ま、真面目に告白なんてできるはずないわ! 頷きなさい。返事は『はい』か『イェス』よ!)」
「……俺を誰だと思っている。お前が地に頭を擦りつけて乞うならば少しは考えるがな(俺から言えるわけないだろう!」
「なんですって!? 私がそれを望んでいるのよ、この私が! (私が告白のような台詞をはいたって言うのに!)」
「フン。お前の言葉、そのまま返してやろう。『俺がそれを望んでいるんだ』(今すぐ俺に告れ、今すぐ!)」
プライドの高い二人は自分から告白はしたくない、けれど相手と付き合いたい、というなんともおバカな思考によりこのようなやり取りを続けている。
告ったら負け。告白させて付き合おう。矜恃により行われるそれはまさしく
FIGHT! である。