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司馬学園に通いだして一週間。早一週間。
もうそんなに経ってしまったんですね。おう。なんてこったい。
未だに1人でお弁当を食べておりますよ。ぼっちですよ。誰も来ないので、卒業した人たちが使っていたスポットなのかもしれません。
元々食堂の豪華な昼食を食べる人たちが多いので、単に中庭の人気が低いのかもしれませんけど。
食堂が大人気の理由は、豪華なメニューの他に、生徒会のメンバーや、他にも目立つ人たちが食事をとるからですけどね。
大半の生徒たちが、彼らを近くで見たいらしく、食堂は人で溢れているとか。そんな所で食欲がわくわけもなく、植物に囲まれた景色が和みを覚えるようなほっこりスポットで、こうしてのんびりと食事をとっております。
のんびりとしたこの時間。すごくホッとします。
お茶もお弁当も美味しいですし。
ふぅ。なんて贅沢な。毎日こんなに美味しいものが食べれるなんて。
和むわ~。
「……おいで」
和む和むとお茶を飲んでいた所に、3日前から見かけるようになった犬が顔を出す。
手作りのタマゴボールをあげていたら懐かれたのですが……多分というか、絶対に、ハーフの子なんですよね。
昔、満月を見ると変身する狼男を何かで見た事がありますが、魔族のハーフの子は自由は変化に出来るのです。優れた魔族の血をひいていますからね。その辺りは満月に左右されないんですよ。
普通の犬ではないので、基本何をあげてもいいのですが、知らないふりをしているので、わんこ用の手作りのおやつをあげてます。
「今日はササミジャーキーですよ。美味しく出来ました」
試しに1本あげてみたら、あっという間に終わりました。口にあったようです。
「わふ」
満足気に口の周りを舐めた後、ジャーキーの入ったタッパーをジッと見つめてきます。
わかります。催促の視線ですよね。もう1本あげた後、個別の袋にササミジャーキーを何本か入れた後、袋を閉じてわんこへと差し出すと、わんこは袋を噛んで掴むと、迷わずに去っていきます。
おわかりだと思いますが、懐かれているというか、たかられているというか。
こんなやりとりが3日程続いています。
新入生の中にこの魔力は感じなかったので、先輩だと思うんですけどね。
どうして先輩が狼の姿で私の前に現れ、それだけならまだしも、お菓子を貰いにくるのか。理由は全くわかりません。
所で、何処の誰なんでしょうか。狼化していると、全くわかりませんね。
魔界に帰れば、私の護衛に魔狼族の方がいるのですが、地球に留学する為に離れてから一週間です。
当たり前ですが、ヴァル兄とも会っていませんね。久しぶりの地球の生活で疲れていて、マンションで眠ってしまっています。そろそろ顔を出したほうがいいので、今日は魔界の自室で眠る事にしましょう。
たかが一週間。されど一週間です。
私もべったりですが、向こうもべったりなのですよ。
わんこを見送った後、私もデザートを食べ終え、ハードカバーの本を鞄から取り出す。
私の知っている地球とは違う地球なのですが、似通っているものも多々あります。本なんかは割りと被っていますね。恐らく私が死んでから100年程経っているので、読み途中だった本は軒並み完結。
それ所か、新しい本も山ほど発売されているのです。
これを読まずに、何を読めというのでしょうか。
本は、地球に住んでいる本好きの魔族の方々からも借りています。
地球の本が好きで、空間魔法と保存魔法を駆使し、様々な本を買い集めているのです。
空間魔法が使えなかったら、とんでもない土地が必要ですね。
数が多すぎて、本の案内用の使い魔が10魔程いますが。
凄いです。
本好きの情念。
師匠と崇めたいですというか、崇めさせてもらってます。
私も本が大好きですからね。
ぺらりぺらりと、とページを捲ります。
続き続きと気が逸りますが、それを落ち着かせ、じっくりと捲っていきます。時間はたっぷりとあります。急ぐ必要は全くないのです。
魔族は殆ど睡眠時間を必要としないので、夜更かしをして本を読む事も出来ます。魔界に帰る前に、もう何冊か本を借りていきますかね。
読み終わった本は返したいですし。
あぁ。至福です。
幸せです。
こんな天気の良い日に、大好きな本をこうして堪能出来るなんて、本当に幸せものです。