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鏡の前に立って、身だしなみを整える。
朱色の落ち着いた感じのリボンを直し、最終確認。うん。いい感じです。
黒に白のメッシュが入った髪は、とある薬で真っ黒に見えるように変えてあります。黒に白のメッシュって地味だよね、と鏡を見て思っていたのですが、どうやら天地球でその色彩を持つのは私しかいないらしく、何故か目立ってしまいますし、その色を引っさげていると、私だと看板を背負って歩いているようなものなのですよ。
そんな、THE次期女王様な私の外見は、今や地味で何処にでもいそうな姿です。
両親から受けついた金と銀のオッドアイの瞳は、コンタクトで茶色に見せていますし。
目と髪をどうにかしてしまうと、こんなに地味で埋没するんですねぇ。
身長も162cmで、そんなに高いとも言えないし。
「よし。行こ」
最終確認を終えた私は、鞄を肩にかけてて自宅から外へと足を踏み出す。豪華な50階建ての高級マンションの最上階のフロアを、自宅として使わせていただいております。
魔界での豪華な生活には慣れていますが、やはりこういう豪華な場所は、庶民感情からすると、ヒィィ、と悲鳴をあげたくなるのが正直な所ですが。しかし自宅から一歩足を踏み出すと、地球と魔界を繋げる魔方陣が描かれています。これが、地球で暮らす最低条件の1つ。後はお守りやらなんやら、数多くの魔法道具ですが、勿論他人からはわからないような細工が施されており、これ1つで土地付き二世帯住宅が建てられるぐらいのお金がかかっているんですけどね。寧ろ、1つ所じゃなくて幾つか建てられそうですけど。
地球は科学が発展しているので魔法には馴染みが薄いようですが、だからこそ天地球の住人がよく遊びに来るそうです。見ていて楽しいですよね。地球の物って。
自分たちの星には馴染みの薄いものですから。
私にとっては懐かしいアスファルトの上を歩きながら、徒歩5分程で着く学園へと向かう。
自宅とは正反対ですが、同じく5分ぐらいの場所に寮もありますが、それは両親や他の方々が許してくれませんでした。まぁ、私もボロを出しそうなので、1人暮らしを選びましたが。
ちなみに、寮は4つあるそうです。
男女で各2つ。純人間と他、という区切りみたいです。半魔族の他に竜族や精霊族のハーフもいるそうなので、この学園には人外が大量発生中です。そういう学園でもあります。
私が寮に入ったら、人外寮ではなく、人間の方になっていましたね。魔族という身分は隠しての学園生活なので。
ちなみに、魔族とばれない魔法具も身につけてます。そのおかげもあり、誰にも気付かれてはいないですけどね。
しかし徒歩5分は早いです。もう着いてしまいました。
入学式やその他は終わりましたから、今日から通常の授業に入ります。結構ドキドキしますね。
魔族という事はばれずに頑張りましょう。私の身分がばれたら、すっごく大変な事になる所か、学園には通えません。ここは、純血が通う場所ではないのです。
私は地球!!で押し切りましたが。滅多に言わない我侭なので、最終的には幾つかの条件付きで許してもらったんですけどね。
まぁ、地味なので、誰にもばれないでしょうけど。
私のクラスはAクラスです。人外と、普通の人間と半々ぐらいです。どのクラスも偏らないようにはしているみたいですけどね。
流石に純血の魔族はいないですね。相手には私の事はわかりませんが、私にはバレバレです。
私より弱い存在の事はわかりますから。このクラスでわからない存在はいませんから、ハーフか人しかいないという事ですね。
「……」
けれど、とクラスの面々を見回して思います。
ハーフの方々は、本当に顔立ちの良い方が多いです。
この学園。司馬学園というのですが、こちらに通う方々は割合的にお金持ちが多いとか。
地球に住む天地球の関係者たちは、会社経営もしているらしく、お金持ちが多くなるみたいです。それに伴い、地球の人たちもこの学園に通いたがる人がいて、人外も人もお金持ち人口が増えたみたいですね。
勿論、一般家庭の人も沢山居ますよ。
地球に住む魔族全てが社長をやっているわけではないですし。
自分の席に座り、荷物を引き出しに入れながら色々と考えます。
生前、人間だった頃はオープンな机に座っていましたが、この学園の引き出しは鍵付きで、3年間使用するちょっと高級な机です。要らぬトラブルを避ける為とか。
わかります。よくゲームにあるようなかっこいい生徒会がいて、当たり前のようにファンクラブが存在する。それが司馬学園です。
その人たちの私物を盗もうとする人たちもいるとか。
平穏な学園生活を過ごしたいので、関わるつもりは全くないですが、お約束のように全員ハーフですね。
見学していたら、ヒロインみたいな女の子も現れるんでしょうか。
生前、乙女ゲームは大好物でした。
楽しみに見ていたいと思います。