長い長い森の秘密
俺とゲイルが白明の村についたあとしたことといえば、
「「家出!?」」
声を揃えて絶叫である。
... ...こういうときは、順序よく話そう。
まず、俺らは族長の家に向かった。次に、族長(意外に温厚だった)に指令の説明をした。そして、族長はか細い声で話し出した。最後に、俺らが叫んだ。
こういうことである。
族長曰く、少し(強調)気の強いの妹と、少し(強調)引きこもり気味な兄の双子がそろって家出したらしい。
「親としては恥ずかしながら考えていることが分からないんです」
族長はそう語ったが、こっちとして何も言うことがない。
というか、兄は引きこもりなのに家出したのな。
結局のところ、探しに行くしかないようで。俺とゲイルは近くにあるトウクという町から探すことにした。
族長は頭を地に埋めるくらいの勢いで頭を下げていたことだし、頑張ろうと思う。
ということで、やって来ました。森!
しかも、夕暮れ。ボク怖いよ... ...。
あれ、トウクじゃないの?...ゲイル、今は黙っとくとこだ。
あのな、トウクという町はここから歩いてつくんだ。馬車?ダメだ。歩かないのは不健康のもとだからな。金がないとかそういう理由じゃないから。
と、いうわけで俺らは絶賛散歩中なワケだ。
「どうするんだかね」
ため息混じりに出た声は、森にグワンと響いて悲しい。
「楽しそうじゃないか。ハッハッハ。猫の迷子捜査みたいなものだろう」
軽い。ゲイル、軽い。あー、こいつといると気が狂いそうだ。
「お前、ダメだ」
恨めしげに出た俺の言葉は『ゲイル』の全てを語っていた。
俺としては、戦いたかったんだ。戦闘狂じゃない。いや、ホント。
「え、お前は戦闘き」
「だまれ」
言葉を遮られたのにゲイルは気にせず、
「まあ、ライトが戦いたいのは強くなって彼の仕返しをしたいからって知ってるからな。優しく見守ろう」
と言ってこちらを向く。
鎧兜の中の顔は見たことがないが、微笑んでいる気がした。
「うるせぇ」
ぶっきらぼうに言いつつ、心の中で感謝した。
と、同時にあの時の光景を思い出す。
赤く染まった景色。美しく笑う妖艶な女。そして、片手片足をなくした少年。
もう、調べはついている。あの女こそ、人形魔族。人を喰う化け物。
あいつをこの手で。殺してやる。