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裁きの眼  作者: earth
10/12

新たなピースを手にいれて

またまたK主役です。

「分かっているだろうが、私は悪人の類いだ。裁きの眼の連中、特に金髪の男には注意しろ」

エンガの王都に着くと、すぐさま感じたのは強い二つの気配。しかも、片方は懐かしい(とても悪い意味で)ものだった。

見つかると困るのは確かだった。なので双子にも注意したのだが、殆ど耳に入っていない。

都会に来るのは初めてのようで、はしゃいでしまっている。これだけ見ると、ただの子供のようだ。

と、思う私も十分子供と呼ばれる歳に当たるのだか、子供として扱われた事がない。

まあ、そちらの方が随分と楽なので嬉しいのだが。


「おい、お前。聞いてるのか」

ふと話しかけてきたのは兄のエク。

彼は私に何か言ったらしいが、いつものように考え事をしていたので全く聞いていない。

しかし、このまま知らないのも何なので聞く。

「悪い。聞いていなかった。もう一度頼む」

すると、エクは、

「人殺しに二回も説明するほど暇じゃねーよ」

と言い、そっぽを向いてしまった。

エクはこうなると長いタイプだと思うため、私は妹のユキアに聞いてみる。

「エクはさっき何をいったのか?」

すると、ユキアはめんどくさそうに、

「狙われる可能性があるなら早く宿に行こうって」

と、言う。

まあ、エクの言うことは的を得ている。

私も二人の体力が心配だったため、それでいいと思う。

ちょうどこの辺りに手頃な宿があったはず。

「ユキア、エク、宿に行くぞ」

そう言って二人の手をとった。

すると、

「離せよ」

と、エクが抵抗してきたが、

「おぶってほしいのか」

と、返すと素直についてきた。




ここの宿は値段が低いわりに、夕食、朝食付きとなかなか豪華であった。

部屋も、三人で使うには余裕がある程で、私は満足だったのだが、二人は不服らしい。

「何なの。ここ。狭いし、薄汚れてる」

「三人で一部屋かよ」

部屋のソファーに座って文句を言っていた。

「野宿よりましだろう」

私がそう言っても、

「あんたがよくても私は嫌なの」

と、強情である。

まあ、放っておこう。私は二人の文句を聞き流しながら、ローブの内ポケット(結構大きい)から本を取り出して読み始める。




「こんなんだったら家に帰りたい」

ふと口にした言葉に自分でも驚いた。

家に居たときは絶対にそんなこと思わなかった。むしろ、家なんて消えればいいのにと思っていた。

自分は小さいオモチャのような世界にいたのだと今は思える。

その世界は、自由を代償に安心を与えてくれた。

それが、善なのか悪なのか私には分からない。けれども、私はそれをとても嫌っていた。

だから、何のあてもなく家を飛び出した。子供に出来ることなんてほとんどないのに。

私たちはそこで現実を見た。

自分を守るものはもうない、というものと、自分はとても無力だということだ。

その事実に私はショックを受けた。

そして、同時に変わりたいと思った。

強く、強くなりたい。強くなって、自由を手にしたい。

だから、危ない綱まで渡ってきた。

そう、そうだ。家に帰るなら、できる限りもがいてからだ。




妹が弱音を吐いた。

強気な妹はこれまで、人に弱いところを見せなかった。そんな妹が。

俺はいけないことをしたのかもしれない。

もとはといえば、俺が原因だった。俺があの少女に興味なんて持たなかったら。


あの光景を見なくて済んだのかもしれない。


妹の言う通り、森に潜んでいたら。俺達は親父に見つかって、家に帰ってたのかもしれない。

けど、その方がよっぽど良かった。

こんなやつに会うならよっぽど。

こいつは危険だ。

もうずっと俺の頭が囁いていた。

地味だが整った顔と何もかも見透す黒い眼。これだけではただの少女にしか見えないのだか、心の内側から発せられるそれが、只者でないことを感じさせた。

それ以前に、あんなことしたやつに依頼をしてしまうなんて。しかも、誘拐までしてだ。

冷静に考えてみると、あんなの絶対成功するはずなかった。けど、成功した。

あいつが何か企んでいる。

そう考えるのは自然なことで。でも、あのときの俺はおかしかった。何にも気づかなかった。で、気づいた頃にはもう、戻れない。

これは、俺一人で解決できる問題じゃない。でも、限界まで、もがいてみようと思う。




知らない間に二人は眠ってしまっていた。まあ、初めての外の世界だ。疲れていたのだろう。夕食の時間まで眠っていてもらおう。

これから、長い旅になるのだから。


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