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それから数日後。この日、花神楽高校は、一見普段通りに見えて、一部の生徒や教師はただならぬ緊張感を漂わせていた。今日は、深夜霧の退院日である。校長室でリリアン・マクニールは一人、顔をしかめて座っていた。思い出されるのは、数日前の出来事である。
*
「お前たちがやってることはすでに分かってる。協力してほしい」
職員室でのひと悶着の後、リリアンは神前を通して暴食トリオの三人と連絡を取った。校長室にやってきた三人は少し驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの涼しい顔に戻る。
「協力? 何をですか?」
「ここ最近続いてるごたごたについて、だ」
「…情報がなければ、僕らは動けませんよ。というか、よく僕らが動いてることが分かりましたね」
「神前に教えてもらった」
「…まぁ、他ならぬ校長先生の『お願い』ですからねぇ、断るわけにはいかねぇですよねぇ」
「情報ならここにある」
リリアンは引き出しから一枚の紙を取り出し、三人によく見えるように置いた。例の脅迫メールである。
「これがさっき、学校に届いた。送り主が指している人物は大体検討がついてる」
「…………」
「とある関係者がな、これと、この間起きた殺人事件とが関連があるんじゃないかって口走ってたんだ。お前らが調べてるのは、その殺人事件だな」
「…だとしたら、何ですか」
「……頼みたいことがある」
*
授業終了のチャイムでリリアンは我に返った。これで今日の授業はすべて終わる。そして、今から一時間後、深夜は病院を出る。リリアンは席を立ち、隣の職員室に向かった。そこにはすでに、アレックス、イセリタ、スイレンの三人がいる。残りの教師たちも続々と集まってきた。リリアンは毅然とした表情で職員室を見渡した。
あの日、この学校は様々なものを失った。彼女自身も、一度全てを失って、それでも少しずつ取り戻して、ここへ戻ってきた。「後藤花子」という名前でなくても、この本来の姿であっても、花神楽高校は彼女を同じように迎えてくれた。ここが自分の居場所なのだと、はっきり思うことができた。
これ以上、この学校から何かを奪わせてたまるものか。
「よし…みんな準備はいいな。引き続き私や他の教師で学校の監視は続ける。三人は段取り通りに頼む。行くぞ」
話しながら、リリアンはまた別の言葉を思い出していた。暴食トリオを呼び出すために神前に協力を仰いだときのことだ。彼は彼女にこう言ったのだ。
『犯人が分かった以上、あの方たちの興味はもはや犯人にはありませんよ。それでも協力してくださるかどうかは、校長、貴女の説得次第かと思いますが』




