表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
High School Never Ends Adult  作者: あーや
シークレット・ガーデン
10/37

8

 さすがのリリアンもこの行為には少し驚いたようだ。

 「西野…?」

 「…てめぇのことだから、あのクソ保健医と何かあったんだろ。たまぁに上の空になるの、見てたぜ」

 「…………ごめん」

 「…あの野郎は言うなって言ったけどな、俺は元々あんなやつの言うことなんか聞く気はねぇ。だから言うぞ」

 「…? な、何を?」

 「…俺は、あいつから、お前を託された」

 「え?」

 「目のことを話された。自分はもう傍にはいられないとかほざいてたぜ。…言われなくても、あっちが譲ってくれるってんなら離す気はねぇ。ぜってぇ離さない。一生大切にするぜ。…悔しいけどよ、俺がこうやってマジで考えてるから、あいつもあんなこと俺に言ったんだろうよ」

 隆弘の目に、決意の色が宿った。リリアンを抱きしめる腕が、ほんの少し強くなる。

 「好きだ。好きだぜ先生。いや、リリアン」

 「西野…」

 「何度だって言ってやる。リリアン…好きだ。愛してる…!」

 「西野…!」

 「あいつはどうせ戻ってこねぇ。忘れられないってんなら、俺がそれ以上の幸せで上書きしてやる…!」

 そのまましっかりとリリアンを抱きしめた。リリアンが目を見開く。間近にある隆弘の顔が、夕日か否か真っ赤に染まっているのを見て、抱きしめられている腕がほんの少し震えているのを感じて、リリアンは、何故か申し訳ないような気分になった。


 以前見た夢を思い出した。

 見知った白衣の後姿が、自分に背を向けて歩いていく。後ろにいる自分がいないかのように、ただ淡々と、歩みを進めて、自分から離れていく。何故か、その先に行かせてはいけない気がして、必死で追いかけて、手を伸ばそうとしても、片腕を何かが掴んで離さない。振り向いてそれを見ると、それもよく見知った長身だった。その深緑の瞳が自分の目をじっと見ていて、その姿に何故か、どうしようもない罪悪感を覚えた。

 その瞳があまりにも、真剣な光をしていたから。


 そして、きっと自分はこの腕を振り払って、あの人を追いかけてしまうと、分かったから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ