萌えと青年と譲れぬ信念
「チェイストゥ!」
という気合の入った掛け声とともにお爺さんは大根ロリスカリバーを振り下ろしました。街の中央にある財務省の古いレンガ造りの建物が一瞬で真っ二つになります。
「ふむ、ここにはおらぬか」
駆けつけた警官隊を返り討ちにして、お爺さんは適当にそこら辺を捜索します。美少女がいないので、政治が悪いと判断して政府関係施設を次々に破壊しているというのはここだけの話です。
一方、お婆さんはイケメンを求めて徘徊していました。
「なんじゃこの国は。オタクばかりの腐った国ではないか。イケメンのいない国に存在価値はなし!」
とか勝手なことをのたまっています。背後で目をぎらつかせて竹槍を構えているポチ青年には気づいている様子はありません。
「まったく世の中のイケメンは絶滅の一途をたどっておる! イケメンが具現せぬなどこの世の地獄じゃ。イケメンは国際連合あたりが保護して、一か所に集めて、天然記念物にすべきじゃ。さらに、金持ち要素が加わればなおよし! 国宝級の扱いを……ぬぅ? 何奴?!」
ポチ青年は勇気を振り絞ってお婆さんに突撃攻撃を仕掛けました。しかし、ロシアの軍隊と一人で戦っても圧勝するようなお婆さんには赤子のようなものです。一瞬で竹槍を破壊され、ポチ青年はいきなり劣勢になってしまいました。
「ぐふふ、お主……なかなかにイケメンではないか」
ポチ青年は身震いします。
「は?!」
「ハァハァ……ワシの元で専属メイドになる気はないか?」
涎を垂らしながら迫るお婆さんを見て、ポチ青年は完全におびえています。
「ぐへへ……貴様をワシのイケメン天国第一号としてやろう。さあ、ワシとともに日本へ渡ろうではないか。そしてゆくゆくは結婚式を挙げて……」
「お断りします!」
ポチ青年は力強く否定しました。
彼には譲れないものがあります。
それは”萌え”です。
可愛いものを可愛いと言えること。可愛いものを可愛いと感じられること。そして、それを静かに愛でること。これらはポチ青年が今までずっと大事に抱えてきたものです。それを否定することだけはしたくありませんでした。
たとえそれに実益がないとしても。
それは彼自身の生き方です。
「僕は美少女が好きです! ツインテニーソが大好きです! それは絶対! 誰に何と言われても譲れません!」
気弱だった彼がお婆さんを前に強く宣言しました。
「よくぞ吠えたポチ! あとはこのワシ、英雄王ジジコンガに任せておくがよい!」
瞬間移動してきたお爺さんがポチ青年をかばうように、お婆さんと対峙します。
「師匠! 僕に構わず……」
「馬鹿者! 弟子一号の成長ぶりを知れば、貴様を守る価値もあるというもの。いいから、貴様は研究所を守るのじゃ! あそこには広域指定暴力団”ブスババア”が集結しておる」
お爺さんの言葉に少しだけ涙を浮かべると、ポチ青年は全力で駆け出していきました。
こんばんは、星見です。
そろそろ終わります。というか、終えます。新年度を迎えるまでには!
というわけで次回またお会いできることを祈りつつ……




