~プロローグ~
「リーネ!!魔法はずるいぞ!!」
「グレンだって魔法使えるでしょ。」
少年は泥だらけになり、地面に尻もちついて叫ぶ。
少女は少年の前でしゃがみ込み、少年をあざ笑うかのようにデコピンをした。
ここは小さな村、コルン村の近くの草原。コルン村はとても緑が多くのどかな場所であり、村人たちも少人数ながら住んでいる。
少年と少女はいつもこの草原で力比べをしていた。
少年の名前は「グレン」
グレンは赤ん坊の頃、自分の師「ハウリード」に拾われコルン村に連れて来られた。そして、今はハウリードと共にコルン村に住んでいた。グレンは自分の師ハウリードに憧れ、日々この草原で修行をしていた。
少女の名前は「リーネ」
彼女は生まれた時からコルン村に住んでおりコルン村の族長の娘。天才魔法使いとして知られていた。彼女の魔法の才能は凄まじく、今の歳とは似つかわしくない魔法を使える。村人からは将来を期待され、大切に育てられていた。
「そうだけど・・・ こんなのじゃ戦いにならないよ!」
グレンはそう言って服についた泥をはらいながら立ち上がり、リーネに向かって手のひらをつきだすが、小さな破裂音が響き渡り、グレンの手のひらに小さな火が一瞬現れた。
「タバコに火をつけるには、丁度いいんじゃないかしら。」
リーネは笑いをこらえながらグレンに言い、腕をグレンの方に伸ばす。
すると、大きな音とともにリーネの手のひらには火球が激しく燃えながら浮いていた。
「グレンの武器は剣でしょ。 だったらまず魔法より、剣技を磨きなさいよ。」
リーネはそう言い、火球を引っ込める。
「でも、師匠は魔法使えるし… それに、剣と魔法じゃ勝負にならないよ!」
グレンの情けない発言にリーネは大きくため息をついた。
「確かにハウリードさんも剣技も魔法は使えるけど、今のグレンは剣技ですらままならないじゃない。だからまず剣技をしっかり身につけて、そのあと魔法を覚えればいいじゃない」
グレンは、ふてくされた顔をし、その場座り込んだ。
「そうだぞグレン」
グレン後ろ、村の方からゆっくりと少し年老いた男性が向かってくる。
グレンとリーネの近くまで歩み寄り、低い声で続けた。
「まだお前は小さい。焦らなくても時間はある。私のように強くなりたかったらしっかりと基本を学びなさい」
この男性の名は「ハウリード」
グレン師であり、コルン村で一番強い男。赤ん坊のグレンをつれてコルン村に来た。
ハウリードがコルン村に来た時、村はモンスターの被害に悩まされており、モンスターを退治してくれる人を探していた。
そこに、ハウリードは「私がこの村を襲うモンスターを退治する代わり、この子と私をこの村にいさせて欲しい」という条件を出し、村を守る番人としてこのコルン村に住んでいた。
ハウリードの強さは疑いようがく、ハウリードがコルン村に来て以来、村がモンスターに襲われることはなかった。
「今日はもう遅い。また明日、ここで稽古をしなさい」
「はい… リーネ、また明日の朝ここで俺と勝負しろ!!」
「いいわよ。何度やっても同じ事だけど、泣き虫グレン♪」
リーネはそう言い、村の方に走っていく。
「その名前で呼ぶな!!」
グレンは怒鳴りながらリーネを追っかけていった。
夕日が沈み始め、コレン村に明かりがつきはじめる。
リーネと別れたグレンは、ハウリードとともに家に向かった。
「師匠!!」
「ん?」
グレンは腕をだらんとさせ肩を落としながらハウリードにいった。
「教えてくださいよ~ 師匠の奥義。 あれが使えるようになったらリーネに勝てるし…」
「揺るぎない決意を持ち、自分の持ってるいるものすべてを剣に込めろ。そして全身全霊で剣を振り下ろす・・・ いつも言ってるじゃないか」
グレンはハウリードの前に回り込み
「そうじゃないって!! もっとこう、構えとか呪文があるんでしょ!!」
と言いながら、いろいろなポーズをとる。
ハウリード軽く笑い、グレンに言った。
「それがわからないうちは、まだまだできないな」
グレンの頭を軽くたたき、また歩き始める。
―――奥義
グレンにとって、あれは忘れもしない…
大きな地響き、力強い圧迫感・・・
大気を震わし、その場に入るもの全てを支配するほどの力・・・
そして・・・
大地を砕くほどの破壊力・・・
グレンはベットの上に横になっていた。
窓から覗く月はいつもより綺麗で少し不安を感じさせるものがあったが、リーネとの稽古で疲れた体は不安よりも眠気を感じさせた。
(明日こそリーネに勝ってやる!)
グレンは布団をかぶり、深い眠りに落ちていった……