超短編ホラー
せんとくん(1)
ポスターに良くある宿命。落書き。それはキャラクターのポスターでも例外ではない。そんなことをして何が楽しいのか分からないが、俺もその仲間の一人であることは間違いなかった。
その日は普段となんら変わらない一日だった。帰りの地下鉄、人は疎ら・・・。ふと駅構内にポスターがある。「平城京遷都1300年祭 キャラクターせんとくん」特に何かしたかったわけではないが、なんとなくそのポスターに落書きをしてみた。今思えば、何であんなことをしたのだろうか・・・。その後ホームへ行き、来た電車の一番後ろの車両に乗り、暗闇に飲まれていくレールをただただ見ていた。
・・・!?
駅を出発して数分。電車のスピードが急激に落ちる。そのせいでバランスを失い、床に打ち付けられた。
「いてて・・・。一体なんだ!?」
周りを見渡すと乗客全員が不思議そうな顔をしている。そこにアナウンスがあった。
「只今トラブルが発生いたしました。復旧まで今しばらくお待ちください。ご迷惑をおかけします。」
なんてことだ・・・。世界に63億と言う人がいる中で、トラブルに会う人は果たしてそのうち何人なのだろうか・・・。
「少なくともこれで俺はそのうちの一人になっちまったわけか・・・。」
ため息混じりに息を吐きながら、窓の外を眺める。ライトに照らされたレールのほかには牢獄のように静かで、冷たいコンクリートの壁があるだけ・・・。
・・・カツカツカツ・・・。
誰かが歩いているような音。車内を見渡すが誰一人として歩いてなどいない・・・。気のせいなのだろうか・・・。
・・・カツカツカツ・・・。
今度ははっきりと聞こえた。誰かの足音。しかもさっきより大きくなっている。車内を再度見渡すが、誰一人として歩いているものなどいない。
「じゃあ外か!!」
何かが暗闇で動いた。そしてそれはこっちに近付いている。ライトに照らされその顔がはっきりと見えたとき、俺は驚愕した。
「何で??嘘だろ・・・まさか・・・ありえないって・・・。」
それは無表情のままゆっくりと近付いてくる。他の人には・・・見えてないのかまったく気付いている振りがない。
「なんで・・・たかが落書きだろ・・・誰でもやってるじゃねぇーか・・・」
それはもう目の前まで来ている。そんな馬鹿な・・・。
その駅構内の一枚のポスターには、多くの人間の絵がリアルに描かれている。そうこうしている間にもほら、また一人増えたみたいだ・・・。
せんとくん(2)
「時刻は・・・23時30分・・・ぎりぎりってとこかな」
俺は駅に向けて全力で走っていた。改札を抜け、階段を駆け下り、ホームへとたどり着くとすでに電車は走り去っていた。
「ちっ!!・・・23時40分・・・電車は・・・今のが終電か・・・。」
しょうがない、タクシーででも帰るか。そう思って階段を登ろうとしたその時だった。
「・・・ザッ・・・ザザッ・・・ザザザッ・・・最終・・・で・・・車は・・・24時・・・00・・・分・・・。」
アナウンスから音が漏れる。ノイズがひどくて聞き取りにくかったが、どうやら最終電車があるようだ。
「ダイヤ改正でもしてたのか・・・??」
まぁ何はともあれ最終電車があるならそれにこしたことは無い・・・。俺はそのままホームで待つことにした。
周りを見渡すとそこには誰もいなかった。まぁ夜も遅いし、最終電車まであと20分もあるのだ、当たり前と言えばそうなのかもしれない。しかも週末と言うわけではないので夜遅くまで遊んでいるような人もいない。静かな空間がそこには広がっていて、そこには自分ひとりだけ。まるで、世界の終末に一人残った生存者のような気分だ。
23時55分
「後5分か・・・。」
しかし、妙なものだ。さっきまでは一人しかいないのも無くは無いと思っていたが、そこから15分たつというのに誰一人としてホームに下りてくる気配が無い・・・。
・・・カンカンカンカン・・・
「・・・!?何の音だ・・・。」
何かが走ってくる音。しかも、だんだん近付いてくる・・・。
・・・カンカンカンカン・・・
「ザッ・・・ザザザザッ・・・間もなく・・・最終電・・・と・・・ちゃ・・・ます・・・」
・・・カンカンカンカン・・・
まったく何が起こっているのかわからない。ただただ戸惑うだけだった・・・。
次の瞬間。何かが目の前の線路を通った。それは誰もが知っているキャラクターであり、こんなところに現れるはずの無いものである・・・。
ものすごい速さで目の前を通り過ぎた“アイツ”はこちらを見ながら無表情で走り去っていった。
俺は怖くなって震える足を何とか動かして階段を駆け上がっていった。
改札には誰もいなく、電気さえ消されていた・・・。と言うより、駅全体が閉められていたのだ。
「一体・・・どういうことなんだ・・・??」
改札の職員窓口に紙が張ってある。「最終電車23時39分 始発5時30分 最終電車終了後駅構内の全ての機能が停止します。」最終電車はもう無かった・・・。では、あの放送は??あれは一体なんだったんだ・・・。その先を考えるのは止めることにした。
昔に作った短編ホラー二作です・・・。
今になって見返すと文章力乏しいですかね・・・。
若気の至りですから多目に見てください・・・(笑)