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番外七「魔法使いと金髪」

私はここ最近いらだっていた。


理由は簡単だ。


自分と張り合うだけの人間が王都の魔法学院にはいないからだ。


最初は期待していたのだ。


なんせ、国一の魔法教育機関だ。


しかしそんな期待も入学してすぐに打ち砕かれることになった。


女たちはもっぱら貴族の男の話をし、あまつさえ何を勘違いしたのか、私に恋文を送ってくる者までいる。


男だと誤解されているだけだと思って、その誤解を解きに行った事もあったが、それこそが誤解だったことを知った時は眩暈すらいた。


元々背が高く、昔は伸ばしていた金髪も今は短くしている、そのせいで親にはいろいろ言われ仕舞いには泣かれまでしたが、私自身は今の髪のほうが動きやすくて気に入っている。


そして、それと同じ理由で女子の制服ではなく男子の制服を着ている。


これについてもあれこれ言われたが、私に下着を見せる趣味はないので押し通した。


女子の制服はスカートで、実習などもそれで行うのだ。


激しい動きをすれば言わずもがなだ。


言動も、口が回るほうではないので、ついつい短く端的に言ってしまうことが多いことは自分でも分かっている。


それらが合わさって、知らない人間が自分を見れば男に見えないこともないと理解している。


事実勘違いしている知り合いもいるみたいだが、自分から誤解を解くことはしていない。


私にとって大事なことは、性別ではなく、私と張り合える実力を持った者を見つけることなのだ。


そうして、その者と切磋琢磨することによって、自分をより高みへと持っていくことなのだ。


それ以外は些末なことに過ぎない。


だというのに、肝心の張り合える者がいなかった。


男はどいつもこいつも頭でっかちで口だけは回る、模擬戦では全然ダメな腰抜けばかりだった。


そんなわけで期待を裏切られ、いらいらしていた私の目に、学院の模擬戦場でもうすぐ始まりそうな模擬戦が飛び込んできた。


私はその模擬戦に目を奪われた。


正確には一人の男に、だ。


最初は何の気なしに見ていたのだ。


その模擬戦は二人の男が対峙し、お互いに牽制しあう形で始まった。


模擬戦場は、学院でもかなり特殊な魔法が使われており、その中では魔法に当たっても痛みも無く怪我もせず、ただどれだけ当たった人間に影響を及ぼしたかを数値化するのだ。


もちろん、魔法を障壁で無効化すればそのダメージは数値的にもゼロである。


逆に、当たってしまえば数値が減っていく。


そうして、当たった箇所に、ダメージに応じて負荷がかかるようになっている。


最終的にゼロになったほうが負けなのだ。


そうして今、私の目の前でその模擬戦が行われている。


一人は傍から見ても分かるほど、魔力に優れ魔法の才能がある天才的な男だ。


もう一人はいかにも凡庸な、普通を絵にかいたような魔法使いだ。


しかし、その二人が見事に拮抗しているのだ。


私は段々目の前の模擬戦から目を離せなくなっていった。


魔法というカテゴリーだけならば、凡庸な男は天才に勝つことはできないだろう。


しかし、凡庸な男は魔法以外もふんだんに使うことによって天才と渡りあっているのだ。


杖で殴り、地面の砂を相手に蹴りあげる、勝つためになんでもするという姿勢は素直に凄いと思ってしまった。


しかし模擬戦は魔法のダメージを数値化するのであって物理的なダメージは相手の肉体にはダメージがあるだろうが数値化されない。


結局、凡庸な男は天才に数値の上では負けてしまった。


しかし、どちらが勝っていたと聞かれれば、それもまた一目瞭然な試合であった。



その後私はその凡庸な男について調べた。


男の名前は、クリス。


あの学院教師にして古代魔法の使い手でもある、アスクルク家の才女、フェンリー・アスクルクの弟子だったのだ。


見た目に反した強力無比な魔法の使い手であるフェンリー先生は、私の尊敬する数少ない人物でもある。


その弟子であるクリスの魔法の腕があんなものであることに少し疑問を持ったが、総合的な実力ではかなりのものなのですぐに疑問は彼方へと飛んで行った。


彼に突いて調べはついたので、次は接触を試みることにした。


といっても、簡単である。



「私と模擬戦をしてくれ!!」


「だが断る!!」



彼は全力疾走で逃げて行った。


何故だ、女だからか?


それとも実力が足らないと思われたのか?


そんな馬鹿な、昨日の模擬戦を見た限りでは確かに総合的な実力はあちらが上だが、そこまで差があるものでもなかった。


何故断られたんだ・・・?


仕方ない、何度か頼み込んでみるか。





結局彼は、その日三十二回目の頼み込みで模擬戦を了承してくれた。


何事も頼んで見るものだな。




そうして次の日、学院の模擬戦場にて模擬戦を彼と行った。


結果は私の勝ちだった。


しかし、それは所詮模擬戦でのことだ。


実戦ならば、彼が手に剣を持っていたならば、私などなすすべも無くやられていただろう。


総合的な実力なら少ししか違わないなどと、昨日の私はなんという勘違いをしていたのだ。


これでは模擬戦を断られても仕方ない、彼が私から得るものが無いのだから。


これは早急に強くなる必要があるな。


でないと彼と張り合えない、彼がどこかへ行ってしまう。


こんな大物逃してなるものか。


好敵手として互いを伸ばしあうために私は絶対に彼に見合うだけ強くなって見せる・・・!






結局この後も彼に勝ったと思える事は無かった。


それなりに上位の炎の精霊と契約をしたが、彼は更に上の風の精霊と契約し、その実力を更に上げていった。


そのうちに学院の卒業が迫ってきた。


彼は宮廷魔法院や騎士団からの誘いも蹴って、修行の旅にでるらしい。


ならば私はもっと過酷な修行をしないといけない。


親には泣かれたが、私も宮廷魔法院の誘いを蹴った。


そうして、学院卒業後に旅に出た。


彼に追いつき、好敵手となるために!!

男装脳筋です、私得ですね。


外伝で希望の話がありましたら、感想に頂けると参考にします。忙しいので前回みたいではなくびびっときたのを適当に書く感じになると思います。

なければ本編修正したり新作更新したり!

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