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番外二「魔法使いの相棒」

遥か昔、世界は魔法技術の発達により栄華を極めていた。


ある大陸で、人々は戦争を繰り返し、やがて大きな一つの国家となった。


しかし彼らは、それだけでは満たされなかった。


別大陸に侵攻するための、更に強大な力を求めた。


そしてその結果、世界を揺るがす出来事が起こった。


彼らは力を求めるあまり、魔界との間に扉を作り、それを開いたのである。


出てきた悪魔たちは、力に目の眩んだ人間を狡猾に騙し、世界での自由を手に入れ、人々を攻撃した。


悪魔は魔力食いを作り、大陸のあらゆる生物の魔力を集め、その力で魔物を創造した。


悪魔と魔物によって大陸は滅ぼされた。


そして、悪魔と魔物は別大陸に侵攻した。


別大陸では、悪魔召喚の地から逃げ延びてきた人々によってその地で起きたことが伝えられ、対策が練られた。


天界への門を開き、天使を呼び出したのである。


天使は人々の願いを聞きいれ、力を貸した。


天使は精霊を創造し、魔物に対抗した。


天使と悪魔、精霊と魔物の力は拮抗した。


しかし、魔物の中の知性の高い種族が、悪魔を裏切った事により拮抗は破られた。


とうとう、天使と精霊は悪魔と魔物を退けたのである。


しかし、まだ悪魔召喚の地には魔界との扉が存在していた。


悪魔との戦いで疲弊した天使には、扉を破壊するだけの力が残っていなかった。


人間、精霊も同様にほとんど力が残っていなかった。


その状況を打開するために、人間は魔界の扉の技術を応用し、別の世界から力を持った人間を召喚する扉を創り上げた。


そして扉は開いた。


扉のある神殿の中央には、奇抜な格好をした人間の女が立っていた。


短い腰巻の割に、上はしっかりとした出来の服を着、髪と目が真っ黒な特徴的な女だった。


女は最初、混乱した様子で喚き散らした。


しかし、人間の王自らの説得と説明によって状況を理解すると、元の世界に自分を返すことを条件に扉を破壊することを承諾する。


女のために人間の王は、天使から与えられた知識と、それまでの魔法技術を融合させ、聖剣を作り渡した。


女は、恐ろしいほどの魔力を有し、四大精霊と契約し、聖剣と共に悪魔召喚の地へと旅立った。


かの地で女は、密かに生き残った人間たちや、知性のある魔物、また不思議な術を使う男の力を借り、とうとう城の中にある魔界の扉の前まで辿り着いた。


そこには、初めて世界に渡った悪魔、魔王がいた。


魔王と女の戦いは苛烈を極めた。


精霊たちの力もつきかけ、女もまた魔力も体力も使い果たそうとしていた。


女はこのままでは勝て無いことを悟り、最後の賭けにでた。


自分目掛けて聖剣を振り下ろたのである。


女は王から聖剣を渡されたとき、聖剣は切ったモノの力を得ることができる、と聞いていた。


自分がこの世界を救うことができる力があるのなら、聖剣にそれを吸わせれば魔王を倒せると考えたのである。


そして聖剣は女に突き刺さり、光を放ち女を飲み込んだ。


女の意図を正確に読み取った風の精霊は、透かさず風を操り聖剣を魔王に突き立てた。


魔王は女の前に敗れ去った。


残った門を、精霊たちは自らの身で塞いだ。


風の精霊だけは、このことを伝えるために聖剣と共に、女を召喚した大陸へと戻った。


そして、風の精霊は事のあらましを伝えると、女の魂までも食らった聖剣を王に預け、彼方へと飛び去って行った。


王は女の死を悲しみ、聖剣、魔界の扉、天界の扉、異世界の扉に関する全ての知識を封印し、この悲劇が二度と起こらないようにした。


女は勇者と呼ばれ、その偉業は長く語り継がれることになる。


聖剣は、長くに渡り力を封印された状態で、代々の王に受け継がれていったが、やがて歴史の闇へと消えていった。




そうして、あるときは屋敷に飾られ、あるときは魔物を切り、あるときは人を切った聖剣は、ボロボロになって武器屋の樽に入れられていた。


その聖剣を一人の男が掴みあげた。


男は嬉しそうに店主にお金を払うと、聖剣を貴族の屋敷へと持っていった。


その後、男はボロボロだった聖剣を綺麗にし、いつも腰にさげるようになった。


そして聖剣はまた様々なものを切った。


ゴブリンやオーク、ドラゴンや亡霊、長い時を経て生き残っていた悪魔も切った。


聖剣に意思はない、しかし女の魂だけはずっと残っていた。


ただ、絶望の中に希望を見出した人々を守りたかった勇者の魂だけが。


その魂が、今の聖剣の主にかすかに反応するのだった。




「ん?なんか魔剣から聞こえた気がする」


「何を言ってるんですか、主。魔剣はあくまで魔剣です、しゃべるわけ無いでしょう?いくら友人が少なく寂しいからと言って、魔剣にまで期待するのはどうかと思います。頑張ってもしゃべりだしませんよ?私との会話で我慢してください」


「と、友達くらいるよ!?まぁフウリとの会話は楽しいけど。そうじゃなくてだな、なんかこう語りかけてくるような、そうでないような」


「主、何度も言いますが、それは幻覚、幻聴、幻です。気のせいです。もし本当だとしても、それは呪いというものではありませんか?だとしたらあまり寄らないでくださいね、こっちにうつりそうです。あと、私も主との会話は好きですよ」


「の、呪いなんてあるのか!?師匠に見てもらいに行こう!あと、会話はもう少しお手柔らかにお願いします」


「ふむ、お師匠さまなら何か分かるかもしれませんね。まぁ十中八九、主の寂しさからくる病だとおもいますが。おっと、柔らかくでしたね。主、可哀想に、頭を患ってしまって・・・大丈夫、私がついてますからね。いざとなれば主の頭の中身を一回綺麗にしますので」


「やさしいけど、根本的に間違ってる!そしてさらりと怖いこと言うな!あとその慈愛に満ちた視線やめて!」


「わがままな主ですね、とりあえず師匠の家に行きますよ」


「はい・・・」




とぼとぼと歩きだす今の主の腰で、聖剣がかすかに震えるのだった。

いうことで、これが真ヒロインさ!永遠に未実装ですが。

ツンギレ系ヒロインです、ツンツン突いて、ばっさりキレます。

本編でも出所不明で変な力を持ってるミステリアスウェポンであり、お役立ちアイテム兼主人公の主な攻撃手段として活躍してるのに、あまりの人気のなさに咽び泣いて、書き貯めてたやつから引っ張り出しました。



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