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スクリーンを映す瞳

作者: りの。

クレヨンで画用紙に適当な幼稚園児が描くようなでもけっして異なる絵をぐるぐるとかきながらだんだんと緩やかになっていくのを感じていた。

DVDレコーダーがおやすみのためいきをついた。

僕はぱっと持っていた赤いクレヨンを放り投げ、十六階の窓に向かった。窓からは、線路、ビル群、家とかごみごみしたのが見えた。僕の窓は、ベランダに続く窓だ。だけれど、そのベランダを切り落としてしまったから、窓を開けると、床から急になにもなくなる。

落としたクレヨンを拾い上げ、僕は窓に向かってちいさな四角形を、大きなビル群を囲むようにこすりつけた。

次は緑で、家々を覆うような形で、じゃーっとかいて、一面の芝生であるかのようにぐりぐりと塗りつぶした。

意味のある行動。

それに人はいつもからめとられるような気がする。とくに、この時は。

僕の頭はぼーっとしていて、とくに何の活動をしているわけでも何かを分泌しているわけでもなかったけれど、それでもそれが心地よかったし、なにか正しいと感じていた。

僕はがらがらと窓を開け、風にあたってみた。赤いくれよんを、びゅっと、硬く力をこめて飛ばした。

ソファ。真っ白じゃない、ちょっと青みがかったソファ。それを窓ぎりぎりにおいて、そのソファに窓と垂直になるように、景色が見れるように寝っ転がった。

風でばたばたと白いレースが揺れた。

気がつけば音が消えていた。

強いて言えばしーんとした音がしていた。きーんかもしれない。その間ぐらいだと思う。

ゆっくりと起き上って、周りを見渡してみた。太陽が肌色の光を落していた。枯葉が、びたっと、窓の枠に張り付いた。その時だけ、びたっと、音がした。

僕はゆっくりと端にずれていき、その枯葉をはがして、下を覗き込んだ。

わっと声をあげ、ぐるんとまわって、僕は窓から飛び出した。


僕はソファから跳ね起きた。お母さんが買い物から帰ってきたところだった。新品のキッチンが見えた。

僕は何か大切な一つを失くしているんだけど、それに気づかないようにしている。


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