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X6X

ケン・モリの部屋は、いつもより空気が重かった。

白い壁に映るモニターの光が、四人の女の顔を青白く染める。

黒澤メイはソファの端に座り、膝を揃えて無表情。

三ツ木ミミは床に胡坐をかき、クッキーを頰張りながら画面を見つめている。

茅ヶ崎マヤはワイングラスを指で回し、長い脚を組んで苛立った様子。

高本リナは眼鏡を押し上げ、静かにキーボードを叩いていた。


モニターに映るのは、一つのニュース記事。

『渋谷で謎の連続殺人――被害者全員、奇妙な腐敗死体』

写真はぼかされているが、溶けた肉と黒褐色の染みが写り込んでいる。

明らかに、Deadly Dymesの仕事ではない。

似て非なる何か。


ケンがため息をついた。


「これ、昨夜の仕事じゃない。

依頼主からの連絡もない。

誰かが、うちのスタイルを真似して殺してる」


マヤがグラスをテーブルに叩きつけた。


「ふざけないで。

あたしたちの殺し方をパクるなんて、許せないわ。

下品な真似事で、市場を荒らしてるのよ」


ミミがクッキーを飲み込んで言った。


「でもさ、臭い匂いするよね?

あたしの毒便に似てるけど、なんか違う。

もっと…生臭いっていうか」


リナが画面を拡大した。

被害者の胸に、黒いカードが置かれている。

だが、銀の三日月と髑髏ではない。

赤い薔薇と棘の刺青のようなマーク。


「『Crimson Thorn』。

新興ギルド。

半年で急成長したらしい。

リーダーは『紅蓮』って女。

スキルは…血を操る系だって噂」


メイの瞳がわずかに細まった。


「…うちの縄張りで、勝手に仕事してる」


ケンが頷いた。


「それだけじゃない。

依頼主の何人かが、最近Crimson Thornに流れてる。

単価も安く請け負ってるらしい。

Deadly Dymesの評判が落ちてるって、業界で囁かれてる」


マヤが立ち上がった。

ヒールが床を叩く音が鋭い。


「許せない。

あたしたちがトップギルドよ。

新参者に舐められるなんて、冗談じゃないわ。

今すぐ潰しに行く」


リナが静かに首を振った。


「待って。

Crimson Thornの拠点は、まだ特定できてない。

ただ、最近の仕事は全部、渋谷・原宿エリアに集中してる。

うちの縄張りそのもの」


ミミが目を輝かせた。


「じゃあ、狩りに行こうよ!

メイちゃんとあたしで、どんどん溶かして、糞まみれにして、締め上げて、座り込んで!

3Mで、ボコボコにしちゃおう!」


メイはゆっくり立ち上がった。

ジャケットの袖を払い、静かに言った。


「…先手を取る。

今夜、奴らの仕事を横取りする」


ケンが苦笑した。


「無茶だぞ。

でも…まあ、ランクアップのチャンスでもある。

依頼主が二股かけてるなら、どっちが先に仕留めても報酬は入る可能性がある」


マヤがにやりと笑った。


「決まりね。

今夜の標的は、Crimson Thornが狙ってるらしい男。

港区のホテル、ペントハウス。

名前は黒崎鉄平。

ヤクザの資金洗浄屋。

報酬、1800万」


メイの胸が、わずかに高鳴った。

1800万。

一人450万ずつでも、大きい。


四人は部屋を出た。

夜の六本木へ向かう車の中で、ミミがメイの肩に寄りかかった。


「メイちゃん、楽しみだね。

初めての『縄張り争い』だよ!

あたしたちが本物のトップだって、教えてあげよう♪」


メイは窓の外を見た。

ネオンが血のように流れる。


「…邪魔なものは、溶かすだけ」


ホテルは高層で、ガラス張りの外壁が月光を反射していた。

裏口から潜入。

リナがエレベーターのセキュリティを無効化し、四人はペントハウス階へ。


扉を開けると、すでに戦場だった。


黒崎鉄平はソファに座り、震えていた。

周りを囲むのは、赤いドレスを着た女たち。

五人。

全員、スカートでジャケット、ヒール。

だが、色は血のように赤い。


中央に立つ女が、紅い唇を曲げた。

長い赤髪、瞳が燃えるように赤い。


「ふふ…Deadly Dymesの皆さん?

遅かったわね。

この男、もうあたしたちの獲物よ」


マヤが前に出た。


「紅蓮、だったかしら?

新参者が、よくもうちの縄張りで好き勝手やってくれたわね。

今すぐ消えなさい。

でないと、あたしの尻の下で息絶えさせてあげる」


紅蓮が笑った。


「面白い。

じゃあ、勝負しましょうか。

黒崎は、生き残ったギルドのもの。

どう?」


メイは無言で右足を上げた。

スカートが捲れ、黄金の予感が漂う。


ミミが尻を突き出し、毒便を溜め始めた。


リナの脚が、静かに筋肉を緊張させる。


マヤがスカートを広げ、優雅に構えた。


紅蓮が手を挙げると、彼女の周りの女たちが血の糸を操り始めた。

赤い液体が、鞭のように空を切る。


部屋に、殺意が満ちた。


今夜、初めての――

ギルド同士の戦争が、始まる。


メイの瞳が、冷たく光った。


「…溶かす」

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