始まりの川
英雄は言った
死を怖がれとそして死に立ち向かえと。
英雄 グルド・アセラウルド
田舎町。少年はワクワクしていた。それは好奇心だろう。何に対する好奇心か、それはこんな田舎町で魔法が使える同年代の少年が居ると噂話を耳にしたからだ。少年は走る。この世界で魔法が使えるものは極少数。40年修行をしても使える可能性は8%に満たない。そんな世界で子供が魔法を使える。
「うぉぉおおお!!」
少年は雄叫びを上げながらそれらしき子供を探す。すると川辺の近くの木。枝の上に少年が居た。一目見て少年はこいつが魔法使いだと分かった。なぜ分かったかは分からない。少年は迷うことなく話しかける。
「なぁ!お前魔法が使えるんだろ!」
「あ?そうだけどなんだよ。」
「わぁ!やっぱり!見してくれよ!」
「チッ俺は見世物じゃねえ。失せろ」
その魔法使いは飽き飽きしていた。自分の才能を羨ましがる者。妬む者。見世物のように扱われる事に。
「ああ!そっか!ごめん!魔法とかって使うの疲れたりするのか?ごめん!つい魔法使いが居るって聞いて先走ちゃった」
「疲れるとかそう言うのじゃねえ。舐めんな。俺は魔法をいくら使おうと疲れたことなんてねぇんだよ」
「え?そういう物なの?」
「俺が特別なだけ」
「す、すげぇ!!この年で魔法が使えてしかもいくらでも使えるなんて!おとぎ話の英雄みたいだ!」
少年は目を輝かせていた。そう。少年は憧れているのだ英雄にそしてこの魔法使いに尊敬の念を抱いていた。
「英雄ね、そんなもんなりたかねぇよ」
「え!?なんで!?」
「はぁ英雄なんて命がけで国守ったり世界守ったりするんだろ?それで得られる物って何だよ?地位と名誉か?あとは金か?くだらねえ。命かけてまで欲しいものじゃねえよ。」
「違う!お金とか地位とか名誉とか。そんな物が欲しくて英雄になるんじゃない!困っている人たちを、世界を守るために英雄になるんだ!」
「へえ。英雄願望でもあんのかお前」
「ある!俺は英雄になりたい!この世界を守る。英雄に!」
「お前よりも何倍も強くて才能がある俺が言ってやる。英雄なんてなれっこないってな。」
「町の皆も同じこと言う、」
「そりゃあそうだろうな」
「でも!俺はなるよ!英雄に!君が英雄になりたくないなら俺が代わる!才能が無くても、魔法が使えなくても。俺は君が英雄にならなくても良いようにする!君が頑張らなくても良いようにする!それが英雄の役目だ!」
少年の言葉は魔法使いの凍りかかっていた心に響いていく。才能があるが言えに英雄の領域に片足が入ってしまっている。自分はいずれ命をかけて世界を守らなければならないとそう心の底で思っていた。夢見る子供の戯言だろう。だけれどそんな戯言に魔法使いの心は少し救われたのだ。
「はは〜ん!お前が英雄ね!なれっこねぇけど、なれっこねぇけど、まあ俺と友達にはなれるぞ」
「友達?友達になりたいの?」
「う、うるせえよ!お前が友達いなそうだから可哀想だからな!俺が友達になってやるって言ってんだよ!」
少年は笑った。魔法使いは照れくさそうにしていた。
「なぁ。お前名前なんて言うの?」
「俺は」
そう。ここで彼らは出会い友人になった。
「俺は!グルド・アセラウルド!」
「俺はゼクス。よろしくな」
これは後にどんな脅威からも世界を守った英雄とそんな英雄を友として持つ魔法使いゼクスの短く、そして長い生涯を通したお話だ。




