生前の声しか知らない恋人
のぶ代さんだ。
自己紹介は必ず〝僕〟から入るタイプの人だ。
「信太くん、どうしたの?」
やっぱりドラ〇もんだ。あと俺はの〇太くんじゃない。
「ちょっと待ってくれ。俺は、のぶ代さんの知り合いはいないんだ」
中年女性に見える幽霊は
「やれやれ、しょうがないなあ」
と呆れ……
「やっぱり、のぶ代さんじゃないかい!」
俺のツッコミが炸裂した。
いやいや、ふざけるな。
正直幽霊とか、おばさんと言うと怖そうだから中年女性に変えてるとか、どうでもいいんだ。
問題はなんで俺が、のび〇ポジションなんだよ。
「ふざけるなよ。どっちが、ドラ〇もんか決めてやる!」
そうだよ。ふざけるな。絶対渡さないぞ。
「俺が、一番ドラえ〇んだ!!」
「信太くん……きみは本当に、お馬鹿だね」
「ちきしょう。のぶ代さんポジション勝手に取ってるんじゃねえぞ!」
「たったらー♪」
「てめぇ。その効果音まで。許せねえ……俺がのぶ代だ」
「地球はかいばくだん」
楽しそうに、いかにもな爆弾を何処からか持ち出した。
「なにを……」
「どっかーん!!」
躊躇なく、のぶ代ボイスで、ぶつけやがった。
「……あれ?」
私は天国にいます。
いえいえ不幸な事ではありませんよ。
86歳まで生きて曾孫まで見ることが出来たんですから。私はたぶん幸福でした。
彼女が、先に天国に行ってしまった事だけが心残りでしたが……仕方ない事です。
「いや、また彼女に会えるんですかね?」
私は年甲斐もなく慌てました。
「……信太さん。いつも寝坊助ですね」
そして……私の愛する信代の声が、聞こえました。




