不可抗力があるらしい
「いらっしゃいませー」と声を出そうとするが出てこない
するといつの間にか体の自由が利かなくなっている
これは何かしらのスキル?呪文?確かに相手を切りつけると相手の身体機能が落ちるスキルなどは存在したが、こんな全く動けないものは存在しなかったはずだ
未知の攻撃をされたのか?とかろうじて動く目で相手を観察する
相手は普通の成人男性(お兄さん)で店員である私に対して気にすることなく商品を物色している、これは攻撃ではない?
朝の出来事を思い出す
そういえばこの鍛冶屋に向かう際に勝手に動いた現象だ、あれと確かに同じ感覚だ
変に身体を動かそうと試してみなければ抵抗感や束縛感も存在しない、椅子の背もたれに寄りかかっているようなリラックスした状態に感じる
なんでこんなことが起きるのだろうか?朝の出来事があった時はてっきりキネラのいままでの記憶があって、それが体を動かしてくれて職場に向かった、ということだと勝手に納得していたが今の動けない状況を見るとどうも違うらしい
そのようなルール?が存在するのか、それともこの普通のお兄さんがなにか精神攻撃などを気が付かない間に受けてしまい、動けないようにされるくらいの熟練の人なのか?
いろいろな考えが頭をよぎる
朝からの出来事を考えて一つの結論に到達する
私自身はこのゲーム世界のNPC(ゲーム内にいるキャラクター)で、今武器を物色しているお兄さんはソード戦記を今プレイしている主人公なのではないか?
そう考えると今日の出来事にも少し納得感が持てる、多分時間制限はあるものの行動の制限がキネラ自身には存在しており、その制限時間内なら逸脱しない限り好きに過ごしていいのではないのか?ということだ
あくまで仮定であり本当にそうなのかはわからない、だがそう考えると今までの人生設計を考える時間は無駄だったのか?
そもそも私の記憶はこのお兄さんがゲームを閉じたらそこで終わり?
また違う疑問が出てきたが今できることはこのお兄さんが買い物を終えるの待つことだ
そしてそのままお兄さんを観察すると確かに恰好が普通の人と違い、いい生活をしているのがわかるほど見ただけで良い素材なんだろうという見た目の服を着ている
ゲームの世界では装備にも重さのステータスが存在しており、鎧や甲冑などの装備は非常に防御力は高いものの重いため回避性能や攻撃速度が落ちるためそこまで人気のあるものではない
このお兄さんはちゃんと「わかっている」装備構成をしているなと褒めたくなってくる
そんなことを考えてると、お兄さんがカウンターに来た
「これください」
スラっとした細身の剣を持ってくる
「7000ゴールドです」
何も考えず勝手に言葉が出た
するとポケット付近から勝手にお金が入っているだろうとわかる革袋をドスっとカウンターに置く
「ちょうどいただきました!ありがとうございました!」
数えずともそれが7000ゴールドであるというのが勝手に理解できた、この世界では計算いらないのか?
そのままお兄さんは退店する、少しすると体を包んでいた何かが亡くなるのを感じて体を少し動かしてみる、何も問題なく動くし声も普通に出る
こちらから相手に話しかけるのは不可能だった、なにかあの強制されている状況に抵抗できる気がしなかったなにか力が足りないとかではなく、そもそもそこまで抵抗しようとする気持ちすら起こらないのだ
謎が解決しないのはむずかゆいが、何か困ることはないので今のところは保留だ
やりたいこと、検証したいことが増えてきたがすぐに解決することではないことも多いので気長に付き合っていくとしよう
そう思っているとダイソンさんが工房から帰ってきた
「お疲れキネラ、何か売れたか?」
毎日の流れの挨拶だろう、売れていなくても気になっていなさそうなトーンで話しかけられる
「さっき壁に掛けられているあの剣が売れましたよ、これが代金です」
先ほど売れた場所を指さして代金の7000ゴールドの入った袋を渡す
「おぉ!あんないいもんが売れるとはだいぶ太っ腹な人もいたんだな!」
心底驚いた顔でその代金を受け取る
「とても良い身なりの服を着ていましたよ、どんな方なんでしょうか?」
ダイソンさんは何か知っているかもしれないと思って聞いてみる
「あぁ…それはたぶん冒険者じゃないか?なんでも魔物を倒して魔王を倒そうと鍛えている人たちだ、なんでもいろんなところで人助けもしてるからお金には困ってないとかなんとか聞いたぞ」
なるほど、NPCから見ればプレイヤーはそのようなように見えていたのか
「そら、結構いいもん売れたからな!ボーナスだ!いい時間だしそろそろ店じまいにするぞ」
7ゴールド渡された、たったこれだけ?とも思ったけど売り物を作ってもないし、昼食代を考えると十分だ、ありがたく頂戴しておこう
「ありがとうございます!お疲れさまでした!」
店じまいとかわからないしダイソンさんに任せよう、もう夕方だし少し眠くなってきた気がする
まだ小学生くらいと考えれば日が昇るくらいから活動しているなら眠くなるのも当たり前だ、お腹もすいてきたしもうさっさと帰ろう
「おーうお疲れさん」
なんにも怒られなかったし選択肢としては間違ってないみたいでホっとする晩御飯が家にあったか覚えてなかったので何かまた帰りに買って帰ろうかな?なににしようかと考えながら帰路につくのだった




