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三部 第二十七話

 惑星会議(グランドクロス)で僕の発言が通ってから、僕のやるべきことはほとんどなくなってしまった。


 もともと魔法陣の解析やポーション作成など、僕よりも上手い人間がゴマンといるティアマトだ。その人たちが本格的に動き出した以上、僕はお役御免になるのが当然だ。


 その結果として、僕は今――




「ほらほらどうした? 修行時代より腕が鈍ったんじゃないのか?」




「んなわけないでしょう! いつでも全力全開ですよ!」




 ハルナ師匠に最後の稽古をつけてもらっていた。






 ハルナ師匠がティアマトにやってきたのは二日ほど前のことだった。


 僕はバハムルの紹介や、異体に関する情報をカルティアから聞き出したりと、やることはあったものの基本的にのんびりした時間を過ごしていたところに来たのだから、驚いた。


 そしてさらに驚いたことに、師匠は開口一番にこう言ったのだ。




「大体の事情は察した。剣を取れ」




 こうして現在に至る。ちなみに細かい事情は剣戟の最中に説明した。


 それから今まで、僕が師匠の良い攻撃をもらって気絶する以外はずっと戦闘状態が続いている。


「まあ冗談は冗談として……タケルを倒したそうじゃないか!」


 師匠が陸刀・閃光を放ちながら話しかけてくる。


「あんなの! 無効勝負もいいところですよ!」


 それに対してタイミングを見計らった壱刀改変・斬光で閃光の衝撃波を断ち切った僕が叫ぶ。


 さらに追撃としてクリスタルの巨大槌を左手に持つ。




 ――崩撃(ほうげき)




 振り下ろした巨大槌が地面を破砕し、強制的に戦闘の場を空に切り替える。


 師匠は巨大槌を用意した時点で読み切っていたのか、すでに空駆を使って空を縦横無尽に走っていた。




 ――ここまでは僕の読み通りだ。




「おらぁっ!!」


 崩撃を行った反動を利用して、わずかな間だけ師匠を上回る速度で空を駆ける。


「相変わらず突飛な発想だが……それでは直線しか動けまい」


 師匠は僕の行動に眉を動かしながら、僕から距離を取るように動く。そうすれば僕が攻撃できないことを見越してのことだろう。




「僕は――魔法を使える!」




「なにっ!?」


 風の魔法で自分の体を弾き、無理やり方向転換を行って師匠の至近距離まで入り込む。風を打ち込んだわき腹が痛むが、師匠に隙を作るためにこの程度なら安いものだ。


「ッシャアアアアアア!!」


 手加減抜きの抜刀術を放ち、師匠の体を横に両断する軌道を描く。


「チッ!」


 しかし僕の抜刀術は師匠の放った抜刀術に相殺され、勢いの止まらない僕の腹部目がけて鋭い蹴撃が襲いかかる。


「このっ!」


 いきなり方向を変えることなどできないため、狙われた腹部にクリスタルの膜を作って蹴撃の威力を少しでも減らす。


「ごっふ……」


 トゲまで作って足に攻撃を与えるつもりだったのに、トゲごと砕かれて腹に足がめり込む。クリスタルすら粉砕する蹴りってどんな威力だよ……。


 だが、それでもある程度の威力減退はできたらしく、吐き気のする痛みではあるが気絶するほどのものではなかった。


「……らぁっ!」


 風の魔法で自分の体を上に弾き、師匠の追撃からどうにか逃れる。あのままもう一度攻撃を受けていたら間違いなく気絶していたところだ。


「ぜぇ……ぜぇ……」


 考える時間が生まれると、今まで体に溜まっていた疲労が一気に表面化してくる。すでに二日間はぶっ続けで戦っている計算になるので、僕の体力が尽きかけているのだ。


「なんだ、もうおしまいか?」


 しかし、僕の真下にいる師匠は息を切らした様子もない。どんなバカ体力してるんだ……。こっちは常に強化魔法で回復力を底上げしているんだぞ。


「……まだまだぁっ!!」


 カラ元気だというのは向こうにもわかっていることだろう。そして、さっき以上の動きを見せることは僕の体力ではもう無理だ。


 ……ならば、最後の攻撃を見せるまで!


 波切を納刀し、鞘の中で魔力を充満させる。僕の内部にある莫大な魔力が励起され、体内で熱い脈動をする。


「ほう……? 本格的に魔法を使うようだな。私との修行時代はほとんど禁止していたというのに」


「今は禁止されてません。それに……剣の腕を磨いたところで時間が少な過ぎますので」


 自慢じゃないが僕の剣に関する才能は低い。僕はあの修行をこなして伍刀までだったが、あの内容だったら兄さんなら七刀まで到達できる内容らしい。


「まあ、事実でもあるな。ならば魔法剣、というわけか……」


「そういうことです。……行くぞっ!」


 鞘に溜めた魔力を開放し、その場で抜刀する。


 すると白く輝く氷が霧状になって抜刀の軌跡をなぞっていく。


「凍り付け……!」




 ――弐刀改変・霧氷走破。




 断空の衝撃波に乗っかる形で氷の霧が鋭く尖って撒き散らされる。大きな威力はないものの、確実に当たってダメージを与えられる技だ。


「この程度!」


 師匠はそれを避け切れず、また僕相手にかすり傷でも負いたくないのか次元断層を使用してそれをかき消した。


「ら、あああああああああああああああぁぁぁぁっ!!」


 そこまで見越して、僕は天技・鏡写しを使う。


 六人になった僕の一人が本体である僕を抱える。残りの五人はその場で抜刀術の構えを取った。


『せいっ!!』


 五人が同時に抜刀し、それぞれ別の属性を宿した魔法剣で断空を放つ。


「これが鏡写しか……初めて見るが、厄介なものだな……っと!」


 属性同士が重なりあって通常より遥かに強力になった断空を、師匠は再び使った次元断層で防ぐ。


 ……本当に馬鹿げた防御性能をしている技だ。


 だけど、使うためには抜刀術の形をとらなければならない以上、使った後の一瞬に隙ができる――!


「そこ、だぁっ!!」


 次元断層を使った直後の師匠目がけ、僕は自分にできる最速最強の魔法剣を放った。




 ――壱刀改変・多重斬光――




 前に火竜(ファイアドラゴン)との戦いの際に使った天技・鏡削り。それによって腕の部分を無数に増やして斬光の軌跡をなぞらせる。


 斬光は僕の中で最速の剣技になるが、それでも師匠なら抜刀術を使わないでも防げるレベルだ。


 それを鏡削りで増やし、さらに別の魔法を重ねる。重ねるものは僕の使える最も強力な魔法――《終焉(カタストロフィー)》。




 ――崩!




 鈍く白に輝く魔力の塊が剣先から迸り、放射状に広がっていく。これに触れたら人の身など一溜まりもない。


「ぐっ……!」


 さすがの師匠もこれには苦悶の表情を見せる。そして僕はようやく正気に戻った。


(ヤバッ! 《終焉(カタストロフィー)》なんて対人に使う魔法じゃないって! ましてや模擬戦だぞこれ!)


 うっかり戦闘の高揚感に任せて最強魔法まで使ってしまった。これはマズイかも?


「師匠、今すぐ消しますから下がってください!」


 《終焉(カタストロフィー)》を消すには魔力を遮断するクリスタルで直接覆ってやるしかない。通常の魔法なら術式を解除することで消せるのだが、様々な魔法をかけ合わせたこれに関しては術式がグチャグチャになり過ぎていて不可能なのだ。


 そのため、今すぐクリスタルを出そうと意識を集中させた瞬間だった。




「イカンな。戦闘の最中に敵から注意を外せなど、教えた覚えはないぞ?」




 そんな声が後ろから聞こえたのは。


「――っ!?」


 喉の辺りで呼吸が詰まり、その声の冷たさに全身が総毛立つ。


 なぜ、どうして、何があった、と言った疑問の言葉が頭の中を埋め尽くす。とてもではないがまともな思考などできはしない。


「まあ、あの攻撃には少しだけ焦ったがな。確かにお前の攻撃力だけは私も上回っている。認めようじゃないか。だが――」




 ――まだまだ未熟だ。




 そんな言葉と首筋への一瞬の衝撃。それだけで僕の意識は簡単に消え失せた。






「む、目覚めたか」


「……師匠」


 目が覚めて体を起こすと、師匠が近くの木にもたれかかって剣の手入れをしている姿が目に入った。


「…………ああっ! 師匠、どうやってあの攻撃避けたんですか!?」


 少しの間だけ意識が定まらず、どうしてここにいるのかもわからなかったがすぐに意識をハッキリさせて、師匠に詰め寄る。


 自分で言うのも何だがあの攻撃はタイミング、速度、威力ともに完璧だった。どうやって避けたのか、まったく理解できない。


「落ち着け。私に詰め寄るな。教えてやるから座れ」


「あ、はい」


 師匠に詰め寄っていたことを反省しながら、その場に腰を下ろす。師匠もそれを見てから、説明を開始した。


「まず、私が使用した天技の説明からしようか。天技・次元回廊。ごく近距離限定とはいえ、次元と次元を介した瞬間移動を可能とする技だ」


「そんな技あったんですか!? 以前見せてもらった巻物にはありませんでしたよ!?」


 というかすでに人間の領分を越えた技だ。次元断層も使えない僕にはとうてい不可能だ。


「私のオリジナルだからな。書き足すのを忘れていた。まあ、この技は実際気にしないでいいと思うぞ? タケルはおろか、ヤマトでさえ修得できずじまいだったからな。おそらくこの地上で使える人間は私だけだろう」


「そんな技使わないでくださいよ!」


「お前だって鏡写しを使ってきただろう。あれも世界でお前だけしか使えないはずだぞ」


「うっ……」


 でも、師匠の方が地力は遥かに上なんだからこっちは多めに見てもらえないだろうか。


「第一、あれはそこまで使い勝手のいい技ではないぞ? 体力の消耗も激しいし、連発もできない。それにごく短距離だからな。私みたいに純粋な剣士でなければ使いこなせまい」


 その点で言えばお前の鏡写しの方がよほど使いやすいだろう。と言われてしまえばこっちも黙るしかない。確かに鏡写しは使いやすいけど……。


「まあ、僕の負けってことで納得しておきます。……師匠。僕が手紙で話したこと、引き受けてくれますか?」


 模擬戦の話から、手紙の話に変える。もう模擬戦に関して話すことはなくなっていたので、ちょうどいいタイミングだろう。


 そして僕が手紙でお願いしたことは一つだけ――




「別に構わないぞ。お前が突入するのを援護すれば良いのだろう?」




「正確に言えば、僕が突入するまでは僕の援護を。突入してからは地上をお願いしたいのですが」


 空駆を使えるこの人なら、僕の援護もできる。内部からは僕の戦いだ。この人まで巻き込んで自爆はできない。


「わかっている。私だってこの地上が滅んでしまうのは遠慮願いたい。全力を尽くすつもりだよ。……頼んだぞ、不肖の弟子よ」


「任されました。師匠」


 空を見上げ、異体を睨みつけながらハルナ師匠の激励に応える。




 ――決戦の日まで、あとわずかだ。

もうすぐ終わり……! 約五ヶ月弱、長かった……!


すでにオチも考えましたので、あとは書くだけです。最後までよろしくお願いします!

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