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第1話 異世界召喚だけど

「カードゲームをやるの⋯?」

「さようでございます。」

 カナタは、思っていたことの斜め上を行き困惑している。能力が手に入る、武器が貰える、スキルが増える等、夢いっぱい胸いっぱいに想像していたが、ガラガラと崩れ去り、洞窟に生き埋めになったのような気分になる。

 狐面の女性は、再びガクッと肩を落とすカナタを、今度は気にすることなく、平然としたまま、もう一度お辞儀をする。

「改めまして、(わたくし)は、この館の(マスター)で、咲夜(サクヤ)、と申します。以後、お見知り置きを。」

 咲夜は、そう言うとお辞儀を直り、横髪をさっと手で払う。


「それではカードゲームについてご説明させていただきます。まずこのゲームは、あなた様を含めて、10名の参加者がいらっしゃいます。またカードゲームの内容ですが、ルールは【ババ抜き】と同様です。同じ数字を揃えて行き、無くなった方がその時点でクリアでございます。但し、ババ抜きとはいっても、ルールが多少異なります。」


 咲夜の言うルールは、ざっと以下であった。

 ・カードはトランプ同様1〜Kが4種類の52枚が2セット+ジョーカー

 ・スペード、ハート、ダイヤ、クローバー、ジョーカーは、数字に関係なくカードを所持していると各々特殊な能力が使える。

 ・特殊な能力として使用したカードは使用した本人のみババ抜きの対象に出来ず、かつ捨てることも出来ない。

 ・ジョーカーを所持していると()()()()()がある。

 ・お互いのカードは見えない(カードは自分にしか見えないバインダーに投影される)。

 ・バインダーを持っている者が近くにいたら、警告音が流れる(ON/OFF設定可能)。

 ・カードは、相手の身体に触れることで、持っている対象カードがランダムに選定される。※特殊な能力として使用した場合は、この限りではない

  (正確にはバインダー上に映る身体にセットする)

 ・相手から手に入れたカードは、自動的にバインダーに収納される。

 ・バインダーの容量は全部で10枚、それ以上は持てず、捨てることも出来ない。

 ・カードは、揃っていることを本人が確認すれば、その場で自動的にバインダーから消滅する。

・5枚以上消滅させないと、手持ちのカードが無くなってもクリア出来ない。


 咲夜は淡々と説明を続ける。

「ゲームスタートから、1時間以内に必ず相手に触れてください。相手を見つけることが出来ず、または触れられなかった場合はペナルティがありますのでご注意ください。時間についてはバインダーに時計機能も付いていますのでご活用ください。」


 ――情報が多すぎて、カナタは、理解が追いつかない。

「そんなに一気に覚えられないんですけど⋯。」

「問題ございません、バインダーのヘルプ欄で後でもご確認いただけるようになっております。他にも、いくつかルールはございますが、残りは各自バインダーから確認してください。」


 カナタは、時間制限のある【ババ抜き】ということは理解できた。それ以外は後でバインダーとやらで確認するしかない。

「10人と言ったか、参加人数は。俺以外のメンバーが見当たらないが?」

 咲夜は特に驚く様子もなく、奥にある扉を指す。

「あちらの扉を抜ければゲーム会場です。他の皆様も同様、別々の部屋に用意されて説明を受けています。」

「ん?てことは、咲夜さん以外にもマスターがいるのか?」

 咲夜はニコリと口元を緩ませる。

「はい、仰る通りです。部屋の数だけマスターが降ります。また、各マスターの代表選手があなた様方ということになりますね。」

「勝手に連れてきておいて、代表選手とはなんとも言えない話だ。」

「そうですね。けれど、()()()()()()()()()()()。」

 カナタは、理由を聞こうと思ったが、思い留まる。聞いたところで、このゲームをやめられることもないだろう。すごく嫌だけど、仕方がない、と覚悟を決める。

「分かったよ、そのババ抜きでもジジ抜きでもやってやんよ。俺やってやんよ。」

「はい、ありがとうございます。なお、優勝者には賞品として、どんな願いも一つ叶うというプレゼントがございます。是非、頑張ってください。」

 その話しを聞いて、カナタは驚く。けれど、すぐに平静を保つ。

「その願いでこんなゲームに呼ばれないようにって最初から願いたいもんだ。」

「はい、可能でございますよ。優勝目指して頑張ってください。」

 全く皮肉の通じないサクヤに、カナタは暖簾に腕押しと思い、コホンと咳払いをしてみて、服の襟を正す。

 そしてカナタは思った。よくよく考えてみたら、残りの9人も俺と同じように異世界召喚された人たちだろう。皆で協力して誰か1人を優勝させ、皆を現実世界に返してくれと頼めばみんなハッピーエンドじゃないか。

 どんな願いも叶えられるなら、そもそも何故このようなゲームをしないといけないのか、甚だ疑問である。けれど、今は何も言ってもこのゲームに参加させられることに変わりはないだろう。協力者を見つけるためにも、まずはゲームに参加して、人を見つけなくてはいけない。1時間以内に見つけないとペナルティとか言っていたし。

 カナタは、サクヤを見やってからきっと睨む。

「ちなみに、何かくれたりするものはあるのか?相手の位置が分かるものとか。」

「残念ながら、最初に申し上げた通り特にございません。知恵と勇気で私を優勝に導いて下さい。」

「あんたを優勝に導くかどうかはさておき、俺も自分の世界に帰りたいからな。いっちょやってやんよ。」

「奥にある扉を抜けたらゲームスタートとなります。それでは、いってらっしゃいませ。」


 兎にも角にも、異世界に来てまで【ババ抜き】をやる羽目になったのであった。

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