03】INCIDENTS and OUTBREAKS
最初に火の手が上がったのは、かのブランデンリューム聖教会だった。
閃光弾のような光。心臓を揺るがすような重低音と爆発による硝煙!塔が傾き、最上部に吊られていた国内最大級の金色の釣鐘つりがねがものすごい速度で落下し、地面に叩きつけられた! 釣鐘は大音響と共に何度かバウンドし、回転を続け、凡そ100メトロほど中央大通りを転がり釣鐘の縁が広場の中央に祀まつられている、かつてこの世に平和と|安寧あんねいを齎もたらしたとされる創造神モーヴ像の首を刎ねて止まった!
一瞬、刻も止まり、運動が失われ、色までもがその本質を危うくして、すべてのものは完全なる静謐せいひつに支配された。
刹那、朝からずっとくぐもっていた空が俄かに明るくなり、高速で雲が散開し、至る所に開いた雲間から陽光が地上に降り注いだ!
開闢以来、くりかえされてきた自然界の営みがこの日、リセットされた。…光に満ちた、天を衝つくような青空が広がる中、あろうことか血のように紅い雨が降り出した!初めは小さな雨粒がポツリ、、、ポツリ、、、だんだん小刻みに強さを増して行き、最後に大粒の雨がポタポタポタッと間断なく降り始めた!存在するもの全てを奈落ならくの底に叩き付けて粉微塵コナミジンに吹き飛ばしてしまう程の情け容赦ない烈しい土砂降り!そして、それは視界を曖昧あいまいに…かつて在ったものの揺るぎないはずの記憶を、むべなる深淵へと崩落ほうらくせしめ、どこまでも紅く無遠慮に染めていった。
三日三晩降り続いた雨は誰も見たことのない光景を発現させて、ようやく止んだ。