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十七話-1
俺達は呆然としたまま
立ち尽くしていた
しかし、その時間はほんの僅かで
すぐに沈黙を破る出来事が起こる
警報機の音が激しく鳴り響いた
火災か何かと俺達は思ったが
違った
数秒後、拳銃を持った黒ずくめの何者かが病室に入って来た
あの時…学校の時と同じだ
……"ファントム"!
皆がそれを直感的に認識していた
黒ずくめは"Speedword"で何かを伝えようとした
最初の一句だけ認識した
……動くな
次に続く言葉はなかった
変わりに黒ずくめの銃が宙を舞った
そこから場面がスローモーションのようになった
文月がスナイパーライフルを構えていた
彼女の眼鏡は無機質に光っていた
俺はポケットにあった
配布されていたグローブタイプの最新のマジックツールをはめるとほぼ同時に黒ずくめを殴っていた
ヘルメットの俺が殴った部分が割れ、俺の拳がめりこんだ
俺は右腕が黒ずくめに刺さっている事を除けば、宙に浮いているような状態だった
俺が右手を引き抜き、後ろに跳び、着地すると同時に黒ずくめは倒れた




