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一話-3
私が加わる事で
輪が完成したと言える
でも、この人数だから
輪の中に居るだけで
自ら、空気と化そうとしている存在もいる
…名は、夜代 幻夜-ヤシロ ゲンヤ-
変わってるのは名前だけじゃない
室内でも、白いマフラーと
白い…タクシーのドライバーみたいな革製の手袋は外さない
でも、身なりはそれなりにきちっとしていて
年頃の男子みたいに制服をだらし無く着こなす事はなく
キッチリしている
私の知る限り
優乃以外は彼ぐらいだろう
そのくせ、髪は乱雑に切り揃えられている
くせっ毛らしく
襟足は跳ねていて
前髪は長めだ
どうやら、自分で切っているらしい
そして、左腕には腕章がある
最も優秀な生徒に贈られる
称号みたいなもので
いわゆる、首席みたいなものだ
そんな一風変わった男子生徒
夜代 幻夜は何をするでもなく空を見ていた
会話には興味はないらしい
正直な話
彼は居なくても、別に輪が崩れる事はない
でも、彼は何故か何をするでもなく輪の中に存在した
まるで、幽霊みたい、なんて
その時、思っていた