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零話
刑事・秋里 冶奄-アキサト ヤエン-はタイミングを見計らっていた
引き金を引くタイミングだ
なんとか、気付かせずにここまでチャージができた
後はタイミングだけ…
外す訳にはいかなかった
黒い影が秋里刑事の前で俊敏に動く
「いい加減…止まれ、BLACKGHOSTォッ!!」
このタイミングではないと思い
秋里刑事はスティックを振るう
スティックは熱を帯びていた
普通に触れば皮膚が爛れるだろう
"幽霊"は秋里刑事の接近により
退路を塞がれた形となった
"幽霊"はスティックを避けたものの
体勢を崩した
秋里刑事は好機だと思い
懐でチャージし続けた拳銃を取り出し
引き金を引いた
一瞬の閃光の後、
僅かな沈黙の後、
巨大なエネルギー体が"幽霊"に打ち付けられた
秋里刑事が勝利を確信した瞬間だった
幽霊は秋里刑事の懐に現れ右手を振るった
秋里刑事と世界を
真っ白な光が包んだ
秋里刑事の思考は一瞬にして真っ白になった
それが最後の思考であった
…唯一、真っ白でなかったのは
漆黒のコート、漆黒の革製の手袋、漆黒のマフラーを着けた
黒い幽霊だけであった
第0話 BLACKGHOST