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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

日常の一つ

作者: mimix


 朝起きる。朝食を食べる。家を出る。友と語らう。笑い、悲しみ、怒り、泣く。そうして日々を生きる人々のなんと素晴らしい事であろうか。

 本当に、本当に。素晴らしくてたまらない。

 そう在る事がどれだけの幸せかも分からないだなんて。


 世界は不平等だ。そんなのは小学校に2、3年も通っていればきっと気がつく事だろう。

 何も難しい事はない。ただ他人と自分が違い、それを平等に均す事が出来ないと悟るだけの事だ。

 僕の場合、初めてそれを感じたのはきっと物心が付く前の事だったのだろう。

 何故なら、僕が自分を自分として知覚した時にはもう僕は奴隷だったから。


 現代日本に奴隷はいない。これは一般人の共通見解であろう。

 しかしいるのだ。大人に虐げられ、同じ年の子供に蔑まれ、心配などされることなく、生きて、死ぬ人間が。この日本に。

 「それ」は奴隷では無いのかもしれない。「基本的人権」が適用されているのかもしれない。「立場は平等」であるのかもしれない。それでも。

 それでも「平等」では無いのだ。

 確かに地べたに身を窶し、一般人よりも格下の扱いを受ける者は存在するのだ。

 ただただ、この場所ではそれが僕であったという、それだけの話だ。


 朝起床後、僕はすぐに動き出す。でなければ父という符号の他人に首を絞められ、頬を叩かれ、蹴り飛ばされる事だろうから。


 僕は奴隷だ。世間一般ではそんな事は無いかもしれないが、実際の状況がそうとしか言いようが無いのだ。

 自分の生活が普通の一般人とは違うのは理解している。

 親の言うことを無条件で聞き、学校へ行けばいないものか腫れ物のような扱いを受け、搾取されるだけの人生。


 それで良いのかと聞かれれば必ず「否」と答えるが、しかしそんな希望を持つ機会は与えられない。

 反抗などとっくに諦めてしまった。

 何も生まれず、何も進まないこんな生涯に意味など無いのだろう。

 もしかしたら明日にも父が死ぬかもしれない。自由になるかもしれない。何らかの施設に保護される可能性だってある。

 だがしかし、そんな仮定は無意味で、無価値なのだ。

 どうせ何も変わらず、毎日は過ぎ去っていく。

 日常なんていうものは、そういうものだ。

 まあ、なんだ。きっと僕はこれからもこうして過ごすのだろう。

























 嗚呼、世界は今日も素晴らしい。

 きっと皆もそう思っている事でしょう?

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