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フィリーネとの会話

 また全身を伸ばせないベッドだ。

 いつの間にか晩餐は終了し、決められた部屋に案内される。個室というのもなかなかに贅沢なものだ。商人ギルド、といったか。ギルドの取締はポッサートという名前であった。

『お願いとは他でもない、この都市プロッホベルクを再び守っていただきたいのです。ゼンケル伯ランドルフさまの手から』

 ここはゼンケル伯領。当然その名前が出てくるのは不思議ではないが、なぜ自分の領地の都市を攻撃する領主がいるのだろうか。

『父上のときには、都市に自治権を認めておった。ランドルフめはそれを反故にして、この都市の財産をじぶんのものにしようとしたのだろうよ』

 ベアトリクス女伯がそうつぶやくと、ギルドの一同がざわめきを上げる。

『父上......ということは?』

『そうである』

 ずずっとワインの瓶を手にベアトリクスの目の前に現れるヴィンツェン司祭。

『こちらの方は、正真正銘のゼンケル女伯たるベアトリクス様である!悪逆非道のランドルフめを懲らしめるために、ゲッテン騎士を味方につけこの都市に馳せ参じたのである!』

 おお!、と大きな声が上がる。

 勝手にやってくれ、という感じだ。それはいくらなんでももり過ぎだろうと心のなかで私は悲鳴を上げる。

 ヴィンツェン司祭の思いつきにのるように、話が加速して進んでいく。教皇とやらと戦う前に天下でも取れそうな勢いだ。

 私は思わずため息をつく。

 そんなとき、ドアをノックする音。夜ではあるが、窓からの月の光が扉を照らす。

「どうぞ」

 私の声に少し遅れて、扉が開く。

 左手に燭台を持っている少女ーーフィリーネであった。

「お飲み物を持ってまいりました」

 右手にはテラコッタの水差しを掲げるフィリーネ。まだ着替えていない私はベッドから起き、テーブルにかける。

「フィリーネものむか?」

 フィリーネはこくんとうなずく。

「しかし、参ったことだな。こんなことになるとは」

 フィリーネは注がれたワインの木のコップを両手で抱えながら、じっと私を見つめる。

「レオールさまがいれば、多分大丈夫です」

 他人に当てにされるのも悪くない。正直この『中世世界』にもだんだん疲れてきた頃合いだった。

「そもそも、私に関わらなければ平和に過ごせていただろうに。申し訳ない」

 首を横にふるフィリーネ。

「いつ死ぬかわからない人生、農民の身でありながらこんな通りところまで旅ができて嬉しい限りです」

 この世界の人々はいやに死を意識するな、と私は感じる。

 いい機会だ。フィリーネに聞きたいこともある。

 ろうそくがゆっくりとその炎を揺らがせる。夜はまだ長いーー

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