油断大敵
前回のあらすじ
金色の石をポイ捨てした
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トーロンドの町から馬車を走らせると30分の場所にあるこの鉱山。
名前はトーロンド鉱山とひねりのない名前だがそもそもこの鉱山を元に町を起こしたのがブーゴ・トーロンド、彼の名字からとられたからである。
そして現在二人が追っている人物、ヤーゴはそのブーゴの息子にして跡継ぎである。
フルネームはヤーゴ・トーロンド。
「ヤーゴは先代の父、ブーゴから財産とこの町のトップの座を手にし順風満帆な生活が約束されて”いた”」
「いた?」
レイが今回の任務の詳細を話しているが過去形で区切った事にアインは首をかしげる。
「そ。でもその約束は成立しなくなった。理由はこの鉱山で取れていた鉱石が取れなくなってきたから」
魔道具を作成する際に必要な魔導石を採掘することができたこの鉱山は不幸なことに近年、年々採れる量が減っていき現在は欠片のようなものしか採れないという事態になっていた。
「それならどうやって今もトーロンドの町は栄えているんだろ」
「んなもん魔導石に代わる売り物が見つかったんでしょー」
「見つかったって何が?」
「さぁ?でも思い当たる節はあるんじゃないの?」
アインが頭に?マークを浮かべて問うがレイはニヤニヤした顔で見返すだけ。
「う~ん?……え、まさかあの金色の石!?」
鉱山入口で見た山積みされていた彼が触れた時に起きた視界が歪み謎の声が聞こえ強烈な不快感を与えてくるあの石。
レイはそれだと読んでいるようだがアインは信じられなかった。
「そんなにヤバかったの?」
「ヤバいなんてもんじゃねぇよ!あんなん一時間いや1分でも持ち続けてたらオレ発狂する自信あるもん」
「ほー、そりゃ怖いねぇ」
「マジなんだって!絶対やべーもんで作ってあるにちげぇねぇよ!」
アインが必死にあの金色の石の異常さを訴えるがレイは適当な返事をしながら鉱山を進むがふと足を止めたため彼女の後ろにいたアインが彼女の背中に背負ってあるリュックサックに顔面が激突した。
「イデッ!?なんだよ急に止まって~……って、うおっ!?」
アインはぶつかった部分を手で押さえながら彼女の後ろから顔を出して前方を確認するとそこには衣服を纏った遺体が白骨化して通路の壁にもたれかかっている姿がランプに照らし出されていた。
「ヨアカリの奴か」
レイは纏った服の腕章のマークを見てそう告げる。
二つの山の間に日食が描かれているのが特徴のそれは紛れもなくヨアカリの腕章だった。
アインは驚き後ずさるがそんな彼にレイは持っていたランプを持たせ「あれ確認するから照らしてて」と言って彼女は遺体の衣服を漁りだす。
アインは彼女の手元を照らすために遺体の方に近づき、その遺体が纏っている衣服に注視する。
真っ白なローブはふくらはぎまである大きさで一部は金色の模様で装飾されており骨の指には人差し指には綺麗な魔導石がランプの明かりで淡く反射している。
そんな衣服のポケットから一冊の冊子が姿を現した。
レイはそれを手に取り数ページめくる。
「レイ、それは?」
「日記よ、内容を見る限りどうやら昨日連絡が途絶えたヨアカリの連中の一人みたい」
ヨアカリの部隊が白骨化死体で発見されたのにもかかわらず彼女は素っ気ない様子でページをめくる。
すると、とあるページを見て彼女の手が止まる。
アインは気になり彼女の隣から覗き込む。
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ー○○年4月11日21時10分ー
我々、ヨアカリ調査部隊はヤーゴ・トーロンドの身柄の確保のためこれよりトーロンド鉱山の内部に突入する。
ヤーゴ・トーロンドは鉱山の最深部にいるもよう。
……とはいえ我々は二つ名魔術師様ほどではないにしろ実力は10人とも皆若きエリートぞろいだ。
それに対し相手は日常生活レベルの魔術しか使えないことが事前情報と町への情報収集で判明している。
部下もいるようだが魔術のレベルに関してはヤーゴと似たり寄ったりなので容易い任務だろう。
「鉱山の奥地で何をやっているかは分からないがさっさと終わらせて帰投しよう」と隊員たちに提案すると皆同じことを思っていたようで満場一致で強襲することを決めた。
こんな大して目新しいものもない辺境の地に居続けたくなかったのだろう。
私もそうだった。
ー○○年4月11日23時36分ー
……失敗した、失敗した、失敗した!
我々、ヨアカリ調査部隊はヤーゴ・トーロンドの確保に失敗した。
突入しヤーゴを追い詰めたまでは良かった。
いや、今思えばあの時すでに奴の掌の上で踊らされていたのかもしれない。
ヤーゴは見たことない化け物を従えていた。
その化け物は我々の魔術を何十発も受けたにもかかわらずあっという間に負った傷は消えた。
その化け物は私の隊員に棘のようなものを頭や胸に突き刺した。
不思議なことに出血はなかった。
突き刺された隊員はすぐに払いのけ距離を置くがそれから間もなく全身が痙攣しその場で倒れた。
毒かと思い即支給された毒消しを手に彼のもとに駆け寄ったがその瞬間、彼の肉体はプシューという音とともに消え地に溶けて無くなり骨だけになった。
それを見た私を含めて隊員たちは混乱状態に陥った。
2名ほどは発狂してしまったのか奇声を上げ泣きながら出口の方向に逃げようとしたがヤーゴの部下に行く手を阻まれた。
普段なら何ともない雑魚のはずなのにその発狂した隊員たちは魔術すら発動せず我武者羅に「いやだ!外へ!外に!逃げなきゃ!」など狂ったように叫ぶだけだった。
そんな隊員たちをヤーゴの部下は殴る蹴るなどして倒し彼らを化け物の方まで引きずり投げ入れた。
投げ入れられた隊員たちはまるで水に溺れた時のようにじたばたし這って上がろうとするが化け物は容赦なく棘を刺した。
刺された隊員たちは刺された場所を口を開けて震えやがて「ああああああ!」と叫び先ほどの隊員と同じようにプシューと音を立てて地面に溶けていった。
何とか正気を保っていた残りの隊員たちもそれを見て限界を迎えたようで出口に向かって逃げ出した。
私も逃げ出した。
そして私はリーダーであるにもかかわらずヤーゴの部下と取っ組み合いなっている彼らを囮にしその場から唯一抜けだした。
これは本部に連絡し増援を呼ぶためだ、見捨てたのではないと言い聞かせながら走った。
私の後方では隊員たちの悲鳴が響いていたが私は振り返らず逃げた。
それが良くなかった。
必死でこれからどうしようかと頭の中がぐちゃぐちゃになりながら走っているとドスンッという衝撃を左腕に受けた。
私は恐る恐る衝撃を受けた箇所に目をやるとそこには先ほど隊員たちに刺さっていた棘と同じものがあった。
慌てて払いのけた。
しかし左腕はプシューという音が鳴り肉体が溶け出した。
私は泣き叫びながら腕を抑えたが溶けるのが止まることはなかった。
それから3分ほどだろうか私はまだ生きていた。
どうやら心臓か頭を刺されてなかったら溶ける速度は遅いようだ。
しかし私の体は左腕は完全に溶けてなくなり左足も感覚が無くなって立ち上がれなくなった。
私は連絡用の魔術を展開しようとしたが魔力も溶けたのか分からないが発動することができなかった。
もう私はただ溶けて消えゆくだけしかない。
隊員を見捨てて逃げた罰なのだろう。
私は隊員たちに詫びながら泣いていたがこれでも一部隊を預かった者だ。
私たち調査部隊は3時間ごとに本部に状況報告をしなければならないがもし連絡がなく更にもう3時間後にも連絡がなかった場合は本部は緊急事態と判断する。
そうすると新しい突入部隊が来る。
なので私は我々のような失敗を繰り返させないようにこの記録を記す。
それが残された時間で私にできる罪滅ぼしだ。
これを読む者がヤーゴやその部下でないことを祈りながら私は終わるとする。
こ■山は沢■の■■を吸って■るー
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日記はここで終わっており他は血などで汚れ読めなかった。
「レイ、これって……」
この日記の持ち主の末路を嫌でも想像してしまう。
アインが冷や汗を浮かべる中、レイは日記をその遺体の上に置いて立ち上がる。
「さーて、ありがたい教えを授かったところで行きますかー」
「応援とか呼んだ方が良いんじゃ?」
「要らん要らん、んなことしたら報酬減るでしょー」
レイは手をひらひら振りながら奥の方へ歩きだす。
アインはこの亡くなった人たちと同じようなテンションでこのまま進むのでは彼らと同じ末路を辿るのではと感じレイの手を掴む。
そんな彼を見てレイは何か考え事した顔で見つめた後、にやっと笑う。
「ほっほー!もしかしてビビってる~?アインきゅんは可愛いでちゅねー」
「はぁ!?ビビッてねーし!オレは心配して……!」
本当に心配している故に反論するアイン。
しかしレイは彼の頭をぽんぽんと撫でる。
「大丈夫、誰にも見つからず静かにひっそりとヤーゴに近づいて捕まえれば化け物に襲われないからさ」
「どうやっ……ッ!はぁ、なんか作戦とかあんの?」
レイが根拠不明のポジティブ発言にアインは反論する気が失せる。
しかし同時に嫌な緊張感はなくなり空気が軽くなった。
「んーそうね、こっそりと臨機応変に!でどう?」
「おーけー、いつものだな」
レイの何も考えてない作戦を聞き慣れたアインは呆れつつも歩き出す彼女に続く。
それからしばらく歩くと行く先にある洞穴がありその中に金色の光が見えた。
それはランプの明かりが要らなくなるほど明るく通路すら照らしていた。
二人は顔を見合わせ頷いてから洞穴を入り口を跨ぐ。
そこには鉱山の入り口で見た金色の石と同じものが山のように積み重なっていた。
空間が金色の光で照らし出されており文字通り宝の山という表現がしっくりくるほどだ。
もっともその金色の山の上に異形の化け物がいなければだが。
カエルのような姿をしたそれは10mほどの大きさをしており全身に黒く長く尖った棘がびっしりと生えいた。
そしてその化け物はアイン達に気付いたのかのっそりとした動きで振り返り彼らを視認するとニチャアと不気味で邪悪な笑みを浮かべた。
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