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眠りにつくのは


「平和だわ…」


婚約破棄された私の日常で変わった事の中に、王妃教育が無くなったという点があります。

今はソフィアが学園に通いながらも王妃教育を受ける日々。自宅では時々私も助言をしていますがあの子は素直に受け取らないので、時々お茶をする王妃様にそれとなく伝えて頂いています。

ええ、王妃様はお茶仲間となってくださったのです。

どうにも、ソフィアは殿下をお馬鹿さんとは思っていないようなので、王妃様とのお話で殿下がおばかわいいという話が出来ない模様。なので私が引き続きお茶のお相手をする事となっています。

とはいえ、お茶をする頻度はそこまで多くないので、時間に余裕が出来ました。

せっかくなので私は、王妃教育の為に入らなかった部活動といったものを始めてみようかと思います。


「マンドラゴラ研究会とマンドレイク愛好会って、どう違うのかしら…」


変わった部活動が多いこの学園は、見学するだけでもとても楽しいと新入生たちからは評判だそうで。私は王妃教育の為、見学すらしなかったけれど。

でも、本当に色々な部活動が多くて見学することがとても楽しい。見学という名ですが、実際は体験入部のようで様々な物に触れる事が出来ます。

「異端美食倶楽部」という部活では、虫を料理していました。味見もさせて頂き、意外と美味しかったです。「植物染色愛好会」という部活では白いハンカチーフを好きな色の植物で染める事が出来ました。異国で生み出されたという絞り染めという技術で、綺麗な模様が出来ました。仕上げが終わり次第後日頂けるそうです。


「あとはどこを見学していないかしら…」


本当に沢山の部活動があるので、見学した所をメモしておくべきでした。

私は王妃教育に日々励んでいた為、趣味といった事は特にありません。しいていうなら殿下を見守る事が趣味でしたし。

いっそ、「お馬鹿な殿下を陰から見守る会」とか作ろうかしら……レイル様は入会してくれそうですし。

校舎内で活動してる部活動を周り、次は校庭や学園の敷地内にある山で活動している部活動を見に行こうと校舎の外へと出る。

運動系の部活動が多いようで、馬術部等を見学しながらあちこち眺めて歩いていると


「……カナン様?」


裏庭の草花に溶け込むように、深い緑の髪の人物が横たわるのが見えた。

隣国の王子であるカナン様です。普段は口数少なく他の生徒からミステリアスだと言われるカナン様が何故このような場所で横たわっているのでしょう?瞳を閉じている姿は、眠っているのか倒れているのかどちらでしょうか。

私に気付いたカナン様はゆっくりと、髪と同じ色をした瞳を開いた。


「シルヴィア嬢……おはよう」

「こんな所で眠っていると風邪を引いてしまいます」

「……?部活動してるだけ…」

「部活動…?」


裏庭で眠るのが…?

カナン様は起き上がり、深緑の瞳を真っ直ぐこちらへ向けて言った。


「学園お昼寝部。学園の敷地内のどこでも横たわって眠っていいという許可を得た部活…」

「……時折学内で倒れ込むように眠っている方がいるのはこの部活動だったのですか…」


この学園に入学してからあちらこちらで眠っている方を見掛けました。

食堂の床や図書室の机の下、職員室の前等、沢山の場所で、それこそ様々な身分の方が眠っていました。

伯爵令息や侯爵令嬢、時々教師の方まで。きっと顧問だったのでしょう。

けれど、まさか隣国の王子様が眠って居るとは思いませんでした。


「国に居た頃はこんな風に惰眠を貪る事なんて出来なかった……この国は自由でいい…」


眠そうな目を擦りながらカナン様はご自分の隣をポンポンとします。


「試しに寝てみれば分かる……ああでも、未婚の令嬢と隣同士で横たわるのは駄目か……じゃあ、少し離れて寝て…」


カナン様に言われるがまま、少し離れた場所に私は横たわる。

……これはなかなか普段見ない景色ですね。いつもより空が遠くて、空間が広くて。草の匂いも何だか心地好くて。


「普段忙しい人に、学園お昼寝部、おすすめ…」


そう言ってカナン様はまた眠りにつきました。

草と土の匂い、学園の部活動の声、私たちを気にせず近くを歩いていく生徒たちの足音。

確かにゆっくりするのにはとても良いかもしれない。

私は学園お昼寝部を入部する部活の第一候補にしたのでした。




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