表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の1ピース  作者: 四月いつか
第1章 父の告白
8/24

電話

何の予定もない日曜日、僕は海に居た。


大学では相変わらず友達は居なかった。

僕は『孤独』は苦にならなかった。

ただ『退屈』は苦手だった。

部屋でだらだらと時間を潰したりするのが嫌だった。

だから特に予定のない休日は、すっかり僕の愛車となっていた原付であちこちツーリングに出掛けた。


この日はT市の海に来ていた。

ここは風力発電所があるくらい風が強い地域でウインドサーフィンをする人達がたくさん海に出ていた。

上手な人は風を捕まえあっという間に滑る様に沖まで出ていった。

あまり上手じゃない人はしばらく進んだと思ったらすぐに倒れた。

僕はこの海岸で海を眺めながら時間を過ごすのが好きだった。


ポケットから紙片を取り出した。

僕はここ何日間かずっと迷い、考えていた。

僕は正しい事をしようとしているのか?

それとも愚かな事をしようとしているのか・・・


砂浜に座っている僕に夏の日差しは容赦なく照りつけた。

もう一度親父から渡された紙片を見た。

日差しはあまりにも強く、僕の思考を溶かしていった。

僕はポケットからスマホを取り出し書かれている番号に電話をした。

3コール目でつながった。

僕は自分の名前を告げた。

自分は桂木 明の息子である事。

父は病に伏しており病状は楽観出来るものではないという事。

父から『父と貴女との関係』を聞かされて今この様な電話をしているという事。

この連絡は父から頼まれた事ではなく、僕自身の判断である事。


そして最後に、

「この様な電話に対して貴女は嫌悪感を抱くかもしれない。もしそうであるならお詫びします」

と付け加えた。


ここまで一気に話終えると僕は小さく息をついた。

しばらく沈黙があった。

彼女がおもむろに話始めた。

まず、父の容態を気遣うお見舞いの言葉を、そして今とても驚いているという事、そして驚き戸惑ってはいるが、貴方が思っている様な、貴方からのこの連絡に対して嫌悪感など抱いていないという事。


彼女はとても良く通る声で凛とした口調でこう答えた。


僕は思い切って切り出してみた。


『ご迷惑でなければ一度貴女にお会いしたい』と。


電話の向こうで彼女は小さく笑った様だった。

そして『こちらは全然構わないからいつでも訪ねてくれていいい』と。


明日の正午に会う事になった。

『お昼ご飯は食べずにいらっしゃいね』と彼女は言った。


目に見えない運命の歯車の回るスピードが少しだけ速まった様な気がした。


明日、僕は如月麗子に会いに行く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 孤独を愛する律君、海を見つめて父親の頼みを叶えるため電話する描写が律君の性格を表して見えます。 さぁ、会いに行こう! [気になる点] 筆が遅いとの事、筆が早い人は一部の方以外に居ませんよ〜…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ