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最後の1ピース  作者: 四月いつか
第1章 父の告白
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父の告白2

『父さん、妹って・・・何だよそれ。母さんは・・・母さんはこの事知ってるの? 』


『て言うか、俺が物心ついた頃から父さんはずっと家に居た。ずっと俺達と暮らしてた。どういう事?』


父は僕が今まで見た事もない様な表情をしていた。

苦しんでいる様だった。

それは肉体的な苦痛ではなく、何とか言葉を絞り出したいのだが、自分の気持ちを僕に伝える為の言葉が出て来ない、見つからない、そんな表情だった。


『何を言っても言い訳になってしまう。それはわかってるんだ。彼女は子供が出来た事がわかった日にお父さんに別れを切り出した。生まれてくる子供は1人で育てると言ってきかなかった。』


『経済的な事を含め、父さんからの全ての援助を拒否した。そして、二度と父さんとは会わないと、生まれてくる子供も会わせたくないと、そう告げられたよ』


『そして彼女は担当者を変えてくれと出版社に訴えた。押しも押されぬベストセラー作家になっていた彼女の言い分はすんなり認められお父さんは担当を変えられた』


『そして彼女はお父さんの元を去った。住む場所さえ変えて。お父さんと会わない、子供も会わせたくない、援助も全て拒否する、それが彼女の望みなら・・・いい加減な男と思われるだろうが、その望み通りにする事がお父さんに出来る唯一の事だと思った』


ここまで一気に話すと父は一度小さく深呼吸をした。

そしてまた視線を窓の外に移しながらこう言った。


『すまない、お前達をずっと裏切っていた』


『父さんは俺達家族の為にとても頑張ってくれた。

姉さんや俺を大学まで行かせてくれている。大変な事だよ。とても感謝している。如月さんとその娘さんから何の連絡もなく、父さんに何も望んでいないなら、このままでいいと俺は思う。俺はこの事実を母さんや姉さんに知らせたくないよ』


『父さんだって母さんの性格を知ってるだろ?この事実を知らせたら凄く取り乱すだろうし、とても受け止め切れるとは思えない』


父は何かを言おうとした。

だが上手く言葉が出てこなかったのか、そのまま黙ってしまった。


父は何故僕だけを呼んでこの事実を告白したのか?

あと1年という余命宣告を受けて過去の過ちを懺悔したくなったのか?

ただ僕に聞いて欲しかっただけなのか?


僕は不意にある父の意志が垣間見えた気がした。

それは本当に不意に僕の脳裏に浮かび上がった。


父は僕を使って自分の置かれている「余命1年」という状況を如月麗子に伝えたいのではないか?

そして、まだ見ぬ娘に会いたいのではないか?


父は僕を見つめていた。

そして何かを感じ取った様だった。

ベッドに置かれているテーブルの上で既に置いてあったノートに何かを書き始めた。

そしてそのページを破り僕に渡した。


『みっともない男だと嘲笑ってくれていい。無責任な事をした男が今更何を言うんだと軽蔑されても構わない』


『一目で良い』


『会いたいんだ』


僕の手に渡されたその紙片にはある住所が書かれていた。

それは僕が今住んでいるA県の住所が書かれていた。


疑う余地もなかった。


それは如月麗子とその娘が住んでいる家の住所だった。







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