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最後の1ピース  作者: 四月いつか
第1章 父の告白
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父の告白

「独りで父さんのお見舞いに行きたい」


と母と姉に告げた時、二人は特に何も言わなかった。

それはとても意外な事だった、

何か思うところがあっての事なのか、単純に「男同士で話したい事があるのだろう」と思ったのか。

二人は特に何かを僕に訪ねる訳でもなく送り出してくれた。


実家にある車を運転して父の入院している病院まで向かった。

免許を取ってすぐに実家を離れて車の無い生活になった為、運転するのは約5ヵ月振りだった。

まさに「手に汗を握る」思いで病院に到着した。


父の病室は個室だった。

ノックをすると、『はい』という父の声が聞こえてきた。

父はリクライニング付のベッドを起こして座ってこちらを見ていた。

父は僕が実家を離れる時に駅まで見送りに来てくれた時と何も変わらない、あの時の父のままだった。


『律、元気そうだな。A県での暮らしはどうだ?』


父も母と同様に、独り暮らしの事、学校の事等を知りたがった。

父は黙って、時より微笑んだり頷いたりしながら僕の話を聞いていた。

一通りの近況報告を終えるとお互い少し言葉に詰まってしまった。

父は視線を窓の外に移した。

僕も同じ方向を見た。

僕の部屋から見えていた夏の空より、窓が大きい分、何か迫ってくる様な迫力のある夏の空が見えていた。


『律、お父さんは・・・ある罪を犯したんだ』


それは唐突に始まった父の告白だった。


『母さんと結婚して美樹とお前が生まれた。お父さんは仕事も順調でとても幸せだった』


『お前が生まれて2年ぐらいたった時だった。お父さんはある女性に出会った。仕事の関係でだ。お前もお父さんの仕事は知っているだろう。お父さんは出版社に勤めていた。あの頃はインターネットもまだない時代で作家希望の人間は自分の作品をよく出版社に持ち込んでいた』


『その女性もそんな、いわゆる作家の卵だったんだ』


『たまたまお父さんは彼女が持ち込んできた作品を読む機会があった。光るものがあったよ。既存の型にとらわれない新しい何かを感じた。』


『彼女に連絡して会う事になった。そしてこのままではまだ粗削り過ぎて出版の域には達してはいないが手直ししながら何とか出版にこぎ着けたい、うちと契約して欲しいと彼女に伝えた。』


『彼女は了承してくれて、お父さんが彼女を担当する事になった。』


『お父さんも言いたい事はストレートに伝えたから、ケンカ寸前・・・いや、ほとんどケンカしながらの共同作業だった。まさに二人一組、タッグを組んで何とかデビュー作発表までこぎ着けた』


『デビュー作はすぐに大きな話題になったよ。映画化もされた。ベストセラーだ。その後も順調にレベルの高い作品を書き続けて、今や不動の地位を確立したと言って良い。』


『その彼女の名前は・・・如月麗子だ』


僕は何も質問せずに黙って父の話を聞いていた。

何となく自分に関係のない様な。

遠い世界で起こっている事を聞いている様な。

そんな非現実的な感覚で父の話を聞いていた。


しかしその女性の名前を聞いて僕は一気に現実の世界に引き戻された。


『如月麗子』って・・・某日本で一番権威のある有名な文芸賞の選考委員にも名を連ねている大御所の作家じゃないか・・・


『お父さんは彼女と恋に落ちた。いけない事だとはわかっていたんだ。でもその時のお父さんにはどうしても彼女の存在が必要だった。そして彼女も同じ気持ちでお父さんの想いに応えてくれた。お父さんと彼女は愛し合う様になった。そして彼女との間に子供が出来た・・・』


『律・・・お前には妹が居るんだ』





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