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最後の1ピース  作者: 四月いつか
第1章 父の告白
18/24

佐原さん2

『いつでもいらっしゃい』と言っていた麗子さんだが、2日後に日時指定の連絡がきた。

指定された日は4日後だった。

その事に対する説明は僕に対して特に麗子さんの方からは無かった。

僕は了承し、その日はそれで電話を切った。

そもそもバイトのある平日もバイトの無い週末も僕には特に予定というものが無かった。


朝起きて部屋で朝食を取り、洗濯をして、昼食は大学の学食で食べ、その後はバイトの時間まで図書館で本を読んで過ごす。

バイトのある平日は大体こんな風に過ごしていた。


その日も僕はバイトに行った。

いつもの様に淡々とピッキング業務をこなしていた。

棚と棚の狭いスペースを抜け、広い通路に出た時に佐原さんと鉢合わせた。


『律君。お疲れ様。今日さ何時に休憩取る?』


『お疲れ様です。たぶん19時ぐらいに最初の休憩取ると思います』


「わかった」という風に少し頷いて佐原さんは忙しそうに小走りでどこかへ行ってしまった。


僕は予定通り19時に詰所に向かい休憩に入った。

佐原さんはまだ来ていなかったが、しばらくするとやってきた。


『律君、お疲れ様』


『お疲れ様です。俺、何かやらかしました?』


『大丈夫よ、何もやらかしてないから。』


そう言って佐原さんは笑った。


『私が今からやろうとしてる事は・・・本当はいけない事なのよ』


『私、会社の携帯から何度か律君の携帯に電話してるでしょ?仕事の要件で』


『はい。休日出勤や早出の要請のお電話を何度か佐原さんからいただいてます』


『で、こういうの「職権乱用」っていうのかな・・・私律君の携帯の番号を知ってる訳。』


佐原さんはポケットから小さなメモ用紙を取り出して僕に渡した。

携帯の番号が書かれていた。


『私の携帯の番号。今度自分の携帯から律君にかけていいかな?』


佐原さんはメモ用紙を指差して声を出さずに口の動きだけで「しまって」と言って微笑んだ。

僕はあわててそのメモをズボンのポケットに押し込んだ。

突然の事で答えに窮してしまった。


『ダメかな・・・?』


佐原さんは少し上目遣い気味に聞いてきた。


『大丈夫です。佐原さんの番号、登録しておきますね』


僕がこう言うと佐原さんはとてもホッとした表情になった。

そして「この事は誰にも言わないで」とも「二人だけの秘密よ」とも言わずに、

「ありがとう」

とだけ言って仕事に戻って言った。

とても佐原さんらしいと思った。

佐原さんは僕という人間をよく知っている。


一人の大人の女性がこういうシチュエーションで「電話をかけたい」と言ってくるという事は世間話をしたくてかけてくる訳ではないと思った。

佐原さん自身の事か、もしくは誰かの意思表示の代弁か・・・そんな感じの電話なのかなと想像された。


僕は休憩の間何度も自分の左肩を手で触れた。


佐原さんが立ち上がる時にそっと手を置いた僕の左肩を。








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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新、お疲れ様です。 今話は律君の日常生活ですね、律君は人見知りだけど意外とモテる。友人やサークル仲間はあまり居ないのかな? 今話の内容で更に物語と律君の深みが出た気がします。 [気にな…
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