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第6話 神覚の老賢者マビュラスとの戦い

 外に出たライトはどこに向かえば良いのかが分からなかった。だが風の精霊シルフィは実に勘がよくライトに助言し始めた。


「ライト! これだけの敵を動かせるところと言えば? もう分かるよね?」


 ここぞと言うときにライトの頭は働かなかった。こんな光景を見た風の精霊シルフィは凄まじいほどの溜め息をついた。

 一方のライトは悪びれる様子もなくただ頭を搔いていた。なんだか今のライトを見れば見るほどに風の精霊シルフィは残念がった。

 当のライトはやはり頭が回らずにむしろ逆にくたびれてしまっていた。もう風の精霊シルフィは失笑気味となり遂には漏れてしまった。


「はは。ライトォ! きっと神覚の老賢者マビュラスはもう既に中にいると思うよ!」


 それでもライトは気付かなかった。ここまでくると鈍臭い。だが風の精霊シルフィは実に優しく言いかけた。


「はぁ。やれやれ。敵はね。この基地のど真ん中にいると思うよ」


 聞いたライトは不思議に思うしかできなかった。だってと言わんばかりにライトは心の底から失笑気味になった。


「嘘だろ? それは。だってどうやって忍び込んだんだ?」


 透明じゃない限りは忍び込むなんて思わないだろう。ライトはそんな大それたことを仕出かすような老人には見えなかった。


「透明になったんだと思うよ、しかも宙に浮いて」


 そんな馬鹿なとライトは思ったがよくよく考えるともうそれしかなかった。故にライトは風の精霊シルフィの言葉を信じることにした。


「分かった。もし本当ならあとで謝らないとな。んじゃとにかくこの基地の真ん中にいってみるか」


 こうしてライト達は基地の真ん中に向かうことにした。果たして風の精霊シルフィは正しかったのか。それはいってみないと分からなかった。




 基地の真ん中にいると言わんばかりにたくさんの土の魔物がいた。だが肝心の神覚の老賢者マビュラスはいなかった。

 と思いきや風の精霊シルフィがなにかに勘付き口を動かし始めた。一方のライトは土の魔物を破壊しながら動いていた。


「ライト! いるよ! 間違いなく!」


 そう言われてもライトには感じ取れなかった。だが風の精霊シルフィは持ち前の感じ取る力で移動を開始し始めた。


「こっち!」


 と言われてもライトは追い掛ける気が起きなかった。故にライトは風の精霊シルフィに頼ることにした。

 どんどん離れていくと言ってもライトの視界に収まっていた。そしてついに風の精霊シルフィは止まり口を動かし始めた。


「感じる。……そこだ!」


 風の精霊シルフィは風の弾を作り出し撃ちだした。その直後に謎の竜巻が風の精霊シルフィを囲むように発生した。

 いきなりな出来事に風の精霊シルフィは驚きおののき抜け出せずにいた。見ていたばかりのライトが急に走り出した。


「シルフィ!?」


 時既に遅かった。風の精霊シルフィは竜巻の中で連続の疾風斬に遇っていた。それはもう気を失いかけるほどにだった。


「ほっほう。もう既に見つかるとはのう。さすがは風の精霊じゃな。しかし!」


 神覚の老賢者マビュラスは風の精霊シルフィの放った風の弾よりちょっとずれていた。きっと避けたのだろう。


「ほっほう。詰めが甘いのう。それでは儂には当てられんよう。ほっほっほ」


 この時のライトはく!? 見えない!? と困惑しながらも両方の手の平を合わせつつも落ちてくる風の精霊シルフィを乗せた。


「ライト。ごめんね。かは。僕が弱くて」

「もう……喋るな」

「ねぇ? ライト? 僕……強くなれたかな」

「ああ。お前は強い。だから今はゆっくり休め」

「うん。有難う。ライト」


 鈍臭かったライトも今の状況は呑み込めたようで静かに眠りについた風の精霊シルフィを丁寧に地面に置いた。そして――。


「お前だけは……許さない!」


 ライトはそう宣言すると神覚の老賢者マビュラスをこれでもかと睨み付けた。


「その眼差し……どこかで。いいや。あ奴はもう既にいない筈。しかもこ奴はよくよく見れば銀髪赤眼ではないか。儂は負けんぞ。絶対にな」

「おい。それって? まさか。兄さんのことかぁ!?」

「なにを言っておる? お前とあ奴ではなにもかもが違うではないか! 強さも桁違いじゃろうて」

「おい。お前……ふざけんなぁ!」

「ううむ。分からんことは分からん。じゃがな。儂は一気たりともふざけてはおらんわい! もうよい! お前に用はない! 消えてしま――」


 凄まじい跳躍と共にライトは人の話を聴くまでもなく神覚の老賢者マビュラスの顔を掴んだ。なんとライトは聞く耳で大体の位置を捉え嗅ぐ鼻で場所を特定していた。


「馬鹿な!? 儂が見えん筈では!?」

「ああ。確かに俺は見えない。だけどな! お前から出る卑怯者の臭いがしただけだ!」

「ほっほう。なるほどな。どうやら儂の敗けのようじゃな。さぁ! や――ぐふぉ」

「かっこつけんな、クソ爺が」


 またしても最後まで聴かずに神覚の老賢者マビュラスの顔から煙が立った。どうあれ気を失うほどの威力だった。神覚の老賢者マビュラスと共に落ちていった。

 無事に落ちるとライトはふと風の精霊シルフィのことが気になり近寄り始めた。一方の神覚の老賢者マビュラスの今後は摑まり聖王国の牢屋送りだろう。


「シルフィ」

「ううん。どうしたの? ライト」

「いいや。なにもない。勝ったよ。シルフィ」

「そう。よかった。有難う。ライト」

「ああ。帰ろう。皆の元へ」

「うん。ライト」


 こうしてライトと風の精霊シルフィによる神覚の老賢者マビュラス退治は終わりを告げた。あとになってやってきたファーヴィルによって後片付けは行われたのだとか。

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