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第4話 勝負の行方

 ここでライト達が勝たねば森はこのままだ。なんとしてでも勝たねばならない。だがライトと風の精霊シルフィに卑怯になるつもりはなかった。

 その為にもライトは瞬間移動をしようと走り始めた。その間合いを見極めようと黒雷の騎士ヴァニアスは両刃直剣を引き抜くことなく身構えた。


「気を付けて! ライト! 油断しないで!」


 油断はしていないが敵の実力が未知数だった。それは敵も一緒だろう。だが一つだけ違うのは今の敵は完全にライトを舐めていると言う点だ。

 上手くいけばそこの差で勝てた。だからライトは狙ってくるだろう。そしてライトは瞬間移動をし黒雷の騎士ヴァニアスの前から消えて見せた。


「ぐぅ!?」

「な!?」


 直後に黒雷の騎士ヴァニアスの衝撃に耐えたような声が聞こえてきた。すると今度はライトの驚きに満ちた声が聞こえた。


「ほう。防御したのは初めてだ」


 黒雷の騎士ヴァニアスは居合切りでライトの攻撃を防いでいた。ライトは今までどおりに顔面を狙っていたが今回は防がれた。


「ほう。力も強いときたか。貴様……ただの銀髪赤眼ではないな? 名は……なんと言う?」


 黒雷の騎士ヴァニアスにも伝わるくらいにライトは両刃直剣を握り締めへし折ろうとしていた。今のライトは歯を食いしばり答えようとはしなかった。


「無視……か」

「ライト」

「うん?」

「俺の名はライト。絶対にお前に打ち勝つ男だ」


 ライトは歯を食いしばりながらも言った。その威圧はもう既に鬼の所業を超えていた。


「ふん! 思い上がるな! 餓鬼風情が!」

「餓鬼じゃない。俺は……魔喰鬼だ!」


 お互いの力が拮抗し合っている。このままでは埒が明かないだろう。だがここに気持ちを切り替えた頼もしい仲間がいた。


「助けるよ! ライト!」


 風の精霊シルフィは即行で風魔法を発動しようとした。だが――。


「させんよ。今しばらく大人しくしておきなさい」


 謎の老人の声が聞こえてきた。風の精霊シルフィが発動を止め見上げるとそこには謎の老人が浮いていた。


「あ! く!? そんなぁ! 四天王の一人がくるなんて!」


 風の精霊シルフィは困惑した。絶句の域に到達していても不思議ではなかった。そう。謎の老人は四天王だった。


「ほっほっほう。儂は神覚の老賢者マビュラスじゃ。さてはて森の精霊よ。どう言うことかな」


 実に余裕ある言い方だった。四天王とはそれほどまでに実力があった。


「あ。いや。……負けない。僕はもう……負けない!」


 風の精霊シルフィは最初は威圧に敗けそうになった。だが途中から巻き返しなんとか言い切っていた。


「ほぉう。それでよいのかな」


 神覚の老賢者は杖を天に掲げた。その直後には地面から土でできた人型の魔物が現れた。それも一体ではなく囲まれるほどに。


「駄目!」


 風の精霊シルフィは神覚の老賢者マビュラス目掛けて風魔法を発動した。土でできた人型の魔物は主人が命を落とすと同時に消滅すると踏んでいた。


「ほっほう。その程度か。風の精霊よ」


 竜巻の中に閉じ込められた神覚の老賢者は風の精霊シルフィの風魔法を打ち消した。どうやらこちらの闘いもそう簡単には終わらなさそうだった。


「では……今度は儂から行こうかのう」


 そう言うと神覚の老賢者は再び杖を天に掲げた。土でできた人型の魔物を動かそうとしていた。どうやら自我はないようだった。


「させないよ!」


 風の精霊シルフィは最大出力で風魔法を発動した。最低でもこれの繰り返しをするつもりだった。

 一方のライトは拮抗し合うことに苛立ちを覚え始めていた。故にライトは遂に風魔法を使おうとした。

 ライトは風魔法の為に一時的に引き下がった。全ては風魔法に掛かっていた。


「うむ? なにを仕出かす気だ」


 黒雷の騎士ヴァニアスは警戒した。一気に間合いを取ったところで同じことの繰り返しだと痛感していた。なのにライトはそう思わなかった。


「俺に力を貸してくれ。頼む。兄さん」


 今のライトは右手と風魔法に掛けていた。右の手の平を見てはそうつぶやいた。覚悟を決めたライトは右手を下ろし足早に動く。全ては最後を決めるために。


「来るというのか。ほぉう。では……こちらも本気と行こうではないか」


 黒雷の騎士ヴァニアスはそう言うと居合切りの構えをした。どうやら黒雷の騎士ヴァニアスは黒雷一閃を使おうとしていた。これで勝敗が決まる。

 互いに沈黙が起きライトは姿を消した。瞬間移動をし一気に間合いを詰める作戦だ。さきほどとなにが違うのかと言えば風魔法により速さがより増していた。

 ライトは敵に気付かれないように風魔法を発動し密かに速さを水増ししていた。この異変に誰よりも先に気付いたのが黒雷の騎士ヴァニアスだった。

 だが時既に遅しと言わんばかりにライトの動きの方が一枚上手だった。それを証明するように一瞬の出来事に終止符を打つように黒雷の騎士ヴァニアスは沈んでいった。


「ば、馬鹿な。魔喰鬼の名は……伊達では……な……かった。ぐふ」


 ライトと黒雷の騎士の差は僅かだった。だがその僅かな力の差によって勝敗が決まるのも仕方のないことだった。黒雷の騎士ヴァニアスは顔面から煙を出し倒れていった。


「ぬぅ。黒雷がやられたか。おおむね靡かぬ森の魔喰鬼といったところかのう。その名……決して忘れんぞ」


 神覚の老賢者マビュラスはどうやら今は負けを認め一時的に退散するようだ。分が悪いと判断した。土でできた人型の魔物は全て崩れていき跡形もなくなった。

 本当はここで決着といきたかったがそうもいかないと神覚の老賢者マビュラスは黒雷の騎士ヴァニアスを宙に浮かせどこかに瞬間移動させた。そして自らも瞬間移動した。


「や、やったんだね。ふあ~。ぼ、僕達の勝ちだ~」


 勝利を得た風の精霊シルフィは心の底から安堵した。一方のライトは早く次の手を打たねばと思っていた。心が浮くよりも心が沈むくらいに重たかった。

 だからこそにライトは気を緩めることなく次の手を打とうと考えようとしていた。とその直後だった。だれかの影が急に現れた。その気配に風の精霊シルフィが気付く。


「うん? この気配は――」


 風の精霊シルフィはどこか懐かしい感じを醸し出した。謎の影の正体はどうやら風の精霊シルフィの知り合いのようだった。影が立ち止まり今にも話し掛けてきそうだ。


「なにかの騒ぎと思えば……。お前達……よくやってくれた。我が名は聖王国騎士団……白銀の騎士オーヴュラスと申す」


 謎の影の正体は聖王国騎士団に所属する白銀の騎士オーヴュラスだった。ライトは怪訝な表情をした。今までなにをしていたのだろうかと思った。


「おや? そのような顔をするとはな。面目ない。だがしかし! 四天王の所在は掴んである! どうだ? この白銀の騎士と手を組まないか。その――」

「俺の名はライト。好きにさせて貰う」

「おお! そうか。ライトか。良い名だな。では改め直して……これからよろしく頼む」

「こちらこそ。ところでどこまで付いていけばいいんだ?」

「なんなら我が隊のところにくるか。どうだ? 腹が減っているだろう」

「ライト。お腹は満たしておこう」

「シルフィ。ああ。分かった。そこでついでに寝泊まりさせて貰おう」

「おう! 任せとけ! んじゃあ決まりだな。今から案内するから付いてきてくれ」


 急に現れた白銀の騎士オーヴュラスはそう言うとライト達を親切に扱いつつ本部へと案内するのだった。ライトは密かに独りで攻略は無理と思っていたので好都合だった。

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