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第3話 隊長の意地

 ライトは剣こそは扱えないが魔法を得意としておりそれは魔喰鬼になっても使い続けるつもりだった。

 以前のライトでは無理なことでも今のライトならできることがあった。それを体現したときにライトは更なる飛躍をするだろう。

 まさにガーディアスを倒したときのようなことが起きる可能性があった。だがライトは剣捌きができない。もし敵が剣の達人なら苦戦は避けられない。

 剣と魔法の使い手こそが最大の好敵手だとライトも自覚していた。ただ暴力的に闘えば良いという訳ではないとライトは肝に銘じた。

 だがライトには百年の鈍りがあり暴力的に闘わずに済むかはやはり相手次第だった。できればと言いたいがそうもいかないのが現状だろう。


「ライト。着いたよ」


 風の精霊シルフィの動きが止まり振り返らずにそう言った。先導していた風の精霊シルフィは闘う準備をしたいと茂みの裏側にいた。


「敵は三人……か」


 ライトの視力は格段に上がっていた。昔は本の虫とまで言われたが見事な生まれ変わりを果たしたようだ。ライトは茂みの裏側で確認した。


「きっと中にはもっといるだろうね。ん? し! なんか聞こえるよ?」


 風の精霊シルフィが耳を立てるまでもなく聞こえてきた。この声からしてライトが見つけた三人の中の誰かだろう。


「たっくよ。隊長もお人が悪いぜ。水晶石を破壊するなんてよ」

「仕方がない。なんせ聖王国の白銀の騎士オーヴュラスが相手だったんだからよう」

「そうだ。そうだ。あの黒雷の騎士と互角に闘えるんだからな。恐ろしい」


 真ん中を筆頭に右と左も話し合いをし始めた。ライトは聖王国と聞いて疑問に思った。どうやらここ百年の間に情勢が変わったようだ。


「どうやら……今の俺は独りではないらしいな」


 ライトはどこか安堵した。知らない勢力の名だが独りではないと心の底から両肩を落とした。いずれ合流できれば良いのだが。


「聖王国のオーヴュラスは僕を知っているよ。会えるときがきたら良いね。ライト」


 本当にライトの知らぬまに聖王国が誕生していた。聖王国はライトが封印されてからできた対魔王の勢力だ。筆頭はライトの実の兄と言われている。


「ああ。それよりも今は中に入らないとな」

「中だね。こっそり入っても意味はないしここは倒すしかないよね?」

「それしかないな。んじゃ行くぞ。シルフィ」

「うん!」


 ライトと風の精霊シルフィは三人の真正面に出られるように移動してから出た。真正面だとすぐに見つかるが裏を掻きたい考えがなかった。


「うん? お、おう? だ、誰だ!? き、貴様らは!?」


 真ん中の男が間合いを詰めて立ち止まる前に話し掛けてきた。三人は警戒している。故にすでに臨戦態勢だった。


「悪いことは言わない。ここから出ていけ」


 ライトは冷静な態度を見せた。どんどん間合いを詰めていく。聞こえているかよりも威圧感での畏怖を与えたかった。


「おおう? なんだか不気味な野郎だな。おい! やってしまえ!」


 真ん中を筆頭に残りの二人も片刃曲剣を腰から引き抜いた。このときにライトは魔法を扱えない集団かと疑問に思った。ならば間合いを詰められる前に倒す。

 瞬間移動をしようと急に走り出すライト。そしてその場から消えた。


「な!? ぐほ」

「とりあえず一人……と」


 ライトの瞬間移動が炸裂し真ん中の敵の顔面から煙が出ている。真ん中の敵はおののく暇がなかったようだ。だが周りの敵がおののき始めた。


「ひぃ!? なんだよ? こ、こいつ!?」

「聞いてねぇ! 銀髪赤眼がこんなに強い筈がねぇ!」


 ライトはなにを言っているんだと思った。確かにこの世界では銀髪に赤眼は雑魚の象徴だ。だがライトの本来の姿は茶髪に茶眼で茶目っ気があった。


「ライト! 今の君は魔喰鬼だ! その! 見た目が変わってるんだよ! 見た目が!」


 風の精霊シルフィの声が後ろから聞こえてきた。耳に入れたライトは馬鹿な!? と疑いの気持ちを持ち始めた。だが風の精霊シルフィが嘘を付く筈がなかった。


「そうなのか」


 突然の答え合わせにライトは戸惑った。それはもう闘うことを忘れるほどに。


「俺達を……舐めるなぁ!」


 ライトから見て左の敵が片刃曲剣を振りかざし突っ込んできた。両手に持たれた柄からは力強さが伝わり斬られたら死に直結した。直後に振り下ろされる片刃曲剣。


「させないよ!」

「ぬお!?」


 風の精霊シルフィが言うと風魔法を発動させライトに当たる前に片刃曲剣を浮かせた。再び上がる片刃曲剣を見たライトはその隙を逃さなかった。すかさず消えるライト。


「ば!? ぐふぉ!?」


 こうなったらもう敵の戦意は喪失状態だろう。その証拠に最後の敵が腰を地面に付かせたあとに慌てて振り返り逃げていった。どうやら勝負はあったようだ。


「やったね! ライト! う!? この感じは!? あ! 危ない! ライト!」


 風の精霊シルフィが喜んでいるのも束の間だった。ライトが喜びの代わりに安堵しようとしたその時だ。風の遺跡から電光石火の速さで突っ込み剣を振るう者が現れた。


「ほう。黒雷一閃を避けるとはな。……うむ? ふはは! 銀髪赤眼とはな! 貴様の運もここまでか!」


 謎の男が両刃直剣を鞘にしまい振り向くとそこにはライトの姿があった。やはりライトはもう銀髪赤眼だった。どうやら舐められているのはライトの方だった。


「ライト! よかった! あ、あいつが……黒雷の騎士――」

「ふはは! 黒雷の騎士ヴァニアスだ! 四天王直下部隊では隊長をしている!」

「こ、こいつが!?」

「うん! ライト! こいつが風の水晶石を破壊した張本人だよ!」

「風の精霊よ。なんの裏切りだ? ここで死に晒すことになるぞ」

「う、うるさい! もう僕はお前の仲間でもない! ライトがいるんだ! 勝たせて見せる!」

「舐められた者だ。まさか泥舟とはな。良いだろう。相手になってやろう。後悔は……先には立たんからな」


 こうしてライト達は黒雷の騎士ヴァニアスと闘うことになる。ライトは森を救う為にも勝たねばならなかった。果たしてこの勝負はどうなるのか。

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