【第四節】 雷鳴が轟く頃に、
・この物語は自分の理想とする〝侍〟の姿を拙いながらも描いています。
目を通していただく読者の皆様とは主人公のイメージを共有できればと思っています。それでは本編をお楽しみ下さい。
「さて、一体これからどうしたものか……」
探してみるとは言ったものの、実際どうすれば帰還できるのか。そもそも何がどうなってこの世界に呼び寄せられたのか、まったく見当がつかない。
ぐぬぬ,と頭を悩ませる左一を見かねたステラから小休止の提案があった。
これからの相談もあるし、休憩がてら一息入れておこうという彼女なりの気遣いなのだろう。
少し待っていてください、と部屋を後にする小さな背中を見送る。
自分が置かれている状況については、ステラの説明のお陰である程度は把握できた。問題は元の世界への帰還方法だが、この世界のことを何も知らない左一では八方塞がり。
ついでにあの日から三日経過していたと告げられた時は驚いたものだったが、過ぎてしまった時間を取り戻すことはできないと切り捨てる。
それに帰還云々よりも、主の身の安全がやはり気になってしまう。
(あの時、信長様は死を覚悟しておられた。蘭丸も追従するようなことを口にしておったが、あやつのことだ。言葉巧みに誘導し共に生き延びておるはず。某にできるのは一刻も早く帰還する方法を見つけ出すことか)
これまでに得た情報を精査しつつ今後の方針を練っていると、銀製のお盆を両手で抱えたステラが戻ってきた。その上には見覚えのある南蛮の茶器が並んでいる。
「お待たせしました。〝カモナーデ〟という植物の茶葉から抽出したハーブティーです。どうぞ、お口に合えばいいのですが」
修道女の声色に張り詰めた糸が弛緩したような気持ちになる。
確かにこの状況で慌てても仕方がない。
とりあえず皿の上に乗ったティーカップを差し出してきたのでご相伴に預かる。
左一は取っ手の存在を完全に無視して盃のようにカップの縁と底を掴み上げると、橙色の水面から立ち上ぼる湯気に鼻先を近づけた。
「……何とも言えぬ香りだな。薬膳の類か?」
「その言い方、絶対信じてないですね。騙されたと思って飲んでみてくださいっ」
二人でまったりしていると、ゴンゴンゴンッとけたたましいノック音が響いた。
「はーい、どちら様ですか?」
無警戒に扉を開いた瞬間、何かがステラに飛び掛かった。
「ひゃっ⁉」
「何奴だ‼」
一拍遅れて左一も剣を手に取り、いつでも抜刀できるよう身構える。一瞬、自分を捕らえにやってきた刺客ではないかと肝を冷やしたが、
「待ってください、彼女は敵ではありませんっ!」
「なに?」
訝しむようにステラに取りついた何かに視線を向けると、そこには露出過多な軽装の少女、と呼ぶには些か背の高い女の姿があった。
膨らんだ胸部を覆った深みのある赤の革鎧に、太腿の付け根までしかない同色のショートパンツは動きやすさを重視しているのか。
その身形と銀細工の耳飾りから踊り子のようにも見えなくはないが、部屋に飛び込んできた時のスピードと腰の得物を見るに武人であることは明らかだった。
「ちょっとシーちゃん、いい加減離れて。お客様の前だからっ」
「そんなことより怪我はないっ⁉ 本当に心配したんだから。任務から戻ってきてアンタが襲われたって聞いたときはもう心臓止まるかと思ったわよっ」
「それはもう分かったから離して、そろそろ苦しく、なってきた、かも……」
全力の抱擁に気道を圧迫され、本格的に顔色が悪くなってきたところでようやく開放されたステラは自前のハーブティーを一口含んで咳払いすると、
「紹介しますね、彼女はシステナ=バーネット。わたしの友人です」
「左様か、某は篠塚左一と申す。以後よろしく頼む」
紹介を受けた左一は友好的な表情で右手を差し出す。
これはかつて信長と宣教師が交わしていた〝握手〟と呼ばれる南蛮流の挨拶だ。
ここでの流儀が南蛮と同じかどうかは定かではないが、少なくとも地べたに座り込んで両手を着く必要はないはずだ……たぶん。
「……」
女は黙って左一の顔と右手を順繰りに見やると、応じるように手を差し出してきた。安堵しつつ握り返そうとしたその時、パシンッと炙るような痛みが走った。
「っ⁉」
「ちょっとシーちゃん、サイチ様がせっかく」
手順を間違えたかと思ったが、ステラの反応からそういう訳でもないらしい。
ならどうして、と疑問に思うよりも早く怒号が飛んできた。
「アンタかっ、アタシの可愛いステラにちょっかい出そうっていう異邦人はっ‼」
左一を映す瞳には隠すつもりなど微塵もない、燃えるような敵意が宿っていた。まるで親の仇でも見るような目付きでこちらを睨みつけてくる。
「誤解だよっ。誰に聞いたか知らないけど、サイチ様はそんな人じゃないよ!」
「いいや違わないね。この男もアンタを利用しようとしてるに決まってるんだっ」
システナは断定するように左一の顔を指差した。
「お主の勘違いだ。某はステラ殿をどうこうしようなどとは考えておらぬ」
「ふんっ、どうだか。ステラは優しい子だから誰の言葉でもすぐに信じるの。だからアタシがアンタみたいな悪党から守ってあげなきゃいけないのよ‼」
腕を組んだシステナの視線には依然、強い疑念がこもっていた。
左一を信用する気はこれっぽっちもないらしい。
「……」
今度は左一が無言のままにシステナを見据える。
彼女の言動は言い掛かり以外の何でもない。憤懣を覚えないと言えば嘘になる。
だが、そこに敵意の色はあっても悪意は感じられなかった。
過去に何があったのかは知らないが、彼女がステラを大切に思っていることは紛れもない真実なのだろう。
一方、この局面をどう乗り切ったものかと考えを巡らせていた。
当然のことながら人は一人で生きていくことはできない。
見知らぬ土地であれば尚更、人との信頼関係が重要になる。信長の許に戻る方法を探す以上、敵は少ないに越したことはないのだから。
「どうすれば某を信用してくれるのだ?」
そう問い掛けてから答えが出るまで一秒と掛からなかった。
「そういえばアンタ、センチピーダーを討伐したそうね?」
「胸を張れるほど大層なことではないが、それがどうした?」
「つまり、アンタも剣士ってわけよね? それにしてはおかしな武装だけど」
「すまぬが、回りくどいのは好まぬ性分だ。とはいえ某も聡いわけではない。申したいことがあるなら、はっきりと申せばよかろう」
「それじゃあ簡潔に。これからアタシと手合わせしなさいよ」
「なに?」
「ノリが悪いわね。アンタも剣士の端くれだって言うなら実力で勝ち取れって言ってんのよ。もしアタシから一本取れたらアンタを信用してあげる」
でも、と踊り子は不敵な笑みと共に言葉を区切ると、
「アタシが勝ったらこの国から出ていくこと、そして二度とここには戻ってこないこと。オーケー?」
軽調に反し、今にも飛び掛かってきそうな殺意が瞳に宿っていた。
数々の死線を潜り抜けてきた者だけが持つ異様な気配。戦の絶えない戦国の世を生きてきた左一とは、また少し異なる雰囲気を醸している。
(こやつ、どうやら口先だけではないようだ)
警戒レベルがぐんと跳ね上がる。ただの痴女と侮り油断すれば、地面を舐めているのはこちらの方かもしれない。
「待ってシーちゃん、そんなのむちゃくちゃだよっ。それにサイチ様は病み上がりで体調だって万全じゃないのに……」
「相分かった。お主との一騎打ち、受けて立とう」
「サイチ様っ⁉」
「すまぬ、ステラ殿。果たし合いを申し込まれた以上、某も退くわけにはいかぬ。たとえステラ殿の友人であろうと、勝負を挑まれたからには受けて立たねばならんのだ」
タチの悪いことに、挑まれた勝負を断る選択肢を侍は持ち合わせていない。
敵前逃亡は最大の生き恥とされ、勝負を放棄して逃げ出した者は切腹、または罪人として捕らえられ、打ち首の刑に処されることもあるのだ。
挑む者と受ける者。双方には生と死、そのどちらかしか与えられない。
「いい覚悟ね。それじゃ早速と言いたいところけど、場所を変えてあげてもいいわよ。ここだとアタシが有利すぎるからさ」
上から目線過ぎる心遣いは己の実力に対する絶対的な自信から生まれたものだろう。優位を失ってなお、勝つのは自分だと言わんばかりの口振りだ。
「忠告痛み入る。されどくノ一の言葉に耳を傾けるほど、某も人間ができておらんのでな。参られるがよい」
「クノイチ? なに言ってるのか分からないけど、後悔するんじゃないわよ!」
「侍に二言はない」
そう口にした左一は帯に差した光忠に手を添えた。
「二人ともっ、喧嘩はやめてください! 少し冷静になって」
「心配することないわよ。こんな異邦人、さっさと追い出してあげるから」
聞いているようでまるで話を聞いていない姉貴分は、危ないから部屋の隅に移動するようステラを促すと、
「先に言っておくけど、アンタの剣は絶対に届かないわよ」
「どういう意味だ?」
それはね、とシステナはベルトと一体化した腰のホルスターから刃渡り三〇センチほどの短剣を両手に握り、こちらに突きつけるように翳した。
「雷の女神よ、迅雷の衣となりて我が身に宿れっ」
歌うように言葉を紡いだ直後、システナの胸部にそれまでなかったはずの紋様が装備越しに浮かび上がり、全身を青白い光が包み込んでいく。
(あれがステラ殿が話しておった刻印なるものか)
初めて目にする刻印は、左一が見知った家紋とは大きく形式が異なっていた。
動植物を簡略化したものでも、単純な図形を並べた連続模様でもない。形に法則性は見つけられず左右対称という訳でもなかった。
強いて言葉で言い表すとすれば、五十音から無作為に選び出し、紙の上に書き重ねていった末に出来上がる何の意味も持たない落書き(シンボル)にも見える。
「……これが魔術か」
「その反応。まさかとは思うけどアンタ、魔術を見たことないの?」
思わぬところ落とし穴があった。
ステラの話通りなら、この世界では〝魔術〟というものが貴族や騎士以外の民にも広く認知されている。
例えるなら、通貨のように一つの常識として確立しているということ。
だが、別の世界からやってきた左一はその限りではない。
故に、初めて目の当たりにする人が使う魔術に不覚にも声が漏れてしまったとしても仕方のないことだった。
(気づかれたか?)
「まぁ、どこの辺境から来たかも分からない馬の骨じゃアタシクラスの術式を見る機会もそうないことだろうしね」
嘲るような笑みを浮かべる女剣士。
的外れな解釈にほっと胸をなでおろしたのも束の間、
「でも、その程度じゃあアタシには勝てないわよっ」
バチリッと空気を弾く音が鼓膜を突いた瞬間、システナの姿を見失った。
いや、視界から消えたと言った方が正しいだろう。
(どう仕掛けてくる?)
左一は姿勢を維持しつつ全神経を張り巡らせて状況把握に努める。
ここで取り乱せば敵の思うツボだ。
どこから現れるかも分からない不意の一撃に備えて迎撃体勢へ移行した直後、ぞわりと冷たい殺気を感じ取った。
途端、死の気配が猛烈に濃くなったかと思えば、間合いの内側に白刃が滑り込み、右の眼球に向かって突き出されていた。
「くっ⁉」
抜刀は許されなかった。
それでも反射的に腰帯から納刀状態の刀剣を引き抜き、肉薄する短剣を鞘越しの刃で受け止めてみせる。
「へぇ、やるじゃない。アタシの速度に反応するなんて」
刃を交えた一瞬、感心するような声が零れる。
しかし、それはどこまでも相手を格下として扱う言い草だ。
完全に舐められている。
「はあぁぁぁ!」
反撃に転じる左一だが、システナは空気に溶けるように再び姿を消し、ひらりと間合いの外へと逃れる。
「この術式は雷系統の【敏捷】増幅魔術。並みの剣士じゃ反応することもできない速度よ。何が言いたいのかって? じゃあ特別に教えてあげる。――速さこそが強さなのよっ‼」
「すなわちお主よりも鈍い某では勝つことはできぬと、そう申したいのだな」
「よく分かってるじゃない。なら痛い目を見る前にこの国から出ていくことね!」
赤みを帯びた髪を掻き上げながら余裕の表情を見せつけてくる。
対して、左一は強敵を目の前に何故かほくそ笑んでいた。
「何を笑っているの? 負けるのが分かって頭がおかしくなった?」
「いやなに、くノ一にしてはよく口が回るものだと呆れておったのだ。それでは本懐を遂げることもできまい。息を殺し、影の中を忍んでこそ神髄だというのに」
今度は左一が嘲るように言葉を紡ぐ。
そこには憐れむような感情が含まれていた。
「さっきから意味の分からないことばかり言って。アタシを馬鹿にしてるの? あとクノイチって呼ぶのやめてくれない? 無性に腹立つからさっ」
すると、またしてもシステナの姿が視界から消え失せた。
正確には魔術によって強化した脚力を存分に発揮し、追い掛けることすら困難な次元で部屋中を飛び回っている。それもさっきよりもずっと速い。
「動くこと雷霆の如く、とはまさにこのことか」
孫子の一節を口にしながら左一は周囲の気配を探る。
《あはっ。どう? さっきみたいなラッキーはもう続かないわよ》
逐次移り変わる座標から発せられる声が攪拌され、木霊のように響いてくる。これではシステナの位置が特定できない。
「すぅ」
左一は逸る心を落ち着かせるように細く息を吸い込む。
瞳の奥には波紋一つ見出せない静謐な水面が浮かんでいた。
全神経を一点に集約し、同調するように聴覚と触覚が鋭敏になる。果ては第六感とも呼ぶべき解析不能な感覚が研ぎ澄まされていく。
納刀状態の光忠を腰に戻して両手を添えると、わずかに重心を前へと傾けた。
魔術という未知の現象を前に、ここに来て間もない左一は驚かされるばかりだ。
修練を重ねた剣の腕がものを言う戦国の世とは大きく掛け離れた異世界。センチピーダーとの戦闘ではステラの助言がなければ確実に命を落としていたはずだ。
何が起こるか分からないということは対処が遅れるということを意味している。
すなわち、無知であることがそのまま敗北へと繋がってしまうのだ。
そんな連中を相手に端から勝ち目などなかった。魔術の簡単な仕組みを数分前に知ったばかりの素人では決して対応できない領域。
だが、それは何も知らなければ、の話である。
《充分絶望してくれたところでそろそろ終わりにしようかしら。なぁに、怖がらなくても大丈夫。これでもステラの恩人ですもの。死なない程度に意識を飛ばすだけにしてあげる》
淑女のような言葉遣いとは裏腹に、紅い残像はさらに速度を増した。
「ご託はいらぬ。参られよ」
《むっ、言われなくてもっ‼》
システナの狙いは後頭部の死角。
辛うじて初撃を受け止めた左一だが、高速世界の住人である彼女の本気の前では人間の反応速度などあってないようなものだ。
それこそ一手先の未来を見通す力でもなければ回避さえ困難。
神速の拳が左一の右側頭部に迫る。
握っていた短剣はすでに腰のホルスターの中にあった。
宣言通り殺すつもりはないようだが、その強烈な一撃を真面に食らえばまた数日間はベッドの上に逆戻りになるだろう。
(もらったっ!)
フライング気味に勝利を確信したその時、突き出した腕を〝掴まれた〟という感覚が電気信号となって神経を介し、システナの脳へと伝わった。
「……えっ?」
しかし、理解したところで状況をひっくり返すことは叶わない。
腰の得物から手を放した左一は動きを読み切ったかのように両手で彼女の腕を掴み取り、相手の勢いを利用した合気の体術でもって客間の床に叩き伏せた。
「無刀―唐投げ」
埃っぽい床に背中を着かされ、驚きに目を白黒させるシステナ。
日に焼けた首筋には一連の動作の中で掠め取られた短剣の刃が添えられ、身動きどころか反撃の隙も見つからない。
「お主の動きは見切らせてもらった。某の勝ちだ」
「……うそ、でしょ。どうやってアタシの動きを? まさか未来視の魔術をっ」
「買い被りだ、某はそのような力など持っておらぬ。強いて申すならお主の敗因は己の力を過信し、力の正体を口走ったことにある」
仮にシステナが魔術に関して何も口にしていなかったなら、左一はあらゆる可能性を考慮する必要があった。それが未知の力を有する魔術なら尚のことだ。
一つでも選択を誤れば敗北は必至。当然、思考領域も割かなければならない。
だが、彼女は左一を格下と見なし力の正体を明かした。
この時点で選択肢は絞られる。
特殊な現象の伴わない単なる高速移動であれば、いかに速かろうとも周囲を漂う空気の流れから軌道を読むことは可能だ。
とは言いつつも、並みの人間では真似できない芸当ではあるのだが。
「信じられない、アタシの〝雷神の羽衣〟は音よりも速いっていうのに。理屈が分かったところで対処できるわけがないっ。それを、アンタなんかに破られるなんて……」
重要なのはこの選択と共に心中する覚悟があるか否か。少しでも迷えば意識は散漫し、転がされていたのはこちらの方だったかもしれない。
左一は首から短剣を遠ざけると、消沈するシステナに手を差し伸べた。
「……自分を追い出そうとした相手に手なんて貸して、情けでも掛けたつもり?」
「否、そのようなつもりは毛頭ない」
「だったらどうして」
「一つ、某の故郷に伝わる有り難い教えをくれてやろう。昨日の敵は今日の友、だ。深くいがみ合っていた者同士であろうと、目的が変われば手を取り合えるという教えだ」
システナは左一の手を無視して立ち上がり、代わりに短剣を引ったくって、
「ふんっ、なによそれ。目先の利益で仲良くする相手を選んでるだけじゃない!」
「でも、わたしはその言葉好きかも。喧嘩してもすぐに仲直りできる、みたいな感じで。少し憧れちゃうなぁ」
すると、部屋の隅っこにいたステラが頬を薄っすら染めながら呟いていた。
左一がすっと彼女に目を向けると気恥ずかしげに視線を逸らして、
「そ、それにしてもすごかったですねっ。何が起こっていたのかはさっぱりでしたけど、シーちゃんがぶわぁって投げ飛ばされるシーンはしっかりと両目に焼き付いてます!」
「……ステラ、それ以上は何も言わないで。本気で立ち直れなくなりそうだから」
すっかり毒気を抜かれたシステナは差し出されたままの右手を、それはもう厄介なものを見るように一瞥して掴み取るか、と思いきや左一の顔にズビシッと指を差して、
「や、約束だからアンタのことは信用してあげる。でも認めたわけじゃないから。それからステラを泣かせたら許さない。これはこの子を譲るとかそういう意味じゃないわよ。ステラは絶対に渡さないから、覚えておくことねっ‼」
「何を申しておるのかは分からぬが、これからよろしく頼む。くノ一殿」
「だからクノイチはやめなさいってば⁉ はぁ、話してるだけで調子狂いそう……」
「ふふっ、それがサイチ様のいいところですよ」
バツが悪そうに髪を掻き上げるシステナとその様子を楽しそうに眺めるステラ。
「やはりよいものだな。友というものは」
二人の姿が旧友と過ごした過去と重なり、何やら心に郷愁が吹き抜けたような気がした。
・第四節を読了いただき、ありがとうございます。
しばらく二人だけの会話シーンが続きましたが、
今回、満を持してシステナ姉さんが登場しましたね!
個人的には勢いがあって気に入っている人物なので、
彼女の役回りも要チェックでお願いしますっ。
それでは次回もお楽しみに。