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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第96話 魔法の相性

 魔法訓練場に着いても、クロアは気の抜けた顔をしていた。


「クロア!そろそろ魔導士様たちが来るぞ!しっかりしろよ!」

「え?・・・ああ」


 トキオのその言葉に、クロアはやっと反応した。


「『期待してるぞ』なんて言われちゃった!・・・ねえ、トキオ、アウレラも同じこと言われてた?」

「いや、アウレラはお前と違って普通の冒険者だからな。そんなことは言われてなかったと思うぞ」

「よし!1歩リード!」

「はあ?」

「あと、『可愛らしい』って言われちゃったけど、アウレラもそんなこと言われてた?」

「いや、言われてなかったと思うな」

「よし!2歩リード!」

「はあああ?」


「トキオ、困ったわ」

「何がだよ」

「勇者様があそこまでカッコいいとは思ってなかった。私、勇者様に惚れちゃったかも」

「ええーーーー!?」

 そのクロアの言葉が本気のようだったので、トキオはすごく驚いた。


「お前、この間は『男に構ってるヒマなんかない』って言ってたじゃないか」

「そうなんだけどね、それは、今まで好きになれるような男に出会わなかったからだったみたい」

「なんだよそれ?好きになるのは勝手だけど、今は魔法の訓練に集中しなきゃいけない大事な時期なんじゃないのか?」

「分かってるんだけどさあ・・・勇者様がステキ過ぎて・・・」

「それに、相手は勇者様なんだから、お前なんか相手にしてくれるわけないだろ」

「ええー?そうかなあ?」

「そうだよ!」


(ヤバいな。これは重症だ。このままじゃ、魔法訓練に影響が出るぞ。しょうがない・・・)


「クロア!こっちを向け!」

「なに?」

 クロアは顔をトキオの方に向けたが、心ここにあらずといった表情のままだった。


 パアン!


 そのクロアの頬に、トキオが平手打ちを食らわせた。


「痛ったーい!・・・・・何すんのよ!」

「お前がシャッキリしないからだ!そんな状態で魔法訓練してたらケガするぞ!」

「でも、ぶつことないでしょ!」

「俺だってやりたくなかったけど、魔導士長様が今のお前の様子を見たら相当ガッカリすると思ったからやったんだ!」

「なによ!・・・あー痛かった」

 クロアはそう言いながらぶたれた左頬をさすっていた。

 それでも、クロアの表情が引き締まったので効果はあったようだった。



 そこで、魔導士長とモルナール魔導士が入って来た。


「二人とも用意はいいか。始めるぞ」

「はい!」

「はい!」


 トキオとクロアは元気のいい返事をすると、魔導士たちのところへ歩いて行った。




 トキオは、自分の訓練の合間に時々クロアの様子を見ていたが、特にぼーっとすることもなく、普段通りに訓練ができているようだった。





「よし!今日の訓練はここまでとする。明日は休日だから、ゆっくり体を休めておくのだぞ」

「はい!」

「はい!」


 結局、クロアは、トキオの平手打ちが効いたのか、今日の訓練を無事に終え、問題を起こすことはなかった。




「なんとか正気に戻ったから良かったけど、勇者に惚れちゃったからって、ぼーっとしてちゃダメだぞ」

 帰りの馬車の中でトキオが言った。


「その辺の切り分けはできるわよ。私を見くびらないで」

「そうかなあ・・・ところで、明日の休みだけど、お前はどうするんだ?」

「別に何も予定がないから、お屋敷の探検でもしようかと思ってたわ」

「ああー、広すぎてどこに何があるかわからないからな。そう言えば、俺も全部の部屋は見てないなあ」

「なにそれ?自分の家なのに」

「そうだけどさあ、寝室と風呂と食事の間とトイレ以外には用事がないからなあ。ああ、書斎も使ってないや」

「書斎!?そんなものがあったの!?」

「ああ、これがアティムのアパートの5倍はあってね。中に応接セットまであるんだよ・・・・そういえば、本棚があったな。何か面白い本でもあったりするのかな」

「本か。それはちょっと興味あるわね。あとで案内してよ」

「いいよ~。そこにある本は何でも持ってっていいから。といっても、どんな本があるかまったく知らないけどね」

「なにそれ。まあ、いいわ。逆に驚くような発見があるかもね」

「えー?・・・まあ、元が貴族の屋敷だから可能性はゼロじゃないか」

「そうよ」


「それよりさあ、明日ヒマなら、俺を王都の面白いところに連れてってくれないか?」

「面白いって、どんな風によ」

「別に有名な観光スポットでもいいんだよ。どこに何があるか全然知らないから、まだ、1回も街中を歩いたことがなくてね」

「えー?そうだったの!」

「前に王都に住んでたお前なら、ある程度知ってるだろ?」

「まあ、有名なところならね。それで良ければ案内するわ」

「ああ、それでいいよ。よろしく~」

「・・・あ、そうだ!動物園に行きましょうよ!」

「動物園!?そんなものがあるんだ」

「あるわよ。今は、魔物に食べられて街の外にはほとんど動物がいくなったから貴重よ」

「そういえば、俺も鳥以外の野生の動物を見たことがないなあ」

「そうなの!?じゃあ、気に入ると思うわ」

「そうか!なんかすごくワクワクしてきたぞ。じゃあ、よろしくね」

「わかったわ」

「あ、案内してくれるお礼にお金は全部俺が出すよ」

「え?いいの?」

「アティムにいたときに討伐で貯めたお金から金貨を1枚持って来たんだけど、衣食住全部タダだから使わうとこがなくてね。この先もきっと使わないから、気にしなくて大丈夫だよ」

「そう言えばそうね。ああ、私もこれからそうなるのか。でも、収入が無くなっちゃったから助かるのは助かるわね」

「ああ、そうか。クロアはそうだよな」

「え?トキオは違うの?」

「俺は、柔道の講師と造兵局で銃製造の助言をしてるから、その分の賃金がもらえるんだよ」

「ああー、そうかー」

「あんなお屋敷に住まわせてもらっちゃってるから気が引けるんだけどね」

「そこは気にしなくていいんじゃないの?お屋敷はあくまで王様からの報奨なんだから」

「まあ、そうなんだけどね」



「で、魔法の訓練の方はどうなんだ?」

「うん、光魔法は初めてだけど、他の魔法と同じように応用していけばいいみたいだから、そんなに困るようなことはないわね」

「そうか。まあ、元々魔法の訓練をしてきてたからな。俺よりはすんなりいくんだろうな」

「当然じゃない」


「あ!・・・そう言えば、王都に来てから1度もステータス画面を見てない気がする」

「えー!?・・・なにそれ。気にならないわけ?」

「うん。あくまで数字だけの話だからなあ。数字を知ってて俺の体力や魔法の威力が変わるわけじゃないし」

「でも、レベルがまた上がって、新しい呪文を覚えてるかもしれないでしょ?」

「あ、そうか!・・・ステータス!」


 トキオは、ステータス画面を表示させると、魔法のところを見た。


「火、水、風の魔法は変わってないなあ。相変わらず7と5だ。光魔法は・・・あ!レベル20になってる!」

「ホント?・・・気にしてないのに上がってるって、なんか腹立つわね」

「でも、なんで光魔法だけ上がってるのかな?練習してたせいか?」

「それもあるんでしょうけど、相性がいいからじゃない?」

「相性?」

「魔法には人それぞれに相性のいいものと悪いものがあるのよ」

「え?そうなの?」

「そうよ。トキオの光魔法のレベルの上りが早いのは、トキオが光魔法と相性がいいからよ」

「あー、魔導士長もそう言ってたな。俺には光魔法に対する抜群の適性があるって」

「そう。それよ」

「確かに、いくら一番使う頻度が高かったからと言って、ちょっとレベルの上がり方が普通じゃないとは思ってたんだよな。特殊魔法だからこんなもんなのかな?って思ってたよ」

「光魔法だってレベルの上がり方は他の魔法と同じよ。それで、逆に導師様は、光魔法ととっても相性が悪かったのよ。だから、あのお歳になってもレベルが11にしか上がらなかったのよ」

「へー、そうなんだ。でも、逆に良くそこまでレベルを上げられたねえ」

「そこが師匠のスゴいとこなんじゃない。強力な防御魔法が欲しくて、どうしてもちゃんと使えるレベルにしたかったみたいよ」

「光系の防御魔法って強力なんだ」

「そうね。防御魔法としては、他に空気系の結界魔法があるけど、光魔法の方がはるかに強力だわ」

「結界魔法?どっかで聞いたような・・・・・ああ、最初のヒドラ討伐の時に街の上級魔法使いが使ってたやつだ」

「そうなの?」

「うん。俺が前にクロアにやってみせたように、水平に階段状に展開して、その上を冒険者に駆けあがらせてたんだよ」

「ああー、あんたのあの魔法はそれを真似したのね」

「へへ、実はそうなんだよね」

「いつの間にか光魔法を習得してた人にあんな発想が沸くなんておかしいと思ってたのよ」

「・・・・てへっ」

 トキオは、小首をかしげておどけた仕草をした。


「何よそれ!全然かわいくないわよ!むしろ不気味よ!」

「えー?そこまで言わなくてもいいんじゃないの?」


「それより、レベルが20になったんなら、新しい魔法を覚えてたりするんじゃないの?」

「あ、そうか!・・・どれどれ」


 トキオはそう言いながら、


【特殊魔法属性】

 光 Lv20


 と書かれている部分をタッチした。

 すると、下のように表示された。


 ・閃光弾:フライシャ

 フライショット

 フライデスト

 ・防壁 :バリッド

 バリッダー

 ・反射 :リフレック

 リフレッカー



「ホントだ!閃光弾が一つ増えてる!・・・でも、防御魔法と反射魔法は同じだな」

「やっぱり!・・・増えたのが一つだけってことは、それぞれ、増えるレベルに違いがあるのね」

「ああ、そういうことなのか。途中の経過を見てないからよくわかんないや」

「まったく、お気楽だわねえ」

 そう言って、クロアはガッカリした顔をした。



 そんな会話をしているうちに、馬車は屋敷に着いた。



「お帰りなさいませご主人様」

 いつものように、セバスチャン、メアリー、ジェーンが玄関先で出迎えてくれた。


「あ!そうか!」

 クロアを先に降ろしたが、馬車を降りた直後、クロアはそう言って立ち止まった。

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