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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第94話 クロアの記憶

 「来られたみたいよ」

  母親の声とほぼ同時に玄関のドアがノックされた。

  クロアの横には隣に住むロタールとその母親が座っていた。


  クロアの母親が応対してノックした人間を招き入れた。


  すると、かなりの老人と初老の男二人が入って来た。


 「この二人が高い魔法適性を示した者たちです。特に、女の子の方が素晴らしい数値でした」

  初老の男が老人に向かって言った。


 「そうかそうか」

  老人はそう言うと二人の前に来た。


 「・・・これは!」

  老人はクロアの顔を見ると非常に驚いた様子を示した。


 「どうされました?」

  初老の男が老人の隣に来て聞いた。


 「・・・いや・・・この子には素晴らしい魔法適性があるようじゃ」

 「わかりますか」

 「ああ、見ているだけで強く感じる。この子は私が引き取って直接鍛えることにしよう」

 「え?・・・いえ、導師様のお手を煩わせるのは申し訳ないですから」

 「大丈夫じゃ。この子はワシの手でちゃんと鍛えてみたいのじゃ」

 「・・・そうですか。了解しました。では、私はこの男の子の方を引き取ります・・・そういうことでよろしいか?」

  初老の男は母親たちの方を見て聞いた。


 「はい!まさか導師様に直々に鍛えていただけるとは、光栄です!」

  クロアの母親が言った。


 「ねえ、私はロタールと別のところに行くの?」

  クロアが母親に聞いた。

 「そうよ。この方は、以前に魔導士長をされていた方で、この国で最高の魔法使いですからね。これでクロアも一流の魔法使いになれるわよ」

 「ロタールと別れるのはイヤよ!それなら、私、行かない!」

 「な・・この子はなんてこと言うの!失礼でしょ!」

 「イヤなものはイヤ!」

 「ふざけないで!」


 「まあ、お母さん落ち着きなさい。それなら、ロタールも私が一緒に鍛えよう」

 「え?・・・よろしいんですか?」

 「ああ、構わんよ。見たところ、クロアはかなり気が強そうじゃから譲るまい。そういうところも魔法使いに向いておるからますます鍛えたくなった」

 「すみません。よろしくお願いします!」

 「よろしくお願いします!」

  ロタールの母親も一緒に頭を下げた。


 「それじゃ、クロア、ロタール行こうか」

  老人はそう言って二人に手を差し出した。

  老人にそう言われたクロアは、なぜかすごく安心した気分になって素直にその手を取った。

  ロタールも老人の手を取り、二人は立ち上がって老人に連れられるまま玄関に向かった。

  歩きながら老人はずっとクロアの顔を見ていたが、その顔は、なぜかとても嬉しそうだった。

  クロアはさらに安心して、ニッコリとほほ笑みを返した。


 


  導師の元へ行って魔法訓練が始まると導師はクロアに言った。


 「これは驚いた。お前には本当に才能があるようじゃ。ワシの言うことをしっかり聞いて訓練に励めば、必ずやひとかどの魔法使いになれるじゃろう。しっかり精進するのじゃぞ」

 「はい!」


  (本当に、って、そう感じたから連れて来たんじゃなかったのかな。ヘンなの)

 クロアはそう思った。


  (でも、この国で一番の魔法使いって言うから厳しい人かと思ったら、すごく優しいお爺さんで良かったわ)

  クロアはそうも思ったので、このことは気にしないことにした。


 


  クロアがギヌメール導師の元に来てから5年が経った。


  「ジュディット」

   導師は、最近、クロアのことをそう呼ぶことがあった。

  (なぜかしらね?私に愛称を付けたいのかしら?ステキな名前だから、まあいいけど)

  クロアはそんな風に思っていた。


 

  そんなある日・・・


 「ジュディット、さあおいで。いつものようにここにお座り」

  導師は、自分が座っている椅子の股の間に座るように手で示した。

  クロアは不思議に思ったが、言われるまま導師に背を向けてそこに座った。

 「お前はいつも美しいなあ。さあいつものようにかわいがってあげよう」

  すると、導師の手が胸と股間に伸びて来た。

 「・・え?導師様、何をするんですか!やめてください!」

 「大丈夫、大丈夫。いつもと同じだから」

 「いやっ!」

  クロアはその手を振りほどくと走り去った。






「そうか、そうだったんだ」

 クロアはそう言うと、トキオのベッドの上でボロボロと大粒の涙を流し始めた。


 トキオは驚いたが、クロアが自分から話をするまでそのまま待つことにした。




「ロタールは言ってたわ」

 しばらくすると、クロアは静かに話し始めた。


「導師様は、数か月前からロタールことが誰かもわからなくなることがあるって。これって・・・」

「痴呆症の症状だな」


「そうよ。そうだったのよ。導師様は私を奥様と勘違いしていただけだったのよ・・・それなのに私・・・」

 クロアはそれだけ言うと、トキオに抱きついて泣きじゃくり始めた。


 トキオはテリットから、王都に着いてすぐに教団本部の前でロタールというクロアの知り合いと出会った時の話を聞いていたので、ロタールが一緒に導師のもとで修業していた人間だろうというのはわかった。


 そして、クロアには導師に関係する何か深く悲しい事情があったのだと思われたので、何も言わず背中をポンポンと軽く叩きながらそのままにさせていた。





 トキオが目を覚ますと、すっかり明るくなっていた。


「う・・・ん。今、何時?」

 クロアも起きてきた。


 トキオは壁の時計を見た。

「わ!もう8時だ!早く支度しなくっちゃ!」

「あら、もう8時なの・・・て、それじゃ朝日を見逃しちゃったじゃない!」

「ああ、そうだな。でも、朝日はいつでも見られるだろ?」

「まあそうだけど。残念ねえ」

「さあ、お前も部屋に戻って着替えろよ。朝飯食ってお城に行かないと」

「わかったわ」


 クロアはそう言って入り口に向かったが、トキオはその後ろから声をかけた。


「もう大丈夫か?」


 クロアはにっこりとほほ笑みながら振り返った。

「大丈夫よ。今はホッとしてる」


 それだけ言うと部屋から出て行った。





「それで、お前はどうするんだ?」

 城へ向かう馬車の中でトキオがクロアに聞いた。


「どうするって?」

「ギヌメール導師となにかあったみたいだけど、その誤解はとけたようだから導師のところに戻るのかと思ってな」

「ああ・・・・・今はちょっと混乱してるから、もう少し考えてみるわ」

「そうか。お前さえ良ければ、うちにはいつまでいてもいいんだからな」

「ありがとう・・・確かに、あんたのお屋敷は魅力よね」

 クロアはそう言って軽く笑った。


 トキオは、その笑い顔を見たら、もう大丈夫だろうという気持ちになった。




 その日も、柔道の練習が終わる間際になるとクロアはやって来た。


 すると、乱取りをしていた兵士たちに気合が入って、「うりゃあ!」「とお!」といった、いつもより大きな掛け声を上げるようになり、皆、相手を投げ飛ばした直後にはクロアの方を伺っていた。


 クロアは、アティムでも柔道の練習には参加していなかったので、どういった技がすごい技なのかはわからなかったため、その様子に特に興味を惹かれるでもなく、なんとくなく眺めているという感じだった。


(あーあ、いいとこ見せたいわけね。わかりやすいなあ。これじゃどう見ても、「この先有名な魔法使いになる」ってとこより「可愛いし」の方に比重が高いってことだよな)

 トキオはそう思って苦笑した。




 それからまた、皆で兵士食堂に昼食を食べに行ったが、この日も兵士たちがクロアのそばの席に群がった。

 トキオは、クロアの隣りに座るつもりだったが、クロアが腰を下ろした途端、あっという間に前後左右の席が埋まってしまったので、仕方なくテーブルの一番端っこに腰を下ろした。


 フラビアも同じようにはじき出されたようで、トキオの向かいに座った。


 それからは、兵士たちがクロアにさかんに話しかけたり、おかずを分けたりと、今日も大騒ぎだった。


 フラビアは、あきらめたのかもう何も言わず、トキオと二人で別の世界に隔離されているかのような疎外感を感じつつ会話をしていた。


「しかしお前って、なんで他の人が知らないことを色々と知ってたんだ?特に、ステータス画面なんて、知った時にはすごく驚いたぞ」

「それについては、俺のいた村じゃみんな当たり前に使ってたから、としか言えないなあ」

「え?そうなのかい?」

「そうだよ。だから、アティムに来て誰も知らないのがわかったときには、俺の方がビックリしたよ」

「ふうん・・・でも、なんでお前の村の人間が当たり前に知ってたのに、他の町や村には伝わってなかったんだろうな。まあ、私は近衛師団で他の師団と違って魔物討伐で辺境へ遠征するってことがないから知らなくて当然かもしれないが、ステータス画面については他の師団のヤツらも知らなかったみたいだしな」

「うちの村が結構閉鎖的だったからじゃないかなあ・・・もう、その話はいいでしょ?色んな人に聞かれるんだけど、俺も良くわからないから話すことは何もないよ」

「そうか。そりゃ悪かったな・・・でも、気になるな」

 フラビアがそう言ったので、トキオは思わず笑ってしまった。



 昼食が終わって兵士たちと別れる時に、今日も全員が手を振って来たが、クロアは今度はにこやかに振り返していた。


(扱いに慣れて来たか?しかし、まだ、クロア節が出てないけど、あれを聞いたらみんなどう思うかな)

 トキオはそんなことを考えて一人でニヤニヤしてしまった。


「あんた、なにニヤニヤしてるのよ!気持ち悪い」

 クロアが睨みながら言った。


(そうそう、これこれ)


 トキオはそう思ったが、別のことを言った。

「今日もモテモテだったなあと思ってな。それで、誰か気になる男はいたか?」

「ええっ?・・・特にいないわよ。誰が誰だかもよくわからないし。それに、今は光魔法をちゃんと使えるようになることが大事だから、男に構ってるヒマはないわ」

「おお!気合入ってるねえ」

「当たり前でしょ!とにかく、あんたに早く追いつかないとね」

「はいはい、期待してますよお」

「何その言い方!余裕かましちゃって、なんか腹立つわね」


 トキオがそのセリフにもクロア節を感じてニヤニヤしてしまったら、また、クロアに睨まれた。

★「ジュディット」について

 ギヌメール導師の奥様の名前「ジュディット」について、その元ネタに触れておきます。

 

 この名前は、フランス映画の「ロスト・チルドレン」で、ロン・パールマン(映画「ヘルボーイ」の主役)と共演した、フランスの子役「ジュディット・ヴィッテ」から取っています。

 

 この時9歳なのに、とんでもない色気を持ってる驚異的な美少女で、12歳以下の女優という縛りで言えば、私の中では第1位の美少女です。

 

 「ジュディット」という響きもとても気に入っていて、いつもやっているオンラインゲーム「ガンダムオンライン」でも使ってるぐらいです。

 

 ↓の私が書いた映画のレビューに、この子の画像が貼りつけてあるブログへのリンクが張ってありますから、ご興味のある方はご覧ください。

 https://movies.yahoo.co.jp/movie/28658/review/45/



 この小説の他の登場人物にも、ごく一部を除いて、私の好きな自動車レースや第二次大戦機に元ネタがあるんですが、それはそのうち公開します。

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