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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第9話 トキオのドキドキ初デート

「あーうまかったー。驚きだなあ」

 テリットが、満腹になった腹をさすりながら大満足という体で言った。

「でも、このあと体調が悪くなったりしないか?」

 ブロームが、少し心配そうに言った。

「俺が1か月前からたくさん食べて平気だったから、絶対大丈夫だって」

 トキオが答えた。

「そうかあ」

「俺は、こんなにうまい肉を食えたんだから、少しぐらい腹を壊してもいいぞ」

 マルケルが言った。

「あたしもー」

「俺もー」

「確かにー」

 皆は口々に同意して笑った。



「今日は画期的な日になったな」

 帰りの馬車の中でテリットが言った。

「ホントにそうだな。冒険者としての今後が随分明るくなった気がするよ」

 その言葉にマルケルが答えた。

「ホント、ホント」

 アウレラも同意した。それから、全員が感謝のまなざしでトキオを見た。

「ちょ、ちょっと、恥ずかしいからやめて。それに、男に見つめられる趣味はないから」

 その言葉で全員が大笑いした。



 それから、町に着くまでは、各魔物の今後の討伐の仕方の検討会になった。

 各武器でそれぞれの魔物の討伐の仕方を話し合ったが、共通していたのは、どの場合でも今までに比べて画期的に手順が簡素化されるだろうということだった。


 魔物を討伐するという作業の性格上、死ぬこともあるわけで、実際、毎月かなりの数の冒険者の死者が出ていた。

 その確率が劇的に減るということを考え、各自は嬉しさをかみしめていた。



 街に戻ってギルドに討伐報告をした。

 討伐報酬は、フォドラ一匹あたり銅貨10枚だったので、合計で銅貨30枚だった。

 しかし、別にグリズラーの討伐依頼も出ており、そっちは銀貨5枚になった。

 今までも討伐報酬は安いと皆感じていたが、今日のドロップアイテムを得た後では、さらに安いと感じるようになった。

 それでも、ドロップアイテムの収入が場合によっては破格になることを知ったので、皆、むしろ、今までより積極的に討伐依頼を受けようと心に決めていた。


 ギルドにある飲食コーナーのテーブルに着くと、エレザベスが寄って来た。

「討伐でお腹すいただろ。何にする?」

 注文票のようなものを左手に、ペンを右手に持って聞いてきた。

「あー、俺、お腹いっぱい」

「あたしもー」

「俺もだ」

 全員が満腹の意思表示をしたので、エレザベスは少し不機嫌になった。

「なんだよ、他所で食べてきたのかい!どこでだよ」

「森でー」

 テリットが答えた。

「森で?」

「そうだよー。あ、喉が渇いたからマイカ一つ」

「俺もー」

「あたしもー」

「俺は水を」

 トキオだけ水を注文した。

 エレザベスは、注文を書き留めると、けげんな表情でカウンターに戻っていった。


 そこで、森に行かなかった他の冒険者たちが5人寄って来た。

「おい、聞いたぞ。なんでも、魔物の頭部からお金がとれるから森に行ってきたんだって?」

 そのうちの一人がテリットに聞いてきた。

「ああ、パーシー。そうだよ」

「で、どうだったんだよ」

「それがさあ、ホントにとれたんだよ。フォドラの頭からは銅貨7~8枚」

「え!ホントかよ!すげーじゃねえか。で、毒はどうだったんだ」

「ああ、マルケルとアウレラとトキオが頭の中に手を突っ込んだけど、誰も何ともなかったな」

 パーシーと呼ばれた男は、その言葉でマルケルとアウレラを見た。トキオが誰だかは分からなかったようだった。

「確かになんともなさそうだな。でも、これから毒が回ってくるってこともあるんじゃねーか?」

「その可能性はあるが、まあ、大丈夫だろ」

「そうか。しかし、それって気になる話だな。詳しく聞かせろよ」

 パーシーはそう言って、テリットのテーブルの空いてる席に座った。残りの4人は隣りのテーブルに座った。

「ああ、皆にも知っておいて欲しいからいいぞ」

 テリットがそう答えたところで、エレザベスが飲み物を運んできた。

「喉が渇いてるからちょっと待ってくれ」

 テリットはグラスを取ると、一気に飲み干した。今日、森へ行った他のメンバーも一気に飲んだ。


「それがさあ・・・」

 そうテリットが話し始めたところで、テリットの背後のテーブルにいたトキオは立ち上がった。

「俺、ここに来たばっかりで何も持ってないから色々と買い物がしたいんだよ。悪いけど、誰か道案内してくれないかな」

「いいよ、あたし付き合う。今日はトキオにいっぱい世話になったからね」

 同じテーブルにいたアウレラは、そう言うと立ち上がった。

 トキオは、内心ドキッとしたが、平静を装って

「ありがとう。助かるよ」

 と、答えた。


 ギルドの外に出て歩き始めると、アウレラが腕を組んできた。

 トキオは驚いたが、悪い気はしなかったのでそのままにしておいた。

(街に来てこんなに早く美人冒険者とデートかあ。最高だなー)

 トキオは勝手にデートにしていた。


「それは全部ここにいるトキオが・・・」

 パーシーたちに今日のことを話していたテリットが振り返ると、そこにはトキオの姿はなかった。

「あれ?トキオはどこに行った?」

「買い物がしたいって、アウレラに案内を頼んで出て行ったよ」

 ブロームが答えた。

「ええ!?なんだよ、強力な戦力になりそうだったからうちのパーティーに勧誘しようと思ったのに。他の奴らに取られちまわねえかな」

「ああ、その点は大丈夫だ」

 ブロームは、ニヤリと笑った。



「まず、どこに行きたい?」

 アウレラが聞いた。

「やっぱり、下着だなあ。もう、一カ月も同じ下着着てるからなあ」

「ウソでしょ!?」

 アウレラは、そう言ってトキオから飛びのいた。

「あ、ちゃんと、その時着てた服と交代で1日おきに洗ってたから」

「なあんだ。ああ、びっくりした」

 アウレラは戻ってきたが、もう、腕は組んでくれなかった。

「じゃあ、こっちね」

 アウレラに案内されるまま、細い路地に入ると奥に衣料品を売ってる店があった。

 入ると、下着のほかにタオルや普段着になりそうな服も売っていた。

「あ、タオルや服もある。助かるなあ。服もこれ一着しかなかったからね」

「え!?」

 そう言って、また、アウレラは離れた。

「いやいや、この服は昨日買ったばかりだから。それまでに着てた服は宿にあるんだけど、ここらへんで着られている服とは全然違うから、ちょっと外に来て出るには恥ずかしいんだよ」

「え?ここらへんで着られている服とは違う?」

「うん、俺の住んでたところでは皆着てたんだけど、ここらじゃ誰も着てないんだよ」

「それ気になるわね。今度見せてくれる?」

「別にいいけど、何の飾り気もない殺風景な服だから期待しない方がいいよ」

「そうなの?でも、気になるわ」


「それで何をお求めで?」

 そこまで話したところで、店員の30代半ばといった感じのおねーさんが、ちょっとイラっとした顔で聞いて来た。

「あ、ごめんごめん。下着とタオルが欲しいんだけど」

「下着ならそっちの棚。タオルはここね」

 おねーさんが指で示した。

「ありがとう」

 トキオはそう言って、まずは下着の棚に行った。



 トキオとアウレラは、その店での買い物を済ませると外に出た。

(元の世界と同じ感じのトランクス型のパンツで良かったな。シャツやタオルも同じだったし)

「思ったより安くて良かった。服もこの着てる服より全然安かったなあ」

「その服、どこで買ったの?」

「確か『おしゃれ道場』って店だったな」

「あー。あの店は、よそ者にはふっかけるって店だからねえ」

「え!そうなの?」

「その服いくらで買ったの」

「銅貨25枚。それも、ホントは30枚なのにおまけしてもらって」

「ああ、完全にやられてるわね。その服なら、銅貨15枚がいいところよ」

「ええー!・・・くそっ!もうあの店では買わないぞ!」

「まあ、これもこの街を知るための授業料だと思うことね」

「ちぇっ」

「で、次はどこ?」

「石鹸と歯ブラシが欲しいなあ」

「了解。じゃあ、こっちね」


 アウレラが雑貨屋みたいなところに連れて行ってくれた。

 体用の石鹸と、洗濯用の石鹸があったので両方買った。歯ブラシのほかに爪切りもあったので買った。森にいた時は、やすりのようにザラザラした石で時々削っていたが、時間がかかったので爪切りはありがたかった。


「さあ、次は?」

「うーん、住むためのアパートを探したいけど、それは明日でもいいかな。明日も付き合ってくれる?」

「いいわよ。今日、大金が入ったから半年は仕事しないでも生活できるからね。まあ、お金のためだけに冒険者やってるわけじゃないけど」

 そう言って、アウレラはにっこりと微笑んだ。

 その笑顔にトキオはまたドキッとしたが、すぐに話に戻った。

「今日これからちょっといい?この世界・・・この国と魔物についてあまりにも知らないことが多いから、どこか話の出来るところで色々と教えて欲しいんだけど」

「いいわよ。今日はトキオの頼みは何でも聞いてあげるわ。じゃあ、あそこにしましょ」

 アウレラが指さしたのは、店の外にもテーブルが出ているカフェテラスのようなところだった。


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