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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第78話 魅惑の兵士長

「セバスチャンは俺の素性については詳しく聞いてないって言ってたけど、どこまで話してあるの」

 お城へ移動する馬車の中でトキオはミヒール司祭に聞いた。


「トキオさんが異世界から来られたというのは、国王陛下、勇者様、魔導士様たちの他には教団本部のごく一部の者しか知りません。そうしないと、魔人に伝わる恐れがありますので」

「ああ、なるほどね」


「ですから、トキオさんもそこは内密にお願いします。屋敷の使用人にはトキオさんの偉業の数々は伝えてありまして、国王陛下から直々にその功績をたたえられた方だと話してあります」

「そうか。了解。まあ、その方が変な目で見られなくていいかもね。俺みたいなどこから見ても庶民な男が、あんな分不相応な屋敷に住むのは不自然だからね」

 そう言って、トキオは軽く笑った。



 お城に着いて、ミヒール司祭に案内されるままお城の中を歩いていたら、ゴットハルトが50代とおもわれる男性を連れて現れた。


「おはようございます、トキオ様」

「おはようございます・・・すみませんが、その『様』はやめていただけますか。俺はただの冒険者ですから、なんだか居心地が悪くて」

「おや、そうですか」

「そう呼ばれるのは苦手なようでして、我々も『トキオさん』と呼ばせていただいてます」

 ミヒール司祭が言った。

「わかりました、今度からそうお呼びします」

「すみませんがお願いします」


「それで、柔道の訓練場に行く前に寄ってもらいたいところがありまして」

「あ、はい。どこでしょうか」

「この者は造兵局長ですが、銃の撃ち方で困っているそうなので教えていただけますでしょうか」

「はじめまして、ウェスターと言います。国王陛下から銃の量産命令が出ましたが、正しい撃ち方がわからずに試験に支障をきたしておりまして、トキオさんに撃ち方を教えていただきたいとお願いに参りました。かなり衝撃が強くて手首を痛めた者も出る始末で」

 ウェスタ―と名乗った男は、申し訳なさそうに言った。


「おや、それはいけませんね。わかりました。伺います」

「それはありがたい!こちらです」


 トキオはウェスタ―について造兵局へ行った。


「こちらが銃を製造している工場になります」


 ウェスタ―に紹介されて見たそれは、非常に大規模なもので、各パーツは数多くの砂型を作って製造されており、それを研磨したり組み立てたりする工員も何十人もいた。


「すごい規模ですねえ。さすが王都の造兵局だ」

 トキオは、思わずそんな言葉を漏らしていた。


「はい、トキオさんの話を伺った国王陛下が銃の有効性に大いに興味を持たれまして、ここに直々に参られて増員命令を出されました」

「なるほど。いいことですね」


「試験用の試射室はこちらです」

 トキオが案内された場所は、横幅、奥行きとも20メートルほどの広さの場所で、手前から10メートルほどのところに5重の丸が描かれた的が立っていた。

 こちら側には、試射をしていたと思われる手に拳銃を持った男が3人いた。


「設計図と一緒に拳銃とライフル銃の完成品を1丁ずつもらったのはいいのですが、撃ち方を書いたものがなくて、こっちで勝手に考えた撃ち方でやっておりましたが、どうも違っているようでなかなか的に当たらないのです。それで困っておりました」

「そうですか。どんな構えで撃ってましたか?」

「はい。拳銃の場合は、なるべくこのサイトというものをしっかり覗けるように肘を曲げて顔に近づけて撃ってました」

「ああ、それはいけません。それじゃ、よっぽど力があって慣れた人じゃないと手首を痛めます。それと、爆炎が飛んで来て危ないですよ。ちょっとやって見せましょう」

「お願いできますか!ありがとうございます!」


「これをお使いください」

 拳銃を持っていた男の一人が、トキオのところまで歩み寄って来て拳銃を手渡した。


「これは、ここで製造された拳銃ですか?」

「はい、そうです」

 ウェスタ―が答えた。

「なかなかしっかり作ってありますね。いい出来です」


 トキオはそう言ってから的を狙うように銃を構えた。


「こんな感じで銃を握っている右手はしっかり伸ばしてください。そして、その右手を包み込むように左手もしっかり握って。それから、この銃は引き金を最後まで引けば撃鉄が自動で起こってまた落ちるようになっていますが、それだと引き金を引く右手に力が必要になってブレやすいので、撃鉄はあらかじめ起こしてから引き金を引いて撃ってください」


 そう言ってからすぐ、トキオは言ったとおりに右手の親指で撃鉄を起こしてから引き金を引いた。


 ドォーン!


 発射音が室内に響くと同時に、銃弾は的の真ん中にある黒丸のやや左下に着弾した。


「おお~」

 見ていた者から感嘆の声が漏れた。


「ちょっと左下にずれるようですね。サイトをあとで調整しておいてください」


 そう言うと、同じ動作で立て続けに3発撃ったが、その弾はすべて中央の黒丸に命中した。


「おおおー!」

 今度は驚嘆の声が漏れた。


「素晴らしい!さすがですね!」

 ウェスタ―が興奮した声で言った。


「こんな感じでいいですか?」

「はい!大変参考になりました!」

「じゃあ、次はライフル銃ですね」

 トキオがそう言うと、さっき拳銃を手渡した男が壁に立てかけてあったライフル銃を持って来た。


「ありがとう・・・では、ライフル銃の撃ち方ですが、銃床の一番こちら側を肩のこの部分に当てて・・・」


 そんな感じで、トキオはライフル銃の撃ち方を説明し、実際の射撃を実演して見せた。


 それからさらに、拳銃、ライフル銃それぞれの撃ち方を、試射をしていた3人に実際に銃を撃たせて説明した。


「うん。大体いいね。その感じでよろしくね」


 トキオは、そう言ってからウェスターの方を向いた。

「一通り説明しましたが、明日、また様子を見に来ますよ」

「そうですか!助かります!本当にありがとうございました!」

 ウェスタ―はそう言うと、深々とお辞儀をした。




「見事な腕前でした。オクスドンを簡単に仕留めたというのが理解できました」

 造兵局を出たところで、ゴットハルトが言った。


「まあ、的が近かったですからね」

 トキオは真顔でそう答えた。


「またご謙遜ですか。さすがです・・・ああ、思いのほか時間を取られましたねフラビアが怒っているかもしれない」

「フラビア?」

「兵士長のことです。着いたら紹介します」


(ふうん、女みたいな名前だなあ)


 トキオはそう思った。


「私は魔導士長と話がありますのでここで失礼します。師団長、あとはお願いします」

「わかりました」


 ミヒール司祭は、そこで別れて別の方へ歩いて行った。




「着きました。あそこが訓練場です」

 ゴットハルトが指さした先を見ると、中庭のような日が差している場所に十数人の兵士が立っていたが、その中央の一番前に、腕組みをした良く日焼けして背の高い女がいた。


「遅い!」

 その女は、トキオたちの姿を見るとそう怒鳴った。


「ああ、やっぱり怒ってますよ」

 ゴットハルトがトキオにそう耳打ちした。


「え?ということはあの人が兵士長?」

「そうです。女ですが、なかなかの豪傑です」


 トキオは、そう言われて改めてその女の姿を見たが、胸やお尻をはじめとした、頭を除くすべてのパーツが大きくて、くびれるところはくびれており、ややむっちりとした体形をしていた。




「あんたがトキオかい?」

 トキオたちが訓練場に着くと、フラビアが言った。

「そうだよ」


 確かに豪傑そうだったが、近くで見ると素晴らしいスタイルをしているのがさらに良くわかって色気もあった。しかも、なかなかの美人で、歳はテリットと同じぐらいだと感じた。


(抜群のスタイルだな~。これは一言で言うと・・・セクシーダイナマイツ!)


 トキオにとって兵士長の第一印象は最高に良かった。


「思ったより若いんだね。でも、よく鍛えられた体をしてるね」

「そりゃどうも」

「じゃあ、さっそく柔道を教えてもらおうか。でも、その前に・・・」


(あ、また同じパターンか?)


「私と手合わせしてもらうよ。あんたが私たちに格闘技を教えるのに値する実力者なのか見たいからね」


(やっぱり!)


 周りの兵士はニヤニヤした顔でトキオを見ていた。


「フラビア、それは構わんが、その前に、トキオさんは昨日、ジークフリートと立ち会ってその胸を掴んで投げを放ったことは伝えておこう」

「躱された上に突き飛ばされましたけどね」

 ゴットハルトの言葉にトキオは自嘲気味に言った。


「なんだって!勇者の体に触れて、しかも、手まで使わせたって言うのかい!?」

 フラビアだけでなく、その場にいた兵士全員が驚きの表情になった。


「私なんか何度立ち会っても軽くあしらわれるだけだってのに・・・ますます、あんたと立ち合いがしてみたくなったよ。いくよ!」

 フラビアはそう言うとトキオに向かって突進して来た。


 まず、右のパンチを放って来たので、それは左手ではたきながら左に避けて躱した。


 また突進してきたが、今度はパンチの届く間合いまで来ると、足を止めて左右のパンチを放って来た。

 トキオは、それを手ではたきながら、3つ目の右パンチで手首をつかむと左足で支釣込足ささえつりこみあしをかけてフラビアをすっ転がした。


「おおー!」

 周りの兵士から驚嘆の声が上がった。


(うーん、スピードはあるけど、アティムで最初にみんなを見た時みたいに動きが単調だから簡単に見切れるな)

 トキオはそう思って、フラビアの攻撃を脅威と感じなかった。


「くっ!」

 フラビアは素早く立ち上がると、また突進しながら右のパンチを放って来たので、こんどはその腕を両手でつかんでそのまま後ろに引っ張ってすっ転がした。


「ウソだろ?」

 フラビアはそう言うと、また立ち上がって今度は右手で胸倉を掴もうとしてきたので、一瞬左にフェイントをかけてから懐に飛び込んで体を密着させると、その腕を掴んで一本背負投を放った。


 フラビアは、仰向けに派手に地面にたたきつけられた。

 周りの兵士たちは息を飲んだ。



 フラビアは、もう起き上がってこなかった。

 そして、仰向けになったまま笑い始めた。


「ははははは、こりゃ大した実力だ。勇者の体に触れられたのも納得できるよ」


 それからフラビアは、ゆっくりと立ち上がるとトキオに握手を求めてきた。


「名乗るのが遅くなったけど私は兵士長のフラビアだ。これからよろしく頼むよ」

「こちらこそよろしくね」

「今のが本物の柔道なんだろ?やっぱり全然違うねえ」

「正確に言うと、2つ目の腕を引っ張ったのは合気道だね」

「アイキドウ?そんなのもできるのかい」

「うん。俺は子供のころから冒険者になるために色々やって来たからね。他に、剣道、弓道、空手、棒術、槍術もやったよ」


 その言葉で、ゴットハルトを含めて皆はあんぐりといった表情になって固まった。


「なんだいそりゃ!そんなにたくさん子供のころからやって来たのかい?」

「そうだね。一番短いので14年、一番長いのは20年かな」

「なんと!ははははは!こりゃいいや!じゃあ、そいつらも教えてくれるんだろ?」

「いいけど、まずは柔道だね。中途半端に覚えてヘンなクセがついてる気がするし」

「ああ、そうかもしれない。どうも、有効な格闘技って感じがしてなかったからね。今、掛けられたのを覚えられれば随分と有効に使えそうだよ」

「そうなると思うよ。じゃあ、やろうか」


 トキオがそう言うと、フラビアは肩を組んでトキオを訓練用の室内施設の方へ連れて行った。

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