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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第74話 驚きの報奨

 謁見の間を出たところで、ゴットハルトがキロウ司教になにやら耳打ちをしていたが、ゴットハルトが去っていくとキロウ司教がトキオのところに来て言った。


「一旦控えの間に行きます。こちらです」


 トキオは、キロウ司教のあとをミヒール司祭とついて行った。



 控えの間と聞いて、法事で利用するようなものを想像していたら、とんでもなく広い部屋に案内された。

 椅子とテーブルが何セットか置かれていたが、立食パーティーなら200人は入りそうな広さだった。


 トキオは、テーブルの一つにつくと、隣に座ったミヒール司祭に話しかけた。


「柔道を教える件、ミヒールさん、最初から知ってたでしょ!」

「申し訳ございません。トキオさんを国王陛下に引き合わせるために、どうしても王都に来ていただく必要がありましたので」

「まったく!ひどいよ!・・・王様に頼まれたら断れないじゃん。じゃあ、俺は1年もアティムに帰れないわけ?」

「あ、いえ、時々は戻っても支障はないと思いますが、それも柔道の練習が軌道に乗ってからだと思いますので、数か月は無理かと・・・」

「なにそれ!」


 トキオはそう言ってミヒール司祭を睨んだが、魔王討伐のためなら仕方ないかと思い始めていた。



「しょうがないなあ・・・ところで、勇者様、とんでもない強さだったけど何歳なの?」

「確か、今年で38歳のはずです」

「えー!38歳ー!柔道の選手なら大抵は現役引退してる歳じゃん!」

「そうなんですか」

「うん。それより、38歳であの動きだとすると、20代の時の動きを想像するのが怖いんだけど」

「いえ、勇者様は年々強くなっておなりです。曰く『毎日鍛錬しているんだから、徐々に強くなるのは当たり前』だそうです」

「あー、イチローも40歳超えて走塁の新記録を出した時に同じようなこと言ってたなー」

「イチロー?どなたです?」

「あ、向こうの世界の人だから気にしなくて大丈夫」

「あ、そうなんですね。その方もスゴい方だったということですか」

「スゴいも何も、色々な世界記録を打ち立てた神がかり的な人だったよ」

「そうなんですか。どの世界にもそういう別次元の方がいらっしゃるというわけですね」

「そうだけど、勇者様の強さはさらに次元が違うと思うよ」

「そうなんですか。まあ、王国最強レベルの兵士と比べても確かに別次元ですが」

「そうでしょ?」

「ちなみに、真の実力はもっと全然上らしいです」

「やっぱりそうなんだー。なんか、軽くあしらわれてる感じがしたんだよね」


「ところで、このあとはどうなるの?」


「国王陛下からの報奨を受け取っていただくために、別の場所に移動しますが、その前に魔導士様たちがトキオさんにお話があるとのことですので、申し訳ないですが、ここでもうしばらくお待ちください」

 キロウ司教が言った。


「俺に話?なんでさっき言わなかったんだろ?」

「さあ、なぜでしょうか。そこは聞いておりません」



 しばらくすると、魔導士全員がノックもせずに部屋に入って来た。

 シュミュード魔導士長はトキオと同じテーブルにつき、残りの4人は隣のテーブルについた。


「このことは、確認を取ってからにしようと思ったので王の前では言わなかったのだが、トキオ、今朝、そなたがヒドラの完全体を魔法の一撃で仕留めたという情報が入った。それは本当か?光魔法にそこまでの威力があるとは思えないのだが」

 シュミュード魔導士長が聞いてきた。


「あー、あれは実は俺じゃないです。クロアという女の子の魔法使いですね。新しく開発した特別の魔法を使ったんですよ。光魔法だと言った方がアティムの師団長や上級魔法使いが納得してくれそうだったんでそういう話にしました。実際、納得してくれたんですが」

 トキオの答えで、その場の全員が驚きの声を上げた。


「なんだそれは!光魔法を改良したものか?南部にはそなた以外に光魔法を使える者はいないはずだが」

「いえ、光魔法ではないです。属性で言えば火と水の魔法です」

「火と水の魔法?どういう意味だ」


「俺の世界の架空のお話に、二つの違う属性の魔法を融合させて放つと非常に強力な魔法になるというのがありまして、自分も魔法を使えるようになりましたから、火と水の魔法を融合させてできないかと試してみたんですが、イメージの仕方そのものがわからなくてうまくいきませんでした。そこで、腕利きの魔法使いであるクロアに依頼してみたところ見事に成功させたんです」

「魔法の融合だと!?そんなことができるのか!」

「はい。まあ、元が架空のお話ですので、できる可能性は低いと思ってダメ元でやってもらったんですが、彼女はわずか4日でできてしまいました。魔法の天才ではないかと思います」


「それほどの能力とは。興味深いな。それで、その魔法でヒドラをどう倒したのだ」

「その魔法を放つと大きな円柱状の光の帯が飛んで行くんですが、それが触れた部分、今回はヒドラの体の上半分が円形に削り取られて消滅しました」

「消滅!?消えてなくなったということか」

「はい」

「血も肉片も飛び散らずにか?」

「そうです」

 魔導士たちは信じられないといった表情で互いに顔を見合わせた。


「その女、歳はいくつだ」

「経歴書では25歳になってたらしいですが、見た目はもう少し若いので正確な歳はわかりません。たぶん20歳そこそこかと」

「そのような今まで誰もやったことのないことを簡単に成し遂げてしまうとは、一体、どこで鍛錬したのか・・・その者に誰が魔法を教えたか聞いているか?」

「80歳の師匠から仕込まれたと言ってましたね。名前までは聞いてませんが」

「80歳の師匠?・・・・・まさか、ギヌメール導師!・・・確か、目をかけていたのに突然失踪した若い女の弟子がいたはず。もしや、その女が!」

「師匠って有名な人なんですか?」

「ギヌメール導師であればそうだ。私の師でもある」

「ええっ!」

「まだわからんが、その女の師匠はギヌメール導師である可能性が高い。トキオ、その者を王都に呼ぶことはできるか?」

「可能だとは思いますが、魔導士様から招集していただいた方が確実だと思います」

「うむ、確かにそうだな。アティムのクロアだな?」

「はい。あ、でも、アティムの王国軍には俺が倒したことになってますから、そこは漏れないようにお願いします」

「わかった。アティムの司祭が直接冒険者ギルドに行って依頼するよう手配する」

「お願いします」


「とりあえず、この件を急ぎたいので、お前の魔法鍛錬の話は明日以降にしよう」

「わかりました」


 それだけ話すと、魔導士たちは部屋から出て行った。


(クロアのヤツ、そんなスゴい人から教わってたのか。どうりで、若いのに能力が高いわけだ)



「さあ、それでは報奨のある場所へ移動しましょう」


 ミヒール司祭がそう言って立ち上がったので、トキオも立ち上がった。


「私は別件の用があるからあとは頼む。それでは、トキオさん、また明日にでも」

 キロウ司教は、ミヒール司祭とトキオにそう言って先に出て行った。




 城の外に出ると、先ほどとは違う馬車が待っていたが、その馬車もかなりゴテゴテとした飾り付けがしてある綺麗な馬車だった。

 そして、今度の馬は普通に茶色系の色をしていたので、トキオはなんとなくホッとした。


(やっぱり、さっきのはキロウ司教さんの馬車だったんだな)


 トキオはそう考えながら乗り込んだ。


 内装は幾分簡素だったが、それでも同じように座面には厚いクッションが敷いてあり、乗り心地は良かった。



 二人が乗り込むと、馬車はすぐに出発した。

 トキオは、坂を下って行く馬車の中でお城の方を振り返り、その姿に改めて惚れ惚れと見とれるのだった。





「着きました。こちらです」

 10分ほど走ったところで馬車が止まり、ミヒール司祭が言った。


 トキオが外を見ると、目の前に、鉄の柵に囲まれたベルサイユ宮殿のそばにありそうな、いかにも『貴族の屋敷です!』という趣の3階建ての大邸宅を中心にした広大な敷地があった。


「すごいお屋敷だなー。なるほど、この中にその報奨とやらがあるんだ」

「はい、この建物の中に用意してございますが、この建物と敷地も報奨の一部です」

「ああ、そうなんだ・・・・・ええー!?」

「これから王都に住んでいただくことになりますので、そのお屋敷として国王陛下がご用意されました」

「え、ちょ、な・・・・・ええー!?」


 トキオは、宝石か値打ちのある骨董品がもらえるぐらいに思っていたのでパニックになった。


「以前はお城に勤務されていた貴族の方がお住まいでしたが、西部で魔物が増えて生産高が落ちてきたため、その改善にと国王陛下の勅命でそちらに派遣されまして、1年前から空き家になっておりました」

「そうなんだ・・・」


「では、入りましょう」

「ま、待って。ホントに俺はここに住むの?」

「そうです」

「だって、独り身なんだからこんな大きなお屋敷はいらないよね?」

「確かにそうかもしれませんが、トキオさんの偉業に見合うお屋敷と考えたら、この程度のものになってしまいますので」

「いや、そこは・・・ええー?」

 トキオは驚きすぎて、それ以上言葉が出て来なかった。



 それでも、馬車が門を入ってしばらくすると少し落ち着いてきた。


「こんなに大きい建物じゃ掃除も大変だし、ちょっと困るなあ」

「ああ、説明不足ですみません。もちろん身の回りのお世話をさせていただく執事、メイド、料理人、庭師もご用意しておりまして、あちらに見える小さな建物に住み込みでお勤めさせていただきます」


 そう言ってミヒール司祭が指した敷地の隅にある建物は、日本の建売住宅の3倍はあった。


「ああ、そういうことかー。なんかピンと来ないなあ。これだけ大きい屋敷だと部屋数も相当あるんでしょ?その人たちも掃除が大変なんじゃない?」

「確か、20部屋ほどだったと思いますが、その点はご心配なさらずに」

「え!そんなに!?」

「詳しいことは屋敷の中に入ってからご説明いたします」


 トキオは驚いて、再度まじまじとその屋敷を見た。


 しかし、しばらく進むと、

(まてよ?この大きさだと20部屋って逆に少なくないか?どういうことだ?)

 と、思った。



 それから、かなりの時間を移動して建物の前に到着した。庭もとてつもなく広かった。


「お帰りなさいませご主人様」


 馬車を降りると、きちっとした礼服姿の中年の男性とその隣のメイド服を着た若い女性二人がそう言って頭を下げた。


「彼らがトキオさんの身の回りのお世話をする執事とメイドでございます」


(リアル・メイド!?マジかっ!)


 トキオは、驚くと同時に顔がにやけた。


(しかも、二人ともけっこうかわいくて乳がデカいぞ。これは・・・困ったことになったなあ、デヘヘヘヘ)


 そう考えると、さらににやけた顔になった。執事のことは、すでに目に入っていなかった。


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