第73話 王様の興味
「今度はワシの番じゃな」
王のその言葉で、王様とも立ち合いをしなければいけないのかと思い、トキオはたじろいだ。
(さすがに勇者ほどの強さはないだろうけど、もし、ケガでもさせたら自分の身が無事じゃ済まないー)
「何を身構えておる。ワシはお前に聞きたいことがあるだけじゃ」
それを聞いて、トキオはホッと胸をなでおろした。
「どのようなことでしょうか」
「お前がいた世界のことじゃ」
「はあ・・・」
「この世界とどう違うのかが聞きたくてな」
「ああ、そう言う意味ですか。そうですね・・・・」
トキオはどう話そうかと悩み、少し視線を上にあげて考えた。
事実をありのまま話すと気を悪くするかもしれないと思ったが、ごまかし方を思いつかなかったので正直に話すことにした。
「・・・まず、文明のレベルが格段に違います」
「ほほう」
「この世界は、私がいた世界の4、5百年前と同じぐらいの文明レベルだと思います」
「なんと。それでは、かなり様子が違っておるのじゃろうな」
「はい」
「まず違うのは移動手段ですね。私がいた世界では、遠い距離を移動する場合は、飛行機という空を飛ぶ乗り物を使います」
場内が大きくどよめいた。
「空を飛ぶ乗り物じゃと!空飛ぶ絨毯のようなものか?」
「いえ、もっと全然大きなものです。一番大きなものは、全長38マインほどありますので」
「なんと!そんな大きなものが本当に空を飛ぶのか!」
「はい」
「何人ぐらい乗れるのじゃ」
「一番多く乗れるもので800人ちょっとですね」
また、場内が大きくどよめいた。
「なんと!1大隊が一度に移動できると言うのか!」
「はい。しかも、速度も相当速いです。この王都からアティムまでの距離なら1時間かからないです」
「ばかな!それは本当なのか?にわかには信じられん!どのような仕掛けになっておるのじゃ?」
「あー、そこを説明するのは難しいですね。どう言えばいいかなあ・・・・・そうですね、圧縮した空気に油を注入してから火をつけたものを後方に噴射して、その力を利用して前に進むってところですかね」
王は、理解ができなかったらしく難しい顔になった。
「良くわからんが、それを作ることはできるか?」
「それは無理です。私はその方面の専門家ではないので細かい構造が分かりませんし、それ以前に、機体には非常に強度が高くて軽い金属が必要ですが、この世界にはそれを生成できる技術がありません。それと、それに使う油も普通の油ではダメで、特殊な技術によって精製された油が必要となります」
「そうなのか。それは残念じゃのお・・他はどんなところが違うのじゃ」
「建物が非常に背の高いものになっています。100マイン程度の高さのものでも、私の住んでいた街でしたらたくさん建っています」
また、場内が大きくどよめいた。
「100マインじゃと!それがたくさんじゃと!」
「うちの国で一番高い建造物は白い塔でしたが、それは300マインちょっとあります」
「300マインの塔じゃと!信じられん!」
「はい。でも、よその国には、もっと高いものがありまして、400マインを超えるものもあります」
「なんと!・・・ふーむ、恐ろしい世界じゃ。わかった、お前も疲れただろうから今日はそのくらいで良い。また、別の機会に詳しく聞かせてくれ」
「かしこまりました」
(ああ、パソコンやスマホの話までいかなくて良かった。あれを説明するのは面倒くさいからな)
トキオはそう思った。
「では、別の話じゃ。一つお前に頼みたいことがある」
「はい、なんでしょう」
(なんか、イヤな予感がする・・・)
「お前が柔道をこの国に広めた人間と言うのは合っておるか?」
「はい。柔道は私のいた世界で行われている武道になりますので」
「ふむ。今、この王都にもその柔道が伝わってきておって、兵士を中心にその鍛錬を行っておるのじゃが、また伝えのせいか、今一つ有効な格闘技になっていないと兵士長から報告があっての」
「そうかもしれません。それは私も懸念しておりました」
「そこでじゃ、この王都にいる兵士たちに、お前から直々に柔道を教えて欲しいのじゃ」
「え?・・・それは構いませんが、どのくらいの期間でしょうか」
「お前はどのくらい教えれば身につくと考える」
「そうですね、アティムで教えていたときの感じからすると、最低でも4カ月、実戦で瞬時に状況判断して適切な技が出せるようになるまでであれば1年はあった方がいいでしょうか」
「それでは、少なくとも1年は教えて欲しい」
「え?それは、1年間王都にいろということですか?」
「もちろんじゃ。何か問題はあるか?」
「・・・いえ。特には」
(やられた!王様の頼みなんか断れるわけないじゃん!さては、ミヒールさん、こうなるの知ってたな?)
「ところで、実際のところはどうなのじゃ。ちゃんと鍛えれば、魔物討伐に有効に活用できるのか?」
「はい。アティムや、一緒に教えていたアルアビスの冒険者たちは、ゴブリンやオークを相手に有効に使っておりました。混戦の中で後ろから組み付かれたときなどに、それを投げ飛ばして振り払うのが以前より容易になったと申しておりました。それと、関節技と絞技も有効なようです」
「そうか。それは頼もしいぞ」
「ただ、拳銃を作ってからは、その武器の方が簡単に魔物を仕留めことができるようになりましたが」
「なに?ケンジュウとはなんじゃ?」
「あ、ここに持って来ています」
トキオはそう言うと、ミヒール司祭のところに行って拳銃を受け取った。
受け取る時にトキオがミヒール司祭を睨むと、すまなそうな顔をして頭を下げた。
「これが拳銃です。火薬で金属の塊を飛ばす武器なんですが、これを使えば、グリベラーを1発で仕留められます」
その言葉で、また、場内がざわめいた。
「なに!?一人でか?」
「はい。ここに来る途中でオクスドンもこれで仕留めました。ミヒール司祭も一緒に見てます」
「ミヒール、そうなのか?」
王はミヒール司祭に向かって聞いた。
「はい。この拳銃から弾丸というものを1発撃ち込んただけでオクスドンは動きを止め、さらに2発撃ちこむと倒れて動かなくなりました」
場内はさらにどよめいた。
「なんと!そんなに強力な武器なのか!」
「はい」
「銃につきましては、造兵局の方へ量産依頼が来ていると聞いています。この拳銃のほかに、ライフル銃というもっと遠い距離を狙える銃があるそうです。現物も1丁ずつ来ていて、今、その有効性と問題点がないかを確認中です」
ゴットハルトが言った。
「なんと、そうであったか!トキオ、これもお前が考案したものなのか?」
「私の世界では銃は数百年前からあるものですから、正確に言うと考案したのは私ではないですが、この世界には私が広めました」
「そうかそうか。さらにこの世界のために尽力してくれていたのだな。それで、使っていて問題は起こっていないか?」
「こまめに整備をしていれば大丈夫です。アティムやアルアビスではそれを徹底させていますから、今のところ問題は起こっていません」
「そうか。それでは、ただちに量産を開始せよ!」
王はゴットハルトに向かって言った。
「は!かしこまりました」
「魔王討伐のためには、できることはすべてやっておきたい。トキオ、助言を頼んだぞ」
「了解いたしました」
「次は私から話がある」
今度は、シュミュード魔導士長から声がかかった。
「はい、なんでしょう」
「そなたには光魔法を授けてあるが、レベルはいくつになっている」
「19ですね」
その言葉で、魔導士全員と、キロウ司教が驚きの声を上げた。
「19だと!半年でか!?最初は5だったはずだが」
「はい、5でした。でも、冒険者として討伐のなかで使っていたら徐々に上がりました」
「・・・なるほど。これは予想もしなかった朗報だ。そなたには光魔法に対する抜群の適性があるようだ」
「そうなんですか?・・・そう言えば、19だと言ったらアティムの王国軍にいる上級魔法使いも驚いてましたが」
「アティムのような辺境にいる上級魔法使いの魔法レベルなど、良くて15ぐらいだろうからな」
(あ、やっぱり俺の方が上だから驚いたんだ)
「光魔法は授けたものの、まったく使い方を教えていないので有効に使えているか心配していた。そなたが王都に来たら鍛えようと思っていたのだ。適性があるとなると、鍛えればかなり有効な戦力になり得る。これから毎日、光魔法の鍛錬をしようと思うが、良いか」
「ありがとうございます。実際のところ自己流で使っていただけなので、正しい使い方を教えていただけるのは大変にありがたいです」
「わかった。それでは、のちほど話に行く」
「よろしくお願いします」
(おおー!やっと「鍛錬」てのがどんなことをするのかわかるぞー!)
「他の者はもう良いか?」
王が皆を見渡して聞いた。
皆は、無言でお辞儀をした。
「それでは、今日はこれまでじゃ。トキオ、柔道と銃のことはよろしく頼むぞ。それと、あとでまたお前の世界の話を聞かせてくれ」
王はそう言うとニヤリと微笑んだ。
「かしこまりました」
王は立ち上がると右手の扉へ向かったが、勇者と魔導士たちもその後に従った。
それを見た他の者たちが頭を下げた姿勢になったので、トキオもあわてて同じ姿勢を取った。
「それじゃあ、トキオさん、行きましょう」
王たちが退出すると、後ろからミヒール司祭がそう声をかけてきたので、刀と拳銃のベルトを受け取ってから、皆に続いて部屋の外に出た。
(そう言えば、さっき王様は空飛ぶ絨毯とか言ってたけど、この世界にあるのか?だったら乗ってみたいぞー!)
トキオは、部屋の外に出るとそう思った。




