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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第72話 謁見の間と勇者からの依頼

「あ!王様に謁見するとなると、武器は外して行った方がいいんですよね?」

 トキオはゴットハルトに聞いた。


「いえ、そのまま来られるようにとの仰せです」

「え?そうなんですか?意外」

「はい。何かお考えがおありのようです。ただ、国王陛下はざっくばらんな方ですが、くれぐれも失礼のないようにお願いします」

「そこらへんは心得てるつもりですが、緊張してるから大丈夫かなあ・・・」

「まあ、あまり肩を張らずに力を抜いてください」

「わかりました。努力します」


(暴発するといけないからと、ここに来る途中で拳銃の弾は抜いたし、まあ、大丈夫かな)



 コンコン!


 ゴットハルトがノックをすると、扉は内側から開いた。


「どうぞ、お入りください」

 30歳ぐらいの国王直属の武官と思われる男が中におり、開けた扉の脇に立ってそう言った。



 ゴットハルトに続いて、ドキドキしながら部屋に入った瞬間、正面の豪勢な椅子に王冠をかぶって重厚な衣装をまとった60歳ぐらいの男性が座っているのが目に入った。


 その左には、帯剣して、襟の高い戦士の正装と思われる服に薄手のマントを羽織った金髪で長髪の男が立っていた。

 右には裾の長い法衣を纏った男たちが5人立っていた。

 それぞれ、王、勇者、魔導士たちだというのは容易に想像できた。


「お連れいたしました。こちらが召喚者のトキオ様です」

 ゴットハルトが王に向かってトキオを紹介した。


「召喚者様には私からご説明いたします」

 キロウ司教が前に出てくるとそう言った。


「中央の玉座の方がヘルムート国王陛下であらせられます」


「トキオと申すのか。待ちかねたぞ。もう少し近くに来るが良い」

「は!お会いできて光栄です」

(うわー!王様という人に会うのって初めてー。威厳があって渋いー)


「まあ、そうかしこまるな。ワシは堅苦しいのが嫌いなのだ」

「恐れ入ります」

(そんなこと言われたって失礼なことしたら打ち首でしょー。無理ー)


「国王陛下の左側におわしますのが、勇者ジークフリート様です」


「トキオ、偉業は色々と聞いているぞ。この国のために尽力してくれて感謝している」

「は!もったいなきお言葉」

(うわっ!勇者、イケメンなうえに長身で引き締まった体してて超かっけー!アウレラが言った通りだー!)


「右側におります5人が、我が聖光教団の最上位魔法使いである魔導士です。国王陛下に一番近いところにおりますのが、魔導士長のシュミュードです」


「異世界から呼びつけてすまなかったが、今後も色々と協力してもらうことになると思う。頼むぞ」

「お噂はかねがね。よろしくお願いいたします」

(さすが魔導士長、なんかオーラ出てるー!)


「トキオ、お前のもたらしてくれた数々の情報は魔物討伐に非常に役立っておるぞ。シークフリートと魔導士たちも、これでこの世界から魔物を一掃する目途がついたと申しておる。その功績をたたえて報奨を用意してあるのでのちほど受け取るが良い」

 王が言った。


「は!ありがとうございます」

「しかし、召喚してから6カ月も経ってしまうとはのう。どこで何をやっておったのだ?」

「アティムという街で冒険者をやっておりました」

「ほう、早速魔物を討伐しておったか。実に素晴らしいことじゃ。しかし、アティムとは南部の国境に近い街ではないか。長旅で疲れたであろう」

「いえ、体力だけはありますので大丈夫です」

「そうか、それならば良いのだ。ジークフリートがお前に用があるらしいからな」

 そう言うと、王はにやりとした笑みを浮かべた。

「は?」


 トキオが不思議に思っていると、

「トキオ、お前はこの国では見かけない格闘技をいくつか習得しているらしいな。一つ、手合わせを願おうと思ってな」

 勇者がそう言った。


「ええー!?」

 トキオは、全然予想していなかったので、思考が停止してそれ以上言葉が出なかった。


「それと、格闘技だけでなく剣の腕も相当なものだそうだな。まず、その腕を見せてもらいたいが、その前に、その珍しい形をした剣が気になる。抜いて見せてくれるか」

「は、はい」

 トキオは言われるままにその場でライキリを抜いた。


「これは、剣ではなくて刀と申しまして、私がいた世界では千数百年前から使われてきた武器になります」

「カタナというのか。そして、千年以上前から使われていると。それでは、その間に相当に形が変わったのであろうな」

「時代時代によって小さな差はありましたが、基本的な見た目は千年前とほとんど変わっておりません」

「ほう。そうだとするなら、元々が相当に完成度の高い武器だったということだな」

「はい。ただ、作り方は経年によってかなり変化していますので、個体によってかなり別物になっています」

「なるほど、そういう変化の仕方か。私も手に取ってみたいが構わないか?」

「は!」

 トキオは、勇者の前まで進み出ると、ライキリを右に倒してから左手で柄を握り、右手を刀身の真ん中あたりに添えて献上するように差しだした。

 それを勇者が手に取ると、勇者の方を向いたまま元の場所まで下がった。


「ほう、かなり軽いものなのだな」

 勇者はそう言うと、右手一本で軽く数回振った。

 そのたびに、ヒュッ!ヒュッ!と、刀身が空気を裂く音がしたが、トキオにはその剣筋がほとんど見えなかった。

(軽く振ってこのスピード!勇者様、とんでもないぞ!)


「うむ。これはなかなか良いな。今度、私にも1本作ってくれるか」

「は!かしこまりました。気に入っていただけて光栄です。私自身は作れませんので、この刀を作った鍛冶屋に依頼しておきましょう」

「よろしく頼む」

 そう言いながら勇者がライキリをトキオの方に差し出したので、トキオは勇者のところまで進んで行って受け取った。


「では、その刀で私に切りかかって来てくれ。私を殺すつもりでな」

「・・・は?」

「それでお前の腕がわかる。殺すつもりでないと真の力はわからないからな」

 トキオは当惑したが、すぐにその意図を理解した。


(先ほどのスピードから言って相当な実力なのは間違いない。つまり、お前ごときにはかすらせもしないという絶対の自信があるんだな。よーし、それなら)


「わかりました」

 トキオは、ライキリを正眼に構えた。

 しかし、切り込もうにもまったくどこにもスキが見当たらなかった。

 トキオは、この時点で完全に勇者に飲まれていた。


 しかし、構えたままじっとしているわけにもいかないので、まずは様子見として、鋭く踏み込みながらギリギリ届かない距離で喉元目がけて突きを放ってみた。

 それは勇者の喉元2センチほどのところで止まったが、勇者は微動だにしなかった。

 トキオはすぐに刀を引いて下がった。


(うわ!あそこまでの突きを完全に見切るとは!ホントにただもんじゃないぞ、この人)


 それからトキオは、本当に勇者を切るつもりで同じ速さで踏み込みながら、横、斜め、縦と色々な方向から勇者に切りかかったが、勇者はすべて、切っ先がギリギリ触れない距離を残して最小限の動きで躱した。


(うおー、すべてギリギリで躱すとは!俺にはできねー!・・・よし、それなら)


 トキオはやや腰を落とすと、右ひじをわき腹に付けるように刀を引いてから、今までの倍のスピードで2段階に踏み込み、腕を一気に伸ばして勇者の喉元目がけて突きを放った。


 しかし、それも体を横に向けてギリギリの距離で躱された。


(ああ、これを躱されるようじゃ、何をやっても無駄だ)


 トキオは、後ろに下がり、すっと力を抜いて立つと、刀を鞘に納めた。


「うむ。最後の突きはなかなか見事だったぞ」

 勇者は微笑みながらそう言った。


(普通なら「もう終わりか?」とか言いそうだけど、そう言わないところが逆に怖いー!)



「では、格闘技の技を見せてもらおう」

 勇者はそう言いながら、右手でかかって来いという感じの仕草をした。


 トキオは、腰に巻いた拳銃と刀のベルトを外すと、それを後ろにいたミヒール司祭に預けた。



 それから、ゆっくりと勇者の近くまで歩み寄ると、やや半身の空手の構えを取った。


「勇者様、王都にも柔道が伝わっていると聞きました。勇者様はやってみられましたか?」

 トキオは、少しでも相手の戦力を把握しようと思って聞いてみた。


「いや、私はまだやっていない。お前が来たら直接習おうと思っていたからな」

 勇者は、真顔でそう言った。


(りょーーーかいっ、と!)



 トキオは、いきなりダッシュすると、右の正拳突きを放ったが、それは躱されることを想定してすぐに左足の前蹴りを放ち、続けざまに顎を狙って右足を蹴り上げた。


 しかしそれらは、またも最小限の動きで余裕をもって躱された。


「今のが柔道なのか?打撃系の技に見えたが」

「いえ、これは空手という格闘技です」

「ほう、そういうのもできるのだな。しかし、私は柔道の技が見てみたいのだ」

「・・・かしこまりました」


 トキオは柔道の構えをとって、勇者へゆっくとり寄って行ったが、勇者はまるで警戒していないかのように力を抜いてまっすぐ立ったままだった。


 トキオは、鋭く踏み込むと右手で勇者の襟元を掴もうとしたが、また、最小限の動きで躱された。

 それから、数回、左右の手で同じようにやってみたがすべて躱された。


(うーん、やはっぱりダメか―。しょうがない、少し反則っぽいけど・・・)


 トキオは一旦下がってから猛然とダッシュすると、勇者の目の前で大きく飛び上がってから顔面に向けて右手の突きを放ったが、それは躱されることを予想して着地後に素早く左腕に取り付くようなフェイントをかけてから、体にまっすぐダッシュして勇者の胸元を掴むと腕の力を利用して体を密着させた。


(よしっ!掴んだ!内股行け―!)


 トキオは、間髪を入れずに内股を放ち、トキオにはそれが見事に決まったように見えた。

 しかし、トキオの蹴り上げた右足が股に届く前に、勇者は自然な動きで足をずらしてかわした。


(なっ!すかされた!バカな!)

 トキオがそう思ったのと同時に、勇者は、掴んでいたトキオの手を左手で簡単に振り払うと同時に右手でトキオの胸を突いた。

 トキオはかなりの勢いで飛ばされ、数回横転した。


(ばかな!柔道の心得がないのに内股をすかしただと!信じられん!)

 トキオは、勇者のあまりの対応力の高さに背筋が凍る思いで勇者を見つめた。



「見事見事!素晴らしいぞトキオ」

 そこで、王が拍手をしながら言った。


「え?全然相手にもなりませんでしたが・・・」

 トキオは困惑して言った。


「いやいや、ジークフリートの体に触れることができた人間は15年ぶりぐらいじゃ。そうだろう?ジークフリート」

「はい。想像以上に良い動きで、見事に懐に入られました」

「しかも、ジークフリートに手を出させた人間をワシは知らん」

「はい。最後は、勇者になる前のことですので、10代のころかと思います」


(ええー!なにそれー!じゃあ、人間相手なら別次元な無敵さってこと?とんでもねー!)


 トキオは呆れかえって、先ほどの背筋が凍る思いが逆どこかに吹き飛んでいた。

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