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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第71話 トキオ、お城を堪能する

 部屋を出てすぐ、キロウ司教が言った。


「ああ、申し遅れましたが、私はキロウと申しまして、この聖光教団本部で司教の職についております」

「キロウ司教さんですね。よろしくお願いします」

 トキオは、そう言って歩きながら軽くお辞儀をした。


 教団本部の外に出ると、真っ白い大形の箱型馬車が待っていた。

 そこら中にごてごてと装飾が付いており、屋根の上には光を表現しているのか、大きな星のようなものが飾られていた。


(うわー、思いっきりメルヘンな馬車だなー。討伐に行くときに乗ってるのと全然違うー)


 馬を見ると、2頭立てだったが、両方ともたてがみから足まで全身真っ白な馬だった。


「プッ」


 トキオは、アウレラと飲みながらトキオが貰える報奨のの当てっこをした時の会話を思い出して思わず笑ってしまった。


「どうしました?何かおかしな部分がありましたか?」

 ミヒール司祭が慌てたように聞いてきた。


「あ、いや、ただの思い出し笑いだから」

「そうですか・・・それでは、どうぞ」

 ミヒール司祭は怪訝そうな顔をしたが、手でトキオに馬車に乗るように促した。


 トキオが乗り込むと、中も真っ白なうえ、座面と背もたれも厚いクッションで、これまた、いつも乗っている馬車とは全然違っていた。


(アウレラは教団本部の人は司祭でも相当位が高いって言ってたから、司教さんともなるとこんな馬車が当たり前なんだろうな。どの世界でもそういうところは同じか)


 トキオはそう考えて一人で納得した。




 お城は思っていたよりかなり遠く、馬車の速度がゆっくりだったせいもあり20分もかかった。


 坂を上り始めてお城の姿がだんだん大きくなってくると、中世のヨーロッパのお城のようなその姿にトキオはワクワクとドキドキがどんどん高まって行った。


(すげーすげー!今から俺はあそこの中に入るんだよな!うひー!)




 馬車は、3つ門を通過してから城の入り口に横付けした。

 どの門にも数名の警護の兵士がいたが、司教の馬車はフリーパスのようで、途中で止められることはなかった。


 馬車を降りると高さ5メートルはあろうかというような巨大な扉があったが、その扉はすでに外側に向かって開かれており、その中央には白い背広型の軍服を着て腰から剣を下げた40歳ぐらいと思われる背が高くてがっしりした体形の男が立っていた。また、扉に貼りつくように槍を立てて持った兵士が一人ずついた。


 しかし、トキオは、それらの人物には一瞥をくれただけで、すぐにキョロキョロと左右を見渡した。

 それは、お城の建物から何本か延びた回廊の先に円柱状で上に赤く尖った円錐状の屋根を乗せた尖塔がいくつも建っていたからだった。


(すげー!本物の中世のお城だー!外壁も頑丈そうで、やっぱりシンデレラ城とは全然違うー)


 そう思いながら、その尖塔の中でひときわ高いものに見とれていた。


「トキオさん、どうされました?行きますよ」


 そこで我に返った。


「あ、すみません!」


 見ると、ミヒール司祭とキロウ司教はすでに建物の中に入っており、白い軍服を着た男の脇に立っていた。


 トキオが小走りで二人に追いつくと、


「あなたが異世界から来られた方ですか。思ったよりお若いんですね」

 白い軍服の男が手を差し出しながらそう声をかけて来た。


 トキオはその手を取って握手した。

「はい、トキオと言います」

「私は、近衛師団の師団長を務めておりますゴットハルトと申します」

「近衛師団!王様の警護をされている方ですね」

「はい。これからお世話になると思いますのでよろしくお願いします」

「え?いえ、私なんか大した人間じゃないですから」

「あれだけのことを成し遂げられたのにご謙遜されるとは。人格者でもいらっしゃるようですね」

「え?いえ、謙遜では・・・」

 トキオがそう言いかけたところで、ゴットハルトはハッとしたように背筋を伸ばした。

「ああいけない。王がお待ちです。急ぎましょう」


 そう言うと奥へ向かって手を差し出しながらキロウ司教と並んで歩き始めたので、トキオとミヒール司祭はその後ろからついて行った。


 さらにその後ろからは、扉の所に立っていたのとは別の兵士が二人、少し離れてついて来た。


(あれ?もしかして俺、要人扱いで警護されてる感じ?)


 トキオはそう考えて少しワクワクした気分になったが、すぐに入口から続くホールの広さに圧倒されて思わず天井を見上げてしまった。


(うわっ!天井たけー!東京ドームぐらいあるんじゃないの?)


 それから左右を見たが、何本も建っている太い柱の装飾が見事だったり、その先の壁の壁画が素晴らしかったりと、どれもが感動するのに十分だった。


(左の壁画は天使みたいなものと裸の男女が描いてあるから宗教画なのかな。右の壁画は、馬に跨って剣を振り上げた派手な軍服を着た兵士が描いてあるから、歴史画なんだろうな)


 そんなことを考えながら、もう、本当にお上りさん状態で城の中を進んで行った。


「お城の中のものが珍しいですか?」

 しばらく行くとミヒール司祭が言った。


「あ、ああ、キョロキョロしててごめんなさい。こんなの初めて見たので。俺は向こうの世界でもただの市民だったからね」

「確かに、普通の市民はお城には入れないでしょうね」

「それもあるけど、俺のいた国のお城はもっと違った形をしていたし、そのお城も過去の建造物として観光名所になっているだけで、お城に住んでる人はいないからね」

「え?それでは、国王はどこに住まわれているんですか?」

「あー、俺の国には王様はいないんだよ。民主主義国家で国民に選ばれた人が議会制で政治をしてるんだ」

「そうなんですか!よく理解ができませんが・・・」

「説明すると長くなるから、今度時間があった時に説明するよ」

「わかりました。よろしくお願いします」


「着きましたよ」

 そこで、ゴットハルトがそう言って足を止めた。


 ゴットハルトの前には、見事な細工が彫り込まれた頑丈そうで大きい扉があった。


(ついに王様や勇者と面会か―!異世界というからには、そのシーンは必須だよな!)


 トキオは、そう考えて心臓の音が聞こえて来るんじゃないかと思うほどドキドキした。





 そのころ、王都の片隅では・・・


「おーい、帰ったよ」

「おや、あんた、おかえり。今回は早かったねえ」

「南の辺境をいくつか周る予定だったんだけど、アティムの教会に行ったらちょうど王都に帰るっていう教団本部の司祭さんに会ってね。それで、まっすぐ乗っけて来たってわけさ」

「おや!そんな偉い人を乗っけて来たのかい。賃金ははずんでくれたかい?」

「それがなあ、驚くなよ・・・これだ!」

 そう言いながら、男は懐から金貨を取り出した。


「あんた!それ金貨じゃないか!そんなに貰えるなんて、どんな人を運んできたんだい!」

「いや、それがさあ、これをくれたのは司祭さんじゃなくて一緒に乗ってた冒険者の人なんだよ」

「え?冒険者がなんでそんなに金持ってるんだい」

「どうもなあ、ただの冒険者じゃないみたいなんだよ。歳は20代半ばってとこなんだけど、司祭さんはその人に敬語でしゃべってるのに、その人は敬語使ってなかったからね。しかも、途中で襲って来たオクスドンをあっという間に一人でやっつけちゃったからね」

「えー?一人でかい!?しかも、あっという間にって・・・どのくらいの時間で?」

「そうだなあ、せいぜい10秒ぐらいだったんじゃないかな」

「10秒!?あんた、ウソついてんじゃないよ!」

「いや、ホントだって!なんでも、拳銃とかいう火薬を利用した武器を持っててな、それでオクスドンを撃ったらバッタリ倒れて動かなくなったんだよ。そこまでは2秒ぐらいだったかな」

「ホントかい!オクスドンがたった2秒で!」

「ああ、それから腰の剣を抜くとオクスドンに走り寄って、一振りで首を切断しちまったってわけさ」


「そりゃスゴい人に会ったねえ。驚きだよ」

「それで、そのオクスドンの頭から出て来たのがこの金貨なんだよ」

「ああ、なんか魔物の頭からお金が出るらしいねえ。冒険者と兵士以外には関係ない話だと思ってたけど・・・でも、金貨まで出るとは知らなかったよ」

「俺も驚いたんだが、グリベラーからも金貨が出るらしくって、その冒険者さんは、それを6枚も持ってるらしいんだよ。それで、もうお金はいらないって言って俺にくれたんだよ」

「金貨を6枚かい!若いのにスゴい人だねえ」

「あー、あれはホントにただもんじゃないな」


「しかし金貨かね・・・これで、馬車を買った残りの代金も1発で払えるね!」

「そうなんだよ!それと、娘たちにももっといい服を買ってやれるし。なんなら、もっといいアパートにだって引っ越せるぞ」

「調子に乗るんじゃないよ。こんなの懸賞くじが当たったようなもんじゃないか。毎月の収入は変わらないんだから、高いアパートなんかに引っ越したらあっという間になくなっちまうだろ」

「ああ、そうか。そうだな」

「それと、あの子たちを上の学校に行かせるお金もいるだろ」

「そうだな。じゃあ、馬車の代金を払ったら、その資金にとっとくか」

「それがいいよ。馬車の代金が払えただけでも御の字じゃないか」

「そうだな。あの人に、もっとちゃんとお礼を言えばよかった」

「まあ、それだけの人ならすぐに有名人になるだろうから、また、会う機会はあるさね」

「そうかな・・・いや、きっとそうだな。また、俺の馬車に乗ってくれるかもしれないから、その時までマジメに馭者をやってるよ」

「そうそう、それが一番だよ」


 根っからの庶民だったが、割と堅実な夫婦だった。

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