第70話 王都の輝き
※2011/1/17 13:10記
すみません、馬車の速度をちゃんと計算してなかったです(^^;)
3日じゃ近すぎるので5日に変更しました。
王都は、馬車で移動しても5日かかる距離だった。
トキオたちは1泊目の街を出発してすぐ、とある街の近くを通りかかった。
「あれ?この街見たことあるぞ」
「オーリーの街ですね」
「ああ!前に護衛で来た街だ!食べ物がおいしかったなあ~」
「そうなんですね。私もトキオさんを捜してこの街に来たことがあります。その時は、ギルドの前で馬車を待っておりましたら、こんなご時世なのにはしゃいでいる黒くて細身の反りのある剣を下げた若い冒険者と、同じ形の白い剣を・・・」
そこまで言ったところで、ミヒール司祭の目にトキオが馬車の中に立てかけてあったライキリが目に入った。
「あ!これです!・・・って、まさか!・・・トキオさん、護衛でこの街に来たのは12月の10日ぐらいだったりしますか?」
「え?・・・うーん・・・あ!明後日は聖光祭で柔道大会だって話をしたから12月10日だ!」
「もしかして、同僚の女性が3人組の男に絡まれたのを助けたりしました?」
「そうそう、そんなことあったよ。よく知ってるね」
「そして、その女性の胸を揉もうとして平手を・・・あ、こんな話は余計でした」
「えー?そんなことまで見てたの?あれはジョークだったんだけど」
「そうでしょうとも!しかし、なんということだ!すでにその時、トキオさんに会っていたとは!」
「・・・ああ、そう言えば、ギルドの前を通り過ぎる時、司祭さんが立ってたような記憶があるなあ。なんでこんなところにいるんだろ?って思ったんだよ。あれがミヒールさんだったのか」
「はい、はいそうです。なんという失態。もしかして、その時すでに腰に拳銃を下げてらっしゃいました?」
「ああ、そうだね」
「右の腰に見慣れない物を下げているな、というのは思ったんですが、遠くて良く見えなかったので何も聞かなかったんですよ。あの時、トキオさんに話しかけていれば!」
「まあ、もうしょうがないんじゃない?」
「しかし、1カ月も無駄にしてしまいましたので」
「もう、出会えたんだからいいじゃない」
「誠に申し訳ございません」
そう言って、ミヒール司祭は深々と頭を下げた。
「いや、俺に謝らないで。俺はなんとも思ってないから。それに、俺は冒険者がやりたいからこの世界に来たんだし」
「それはお伺いしましたが、やはり、一日も早く魔王を倒して魔物をこの世界から消し去らなければいけないのに、それが1カ月遅れてしまったということですから」
「でも、その間に、冒険者や農家の人たちに銃の撃ち方を教えることができたから、別に遅れたということはないと思うよ」
「なるほど、そういうことに使われていた時間だと言われれば、それはそれで有効な時間だったと言えますね」
「それに、俺の力が魔王討伐に役立つとは思えないし」
「いえ!トキオさんがもたらしてくれた情報を生かせれば必ず魔王は討伐できると信じております!」
「そう?・・・でも、冒険者の先には魔王がいるってのは昔から当たり前に思ってたことだから、魔王討伐の協力ならいくらでもするよ」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
そう言って、ミヒール司祭は、また頭を下げた。
その後、途中の街でさらに3泊し、最後の街を朝早く出発して王都に向かった。。
「このまま行けば、今日の午後の早い時間に王都に着けるはずです」
「そう、良かった。最初は初めての道が珍しかったし、街とかきれいな風景があるところは良かったけど、何にもないところを延々と走るのには少し退屈して来てたからねえ」
「申し訳ございません」
「だから、いちいち謝らなくっていいって。ミヒールさんのせいじゃないでしょ?まあ、俺のいた世界の自動車に乗れば半日で着く距離だなあとは思ったけど」
そう言ってトキオは笑った。
「ジドウシャ?」
「うん、人間が運転する機械で動く車ね」
「機械で動く車?それがそんなに速いのですか?」
「馬車に比べたら全然早いね。道が舗装されてないから、俺がいた世界と同じスピードでとはいかないけど」
「1時間にどのくらい移動できるんでしょうか?」
「高速道路ってところを走れば100キロだから・・・50メラマインぐらいだね」
「え!本当ですか!・・・驚きました」
「まあ、この道ならその半分てとこだろうけど」
「それでもスゴいです!どういう仕掛けになっているんでしょうか?」
「この世界の人にそれを説明するのは相当面倒くさいね。王都に着いてからでいい?朝早かったから眠くて」
「あ、お気遣いもせずすみません。どうぞ、お休みください」
「悪いね」
トキオはそう言うと、尻に敷いていたクッションを枕にして座席に横たわった。
ふと、ざわめきが聞こえたのでトキオは目を覚ました。
起き上がって窓の外を見ると、前にも後ろにも馬車がいて、向こうから来る馬車もひっきりなしだった。
道の端を歩いている人もかなりいた。
「なんか随分往来が増えたねえ」
トキオは、正面の椅子に座ったまま上半身をひねって前を見ていたミヒール司祭に話しかけた。
「あ、お目覚めになりましたか。王都が見えてまいりましたよ」
「え!ホント!?」
トキオは興味津々に、体をドアの方に寄せて前方を見た。
すると、まず、かなり遠くの右に見える山から、同じく遠くの左の山まで城壁がずっと続いているのが目に入った。
そして、その塀の向こうには、アティムでは見なかったような高い建物がいくつもそびえていた。
しかし、トキオの目を引いたのは、中央奥の小高い丘の上にそびえたつ立派なお城だった。
「うわー!さすが王都だなー!街がすごく大きい!それと、あの真ん中の丘の上に建ってるのが王様がいるお城?」
「はい、そうです。あれが、国王陛下の居城です」
「そうなんだー!早く近くに行って見てみたい!まるでシンデレラ城みたいだよ」
「シンデレラ城というのは、トキオさんの世界にあるお城ですか?」
「え?・・・ああ、そう」
トキオは、遊園地の説明をするのが面倒くさかったので、そういうことにした。
「お城には後ほどお伺いしますが、報告も兼ねて、まずは聖光教団本部に行って上職の司教に会っていただきます」
「お!それも興味深いね~。わかった」
それからトキオは、完全に異世界マニアモードになって、教団本部に着くまで、キラキラとした目で街並みを端から端まで細かく見続けた。
「さあ、着きました」
そう言われてトキオが見上げた建物は、思っていたよりはるかに大きく綺麗な建物だった。
「これが教団本部?」
「そうです。では、参りましょう」
トキオは、ミヒール司祭のあとについて歩いて行ったが、まず、入り口の大きさと見事な装飾に圧倒されて、お上りさんみたいにキョロキョロと・・・・・いや、完全にお上りさんになっていた。
中に入ると、ホールの広大さに圧倒され、ステンドグラスのような飾り窓の見事さにも圧倒された。
トキオは、ヨーロッパには行ったことはなかったが、ヨーロッパにある古い教会はこんな感じなんだろうなと思った。
「この部屋です」
そう言うと、ミヒール司祭は、ドアをノックした。
「どうぞ」
部屋の中から渋い声が聞こえたので、ミヒール司祭はドアを開けて中に入った。
「失礼します」
「おお、ミヒール司祭、戻ったか。今回は早かったな。何か良くないことでもあったのか?」
そう言うと、キロウ司教の表情は曇った。
「いえ、その逆です。お入りください」
ミヒール司祭の言葉で、トキオは部屋に入った。
その姿を見た途端、司教は目を丸くしたかと思うと、よろよろとトキオに方に歩いて来た。
「まさか、まさか」
「はい、ついにお会いできました。召喚者のトキオ様でございます」
「おお、おお・・・」
司教は、そう言いながらさらにトキオに近寄ると、両手でその手をしっかりと握った。そして、その目から大粒の涙をこぼした。
「よくぞ、よくぞこの世界にいらしてくださいました・・・ああ、お会いしたらお話したいことがいっぱいあったのに、言葉が出て来ない」
そこで、ハッとしたような顔になって、左の方に立っていた神父に向かって言った。
「キミ、すまないが召喚者様がお着きになったと魔導士様に伝えて来てくれ!」
「は!かしこまりました」
神父はそう答えると、トキオたちが入って来たのとは別のドアから出て行った。
「あ、失礼しました!こちらへどうぞ」
司教は、そう言うとトキオを応接ソファーの方へ案内した。
「どうぞ、おかけください」
司教は、そう言ってから両手をポンポンと叩いた。
すると、また別のドアから、若い男が一礼して入って来た。
「お茶を三つと茶菓子を頼む」
「かしこまりました」
若い男はお辞儀をすると出て行った。
「どちらの街にいらしたのだ?」
司教は、立ったままミヒール司祭に聞いた。
「アティムです」
「え!?そんな遠いところにか!」
「はい」
それから、司教はトキオの正面のソファーに座り、ミヒール司祭は、トキオの右手のソファーに座った。
「それでは、長旅でお疲れでしょう。それと、かなり退屈だったのではないですか?」
「いえ、初めて通る道だったので、興味深くて退屈はしませんでしたよ。体力はありますから、疲れもないです」
「そうですか、さすがは召喚者様です」
「召喚者って呼ばれるとなんかむずむずするなあ」
「あ、これは失礼しましたトキオ様」
「その、様もやめてくださいよ。自分の父親よりも年上の人にそう呼ばれるとなんだか居心地が悪いですよ。ミヒール司祭にもお願いして『さん』付けで呼んでもらってますから。俺は呼び捨てでいいって言ったんですが」
「それはこっちが呼びにくいですが・・・わかりました、では、トキオさんで」
「よろしくお願いします」
そこで、先ほどの若い男がお茶と茶菓子を持って現れ、静かにテーブルに置くと、また、一礼して出て行った。
「さあどうぞ、お召し上がりください」
「ありがとうございます。ちょうど喉が渇いてたんですよ」
トキオは、上品なデザインの湯飲み茶わん風のそれを取り上げたが、見た目も香りも紅茶のようだった。
少し、口で吹いてさましてから飲んでみると、味も紅茶のようだったが、この世界に来て飲んだ飲み物の中で一番おいしいと思った。
「おおー、美味しいお茶ですねー」
「気に入っていただけましたか。なによりです」
司教と司祭もお茶を口に運んだ。
「それで、この世界に来られてから今まで、どのような暮らしをされていたんでしょうか」
「アティムで冒険者をやってました」
「おお!すでに魔物を討伐されていたんですね!・・・最初からですか?」
「いえ、最初の1カ月はお金もなかったので森の中で魔物を狩ってお金と食料を得ていました」
「本当ですか!それは大変申し訳ございません」
「え?いえいえ、楽しかったから全然問題ないですよ。それに、これはミヒールさんにも言いましたが、俺自身が異世界に来たくて来たんですから」
「そうなんですか。それなら良いのですが・・・」
「気にしないでください。冒険者になってからはもっと楽しかったし、ドロップアイテムでお金も貯まりましたから」
「トキオさんは、すでに金貨6枚分ぐらいのお金をお持ちだそうです」
ミヒール司祭が言った。
「そんなにですか!驚きました!街の冒険者と言えば、少し前までは貧乏な方がほとんどでしたのに」
「今はみんな結構お金持ってますよ。グリベラーから金貨が採れるのが大きいですね」
「ああ、そうらしいですね。なるほど、納得しました」
そこで、部屋をノックする者があった。
「どうぞ」
司教がそう言うと、最初に部屋を出て行った神父が入って来た。
「魔導士長からの伝言です。国王陛下、勇者と、お城の謁見の間で待つからすぐに来られるように、とのことです」
「おお!そうか!わかった!・・・トキオさん、そういうことですので、お城までご同行願えますか」
「王様や勇者様や魔導士様に会えるんですね!」
「はい、そうです」
(ついにキター!リアル王様とリアル勇者が拝めるー!)
トキオは、非常にワクワクしてくるのを感じた。




