表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
7/557

第7話 ドロップアイテム

 あとの話で、アウレラは虫が苦手ということを書いたため、それと合うようにアウレラがフォドラの頭に手を突っ込む場面の記述を変更しました(2021/7/4 13:30)

「まあ、今日はフォドラだから、不意打ちだけ警戒してれば大丈夫だ。トキオは、真ん中を歩いてくれ」

「え?大丈夫だけど」

「いやいや、昨日、冒険者になったばかりだろ。今日はベテランがこんなにいるんだし、トキオが受けた依頼じゃないんだから用心した方がいいって」

「そう、わかった」

 トキオは、すでに7匹のフォドラを、しかも木刀で倒していたから特にフォドラを脅威とは感じていなかったが、実際にまだ冒険者初心者ではあるので、ここは言うことを聞いておくことにした。


 5分ほど歩いたところで、先頭を歩いていたテリットが、握った右こぶしを上げて皆を止めた。

「1匹いたぞ」

 テリットが小声でそう言って右前方を指さすと、そこには、木の手前で地面にある何かを食べているフォドラがいた。右半身が斜めに見えてる位置で、その距離は30メートルほどだった。

「さて、じゃあ手順は・・・」

 そうテリットが言いかけた途端、ヒユッ!という甲高い音がしてトキオの後方から矢が飛んで行き、頭を下げているフォドラの右目の上に突き刺さった。

 フォドラは、ばったり倒れると動かなくなった。


 トキオが振り返ると、弓使いのブロームが矢を放ったところだった。

「おいおい、いつになく素早いなブローム」

 テリットがブロームの方を見て言った。

「頭を狙えるからつい射っちまった」

 ブロームは苦笑しながら答えた。

「そうか。そうだった。じゃあ、今後は今までより簡単にいきそうだな」

 テリットはそう言うと、倒れたフォドラの方へ向かった。他のメンバーもついていった。


 フォドラに近寄ると、周りを全員で取り囲んだ。

「さて、頭の中を確認するんだが、単純に頭を砕けばいいのか?」

 テリットがトキオに聞いた。

「うん、そうだよ。俺がやるからちょっと下がってて」

 トキオがそう言って1歩前に出ると、全員が3歩ほど後ろに下がった。

 トキオは、腰から木刀を外してかなり力を込めてフォドラの頭に叩き付けた。

 グシャ!と言う音がして、頭蓋骨が砕けた。

「さあ、じゃあ確認するよ」

 トキオは、木刀を置いてからフォドラの頭に手を伸ばした。

「ちょっと待って」

 最後尾を歩いていたフォスが前に出てきて言った。右手にカブトムシのメスのような昆虫を持ち、左手には長さ10センチほどの小枝を持っていた。

「これは樹液を餌としてる昆虫だ。歩いている途中で見かけたんで捕まえて来た。この小枝の先に取った樹液を頭の中に落としてからコイツを入れればそれを舐めるはずだ。毒があれば、この昆虫がお陀仏になるからそれでわかるだろう」

「なるほどー」

 皆が感心して言った。


 フォスは樹液を垂らしてからフォドラの頭の中に昆虫を落とした。

 皆も寄ってきて、フォドラの頭の中を覗き込んだ。

 全員、黙ってしばらくそのまま待った。


 5分ほど経ったが、昆虫はまだ樹液を舐めているようだった。

「もう大丈夫じゃない?」

 アウレラが言った。

「いや、まだだ。もう少し待とう」

 テリットが答えた。


 さらに3分ほど経過した。

「もう、さすがにいいだろう」

 マルケルが言った。

「いや、まだだ。まだ動いてるが、毒が回っていないだけかもしれん」

 テリットが答えた。


 さらに2分ほど経過した。それでも、テリットは動こうとしなかった。

「もう、いいよ!あたしが探ってみるからどいて!」

 そう言うが早いか、アウレラは、地面に落ちていた小枝を2つ拾うと箸のように持ち、テリットを押しのけてフォドラの頭の中にそれを突っ込んだ。

「あ、待て!」

 テリットはそう言って制止しようとしたが、アウレラは構わず、昆虫を小枝でつまみあげると後方に放り投げてから、手を突っ込んで手探りで頭の中をまさぐった。さすがにぐちゃぐちゃになった頭の中は見たくなかったのか顔は背けていた。


「あっ、これね!・・・それとこれも」

 アウレラは、そう言いながらしばらく頭の中をまさぐったあと、握った手をフォドラの頭から抜くと、ゆっくりとみんなに見えるように開いた。

 手の中には、血まみれながら銅貨が7枚握られていた。


「おおおおおー!確かに銅貨だー!しかも7枚かー!」

 全員、興奮した顔で銅貨を見つめていた。


「ね?」

 トキオは、いたずらっぽく微笑んだ。

「すごいすごい!これは、すごく助かるよ!」

 マルケルがトキオの右手を両手で握りしめながら言った。


「アウレラ、大丈夫か?」

 テリットがアウレラを心配して聞いた。

「うん、特に何も変化ないわね。突っ込んだ手が荒れたり変色したりってこともないみたい」

 アウレラが、自分の右手の表裏を見ながら言った。


 そこで、低い唸り声がしたので全員がそちらのほうを見ると、側頭部に2本の角の生えた大きな熊のような魔物が茂みの奥から2足歩行でゆっくりとこっちに近づいてくるのが見えた。

「まずい!グリベラーだ!」

 みんな、一斉に自分の武器を出して身構えた。

「トキオ、あんたは初心者だから下がって!」

 テリットがそう言ってトキオを腕で後ろに押した。

「お前ら横からけん制してくれ。俺が頭を狙う!」

 ブロームが弓を構えながら言った。

「わかった!」

 残りの6人は左右に散って、少し距離を取りながらグリベラーに向かって構えた。



 トキオは、彼らがどのように連携して強い魔物を倒すのかに興味があったのと、トキオにとっては初めて遭遇する魔物で習性もわからなかったので、ここは言われたとおりに下がることにした。


 全員がグリベラーを取り囲むように立つと、背後の少し下がったところに位置したヴィリーが各自に強化魔法をかけたようだった。

(なるほど、彼が支援役なんだな)


 まず、グリベラーの左に位置したフォスが突進して槍でグリベラーの脇腹を突こうとしたが、グリベラーが右手を振って来たので素早く下がった。

 それを見たテリットが、反対側から前進してグリベラーの右足のふくらはぎ辺りに切りつけた。グリベラーは「グオウ」と唸ったが、左手を振って来たのでテリットはあわてて盾でガードしながら下がってギリギリのところで躱した。


 再度、フォスが槍を突いて、その動きに少し遅れてフォスの右にいたパーヴェルが短剣を投げた。短剣は、グリベラーの左の腰のあたりに刺さった。

 その攻撃で、グリベラーがパーヴェルの方を向いてテリットに完全に背を向けた格好になったため、テリットは素早く前進してグリベラーの左足のアキレス腱に切りつけた。

 グリベラーは、「ガアアアア」と吠えると左ひざをついて真横に傾き、さらに左手を地面についた。

 その瞬間、グリベラーの動きが一瞬止まったのを見逃さず、ブロームが正確にグリベラーの脊椎部分に矢を射た。

 グリベラーはうつ伏せに倒れた。

 すると、それを見たマルケルが走り寄って、矢が刺さっているのとほぼ同じ位置に力任せに斧を打ち込みとどめを刺した。


 トキオはその見事な連携を感心すると同時に、アニメで観てきた冒険者のパーティーが魔物を連携して討伐する様子をリアルで見られたことが嬉しくてワクワクしていた。

(いやー、これこそが冒険者のパーティーだよな!)


 その直後、トキオの右後方から、いきなりフォドラが飛び出して来てトキオに向かって突進して来た。その距離は10メートルほどだった。

 音でそれに気づいたテリットがそっちを見たが、駆け付けるには距離があり過ぎた。トキオも気づいてそちらを向いた。

「まずい!間に合わん!」

 そう叫んで、テリットは顔をゆがめた。


 しかし、次の瞬間、トキオは一瞬左に移動するしぐさをしたかと思うと素早く右に飛びながら剣を抜き、フォドラに向かって水平に切りつけた。

 剣は、トキオの動きにつられて右に移動しようとしたフォドラの口に水平に飛び込むと、首から胴体を通ってフォドラの体を上下真っ二つに切り裂いた。

 フォドラは、体の上と下が分離した状態で地面に倒れ、そのまま動かなくなった。



 他の7人はその様子をあっけにとられて見ていた。


「・・・あんた、強いじゃないか」

 テリットが、寄ってきて感心するというより驚いたという声のトーンで言った。


「ああ、まあ、剣道、いや、剣は子供のころから鍛えてるし、フォドラは今までに何匹か討伐して、だいたいの動きは分かってたからね」

 トキオは冷静な口調で答えた。

「いやー、それにしても見事な動きだったよ。かなりの腕前だと見た」

「うーん、この世界じゃどうだろうねえ。知らない魔物が出てきたときにはこんなにうまくいかないと思うし」

「あんた、さっきも『この世界』って言ってたけど、それはどういう意味だ?」

「え?・・・ああ、うちの村じゃよその土地のことをそう言うんだよ。方言みたいなもの?」

 トキオは、少し焦りながらごまかした。

「へえ、変わってるなあ」

 テリットは特に疑問は持たなかったようだった。


「それより、見事!さすがに手馴れてるねー。素晴らしい!」

 トキオは顔を輝かせながら拍手して言った。

「まあ、今回はいつもより多い人数で攻撃できたから割とうまくいった方だな。グリベラーはデカいくせに動きが俊敏だからいつも手こずるんだよ。誰かがけがを負わされることも珍しくない」

「そうなんだー。俺も気を付けよう」

「そうだな。一人で遭遇したら、まず逃げることを考えることだ」

「わかった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ