第67話 最後で最初の夜
「へ?なんで俺が王都まで行くの?」
「まずは、今までの功績を讃えまして、国王陛下から報奨が支給されます」
「ええー!?」
「それから、こちらの方が重要なんですが、魔王討伐のために共闘していただきたく、勇者様と魔導士様たちがお待ちです」
「マジでっ!?なんかデカい話になってない?俺自身にそんな力はないよ」
「とんでもございません。我々聖光教団の人間はもちろんですが、勇者様も召喚者様が必ずや力になってくれるとお考えです」
「ええー!?それって、すごいプレッシャー・・・俺は普通の冒険者でいいんだけど。どうしても行かないとダメ?」
「なにとぞお願いします。一度会っていただくだけでも結構ですから」
「うーん・・・まあ、個人的には勇者や魔導士がどんな人たちかは興味あるし、王都にも一度行ってみたいとは思ってたんだけどね」
「そうですか!それではぜひ!」
「・・・会うだけだよ。それでも、王都は遠いからパーティーのメンバーにしばらく留守にすることを話しておかないといけないな・・・出発は明日にしてくれる?できれば10時ぐらいで。あ、支部長にも言っておかないとだ」
「了解いたしました。それでは、10時にギルドにお伺いします。出立する前に、ギルド支部長には私からお話をしておきます」
「あ、そう。それは助かる」
その場はそれで別れた。
ミヒール司祭はこの街の教団の施設に泊めてもらうと言って教会の方へ歩いて行った。
トキオがギルドに入ると、アウレラが一人で何かを飲みながら休んでいた。
「テリットとブロームは?」
「あ、トキオ。二人とも帰ったよ」
「そうなんだ。みんなに任せて悪かったね」
「何の話だったの?」
「実はあの人、王都の教団本部から来た司祭さんで・・・」
「え!そうなの!?」
アウレラは、トキオの言葉を遮るように驚いて言った。
「え?そんなに驚くことなの?」
「教団本部の司祭さんって言ったら、ものすごく地位の高い人よ!そんな人が、わざわざこんな僻地まで来るなんて。どういうこと?」
「うーん、王様が俺になんかくれるんだって」
「え!なんで!?」
「ステータス画面とか、ドロップアイテムとか、柔道とかを広めた功績だってさ」
「あー、それなら納得できるな」
「そうなの?」
「そうよ。その功績ってものすごいと思うよ」
「そんなものかなあ」
「それで、どうやって貰うの?」
「王都まで来いって」
「え?王都に行くの?」
「うん。それで、勇者と魔導士にも会ってくれって」
「え?勇者に会えるの!?・・・うらやましい!」
「は?なんで?」
「だって、勇者ってものすごい美形で背が高くてスタイルも抜群で、めちゃくちゃカッコいいって噂よ。あたしも会ってみたかったなあ」
「そうなんだ。へえ~」
「で、いつ行くの?」
「明日。朝の10時にここで待ち合わせしてる」
「ええー?そりゃまた急な話ねえ」
「そうなんだよ。そんなわけでしばらく留守にするから、今日は飲みに行かないか?」
「いいわよ。しばらくいなくなるんなら、ガッツリ飲みましょう!」
「いいねえ」
「じゃあ、あたし、一回家に戻って遅くなるって言ってくるから、向かいの居酒屋で待ってて」
「わかった」
そう言って、二人は一旦分かれた。
トキオは、フーゴの店に行ってあるものを受け取ってからアパートに戻り、普段着に着替えて「痛飲上等!」に行った。
一人で飲み始めてすぐ、アウレラはやって来た。
見慣れない青を基調としたぴっちりしたスカートの普段着姿で、トキオは、いつもよりかなり色気を感じてドキドキした。
「青い服って珍しいね。初めてじゃない?」
「うん。赤系統が好きだから青いの持ってなかったんだけど、お店でこれを見たらどうしても欲しくなっちゃってね」
「そうなんだ」
それからしばらく、トキオはアウレラの服を眺めていた。
「ジロジロ見ないでよ!・・・やっぱり青は似合わないかな?」
「いや、そんなことないよ。似合ってるよ。ただ、アウレラっていつも胸の開いた大胆な服を着てるなあって思って」
「やだ!何言ってんの!・・・でも、それはこのデザインが動きやすいからね。特に、あたしって胸が大きいでしょ?だから、こんな風に胸元の開いた服じゃないと腕がうまく振れないのよね。もっと小さい胸に生まれたかったよ」
「そ、そうなんだ」
アウレラが自分の胸を強調しながらそう言ったので、トキオはさらにドキドキした。
すぐにアウレラが注文したお酒は運ばれてきた。
「それじゃあ、トキオの報奨を祝して、カンパーイ!」
「カンパーイ!」
二人は、そう言ってグラスを合わせてから飲み始めた。
「あー、どうせ褒美貰えるから、今日は俺のおごりね」
「ホント!嬉しい!」
アウレラは本当に嬉しそうな顔をした。
トキオは、その顔が可愛くて、またドキドキした。
「で、褒美って何を貰えるわけ?」
「さあ?そう言えば聞かなかったな」
「えー?気にならないの?」
「うーん、特に欲しいものとかないからねえ」
「またー。欲がないわねえ」
「何か買いたいものがあっても、今はお金がたっぷりあるから大抵のものは買えちゃうしねえ」
「そうよね。グリベラーから出て来る金貨でみんなかなりお金持ちになったからね」
「そうなんだよな・・・でも、面白いから何が貰えるか考えてみようか」
「あ、それいいね!じゃあ、あたしから!・・・・・お金じゃない気がするわねえ・・・そうねえ、値打のある古い壺とか?」
「いらねー」
トキオが即座にそう言うと、二人は大笑いした。
「じゃあ俺の番・・・・大きな宝石のネックレス?・・・もっといらねー」
「ぎゃはははは!」
さっきよりさらに大きく笑った。
「じゃあじゃあ、全身に宝石がちりばめられた防具ってのは?」
「使えねー」
「ぎゃはははは!」
酒のせいもあって、二人は腹を抱えて笑った。
「他には・・・あ、そこら中に金で刺繍がしてある高そうなごてごてした服とか?」
「ああ、それはあるかもね」
「それもいらねー」
「ぎゃはははは!」
「あ!前にみんなで買ったらって言ってたようなトキオ専用の馬車とか。専属の御者付きで」
「それはありそうだけど、きっとゴテゴテした装飾で飾られた、いかにも貴族が乗ってそうな箱型の馬車だったりするんじゃない?」
「あ、絶対そうなりそう!しかも、きっと真っ白い馬が引いてるのよ」
「討伐に行きづれー」
「ぎゃはははは!」
「逆に、金貨1枚とかだったらどうする?」
「俺的にはかさばらなくて助かるけど、見た目がショボ過ぎてガッカリするだろうな。それに、今や金貨は珍しくないからな」
「そうよねえ。それはないか・・・あ!逆に大きな部屋いっぱいの財宝だったらどうする?」
「置くとこねー」
「ぎゃはははは!」
「さすがにそんなにはくれないでしょ」
「そりゃそうよね」
「しかし、こうやって考えると、お金持ちがくれそうなもので欲しいものないなあ」
「うーん、そう言えばそうねえ・・・あ!あたしは高そうなドレスだったら欲しいかも!」
「あ、やっぱり女の子なんだねえ」
「なによそれ!ひどくない?」
「きっと、あたしたちが予想もできないようなものをくれるんだよ。あたしたち庶民には、王様の考えなんかわかるわけないし」
「あー、案外そうかもね。ま、サプライズになっていいんじゃない?」
結局結論はでなかった。
それからは、最初に出会った時の話から、魔物の頭部から初めてドロップアイテムを取った時の話、魔物の肉を食べた話、ゴブリン討伐の話など、今まで一緒にやったことの話で盛り上がり、二人ともすごい量のお酒を飲んだ。
「トキオ、アウレラ、そろそろ店を閉めるわよ」
店の給仕係のお姉さんが寄って来て言った。
「えー?もう閉店?しょうがないなあ」
「まだ飲み足りないわね」
会計をして外に出るとアウレラが言った。
「えー?でも、お前もう相当酔ってるぞ」
「まだ大丈夫よ!・・・そうだ!トキオの家で飲もうよ。そしたら酔いつぶれても平気だし」
「え?うちで?」
「お酒はある?」
「一応、家でも飲んだりするから、ボトルが何本かあるけど」
「じゃあ決まり!行きましょ行きましょ」
アウレラはそう言うと、トキオと腕を組み、半ば引っ張るようにトキオのアパートに向かって歩き出した。
トキオは、若い女性、しかも、美人で、今、腕に当たってる巨乳の女性が家に来るのかと思うと心臓が飛び出しそうだった。
「おー!ここかー!わりと綺麗にしてるじゃない!」
「ああ、暮れに掃除したからね。普段はこんなに綺麗じゃないよ・・・あ、ブーツ脱いでね」
「え?」
「うちの村じゃ、家の中では靴は脱ぐんだよ。その方が汚れないし、床にも座れるしね」
「へえー、そうなんだー。面白いねー」
そう言いながら、アウレラは素直にブーツを脱いでトキオの部屋に上がった。
床にはギルドの柔道教室用に作った畳に似たものと同じものが敷いてあった。
「よーし!じゃあ、飲もう飲もう!」
アウレラはそう言うと、棚の上に置いてあったお酒のボトルを勝手に取り、これまた、目についたグラスを二つ勝手に取って床に胡坐をかいて座った。
トキオは、その正面に座ったが、ふと見るとスカートの下からパンツがハッキリ見えていたため、この日一番ドキドキした。
でも、そのまま見ていたいという衝動に勝てず、アウレラに気付かれないようにチラチラと見ながら、それを肴に酒を飲んだ。
「それにしてもトキオさー」
トキオが、もうかなり回ってるなーと思った時、アウレラが言った。
「ここんところ、ちょっとクロアと仲良くし過ぎじゃないのー?」
「ええっ?」
「だって、いつの間にか二人で魔法の研究とかしてるしさー」
「ああ、あれはどっちかっていうとクロアに強引につき合わされたって感じで・・・」
「言い訳すんな!もっと、あたしと仲良くしろ!」
アウレラは、急に顔を近づけて来たかと思うと、しばらくじっとトキオの顔を見つめてから、さらにゆっくりと顔を近づけてキスをしてきた。
トキオは驚いたが、アウレラがそのままずっとキスを続けたので、スイッチが入ってしまい舌をアウレラの口に入れた。
そうしたら、アウレラも舌を絡めてきたので、そのままましばらくキスを続けて、ゆっとりとアウレラを下にして寝転がった。
かなり長いキスの後、下からトキオの顔を見つめながらアウレラが言った。
「あたし、トキオのことが男として好きなのかどうかはわからないけど、トキオと一緒にいるのが楽しかったから、トキオが他の女の子と仲良くしてるのは気分良くなかったし、トキオがしばらくいなくなるって聞いたときはすごく寂しかったんだよ」
そう言われてよくよく考えたら、自分もアウレラに好意は持っているが、それは、以前から憧れていた美人巨乳冒険者と一緒のパーティーで魔物討伐ができているということが嬉しいだけで、恋とかとはちょっと違う気がした。
トキオは、美人も巨乳も大好きだったし、アウレラが胸元の大きく開いた服を着ていたからそれにはいつもドキドキしていたが、アウレラを恋人にしたいほど好きかというと少し違う気がした。
以前に彼女がいた時は、四六時中その子のことを考えていたけど、アウレラと会っていないときは、実はそれほどアウレラのことを考えてはいなかった。
それでも、しばらくアウレラの顔が見られなくなるのは本当に寂しかった。
「俺も同じだよ。今回、王都に行くことになって一番残念だったのは、アウレラとしばらく会えなくなることだった」
そう言ったとたん、アウレラが頭を上げてまたキスをしてきた。
トキオは、ゆっくりと覆いかぶさってしばらくキスをしていたが、完全にスイッチが入ってしまい、右手でアウレラの胸を揉んだ。
アウレラは一瞬、その手首をつかんだが、すぐに離した。
「トキオとだったらいいよ。でも、あたしこういうの初めてだからやさしくしてね」
「え?こんなに美人なのに男と付き合ったことないの?」
「何人かに言い寄られたけど、あたしは、冒険者として少しでも多く魔物を討伐することしか頭になかったから、そんな気になれなかった。それに、トキオほど一緒にいたいと思った男もいなかったし」
「そうか・・・」
それからはもう、会話はなかった。




