第65話 Lv19の威厳
トキオは、次の日の朝、起きるとすぐ、ステータス画面を確認した。
すると、光魔法のレベルが19に上がっていた。
「ここのところ、結構、光魔法を使ったから、またレベルが上がってる。でも、確認したかったのはそこじゃなくて・・・」
トキオは、ステータス画面の
【特殊魔法属性】
光 Lv19
と書かれている部分をタッチした。
すると、下のように表示された。
・閃光弾:フライシャ
フライショット
・防壁 :バリッド
バリッダー
・反射 :リフレック
リフレッカー
「ああ、思った通りだ。新しく別の魔法が使えるようになってる。昨日、クロアが言ってた通り、これらはそれぞれ上位魔法なんだろうな。ここはタッチしてみなかったから気づかなかったな。レベルが上がると上位魔法が使えるようになるなんてことは、アニメやゲームじゃよくある話なのに、魔法のことはあまり気にしてなかったからすっかり忘れてたよ」
「軍や上級魔法使いから質問を受けた時に、これは使えるな」
トキオは、そうほくそ笑むと、着替えてギルドへと出かけて行った。
ギルドに着くと、予想していた通り、アティムの出城にいる王国軍の師団長が上級将校二人と上級魔法使い二人を連れて冒険者ギルドにやって来ていた。
トキオは、支部長に呼ばれて事務室へ行った。
そこで、これまた予想していた通り、昨日、ヒドラを倒した魔法と、これは予想してなかったが、オルトロスを倒した魔法をについて聞かれた。
オルトロスについてはすぐに納得してもらえたが、ヒドラについてはしつこく聞かれた。
「・・・ということは、あの魔女は水魔法を放っただけで、それと一緒にお前が光魔法を放って倒したということか」
上級魔法使いの一人が言った。
「はい、そうです」
「しかし、聞いた話によると、お前の光魔法は爆発属性だそうじゃないか。昨日、ヒドラを倒した魔法は消滅属性の魔法だったぞ」
「今まで使ってたのは確かにそうです。でも、レベルが上がったことで別の魔法が使えるようになったんですよ。それが昨日使った魔法です」
「なに?・・・ふむ、そういうことか。では、今、光魔法のレベルはいくつなのだ」
「19です」
「な、なに!?19だと!ばかな!」
「いや、ホントに19ですって。ここに能力値の測定器があるでしょ?それでわかりますよ」
「ああ、そうだな。支部長用意してくれ」
支部長は測定器を棚の上から持って来てテーブルに置いた。それは、20センチ四方ぐらいの薄い板と、そこから垂直に延びた画面で構成されるものだった。
(この世界はすごくローテクなのに、こんな機械があるのがわからないよな。まあ、魔法があること自体普通じゃないから考えてもしょうがないけど)
トキオはそんなことを考えながら、右手のひらをその薄い板の上に置いた。
すると、光属性がLv19であることと、火属性がLv7、水属性と風属性がLv5であることが表示された。
光属性の文字の下には、朝、トキオが確認したのと同じように、
・閃光弾:フライシャ
フライショット
・防壁 :バリッド
バリッダー
・反射 :リフレック
リフレッカー
というのが表示されていた。
「本当にレベル19だ!信じられん!・・・しかも、他に3つも違う属性の攻撃魔法が使えるのか!?」
「あ、ええ、まあ」
「どこで覚えた?」
「あー、またその質問か」
「なに?」
「あ、いや、実は知らない間に覚えてたんですよ。冒険者になる前に」
「なんだと!それは本当か!」
「あー、やっぱりこの展開か・・・ホントですって」
「どういうことだ?」
二人の上級魔法使いは顔を見合わせた。
「俺にも理由はわからないので、そのことをこれ以上聞かれても困ります」
「まあ、とにかくこのレベルですから、トキオがヒドラを倒したというのは納得していただけたと思います」
支部長が話を終わらせようとするように言った。
「ああ、確かにな。これでは納得するしかないな」
上級魔法使いのその言葉に、師団長も頷いていた。
「では、これからも魔獣や魔人が出たら協力を要請することがあると思うのでよろしく頼む」
「もちろんですよ。俺は魔物を倒すために冒険者をやってるんですから」
師団長の言葉にトキオは答えた。
それから、お互いに握手を交わして、師団長と上級魔法使いたちは帰って行った。
「ふう、なんとかなったな」
5人を入口のところで見送ってから、師団長がホッとしたように言った。
「なんとか納得してくれて良かった」
「ああ。しかしトキオ、その新しい光魔法ってのは、実際にはどういう魔法なんだ?」
「わかんない」
「は?」
「実は、俺も覚えてるのを知ったのはついさっきなんで」
「ええー?」
「クロアが、魔法のレベルが上がったことで上位魔法を覚えたって言うから、もしや?と思って今朝確認したら、覚えてた・・・ってことね」
「なんと、そういうことか!」
そう言って支部長は笑った。
そこで、ミレリアを含めた冒険者たちが寄って来た。
「うまくいったか?」
テリットが聞いた。
「ああ、大丈夫だ。トキオの光魔法がレベル19なのを測定器で確認したら納得してくれたよ」
「そうか、良かった」
「ええー!?レベル19!」
エドが驚いた声を上げた。
トキオがそっちを見ると、他にも驚いた顔をしている冒険者がいた。
「ありゃ?エドは知らなかったのか。まあ、また一つレベルが上がったみたいだけど」
テリットが言った。
「それって、上級魔法使いより上なんじゃないのか!?」
「そうかもな」
支部長が言った。
「だから随分前に、トキオについてはもう驚くなって言ったろ?」
そのテリットの言葉で皆は笑った。
「あれ?クロアは?」
トキオは、そこで集団の中にクロアがいないのに気づいた。
皆が飲食コーナーの方を振り返ると、クロアは一人で悠然と朝食を食べていた。
「おいおい、誰のためにトキオが苦労したと思ってるんだ。まあ、あいつらしいっちゃあ、らしいが」
マルケルが言った。
「すまんな」
パーシーがすかさず謝った。
「おーい、クロア―」
パーシーが少し怒ったような口調でクロアに声をかけて、そっちに歩いて行こうとしたが、
「いや、いいよいいよ。アイツだって色々と悩んでんだと思うよ」
トキオがそう言って制止した。
それから、クロアのところまで歩いて行った。
皆もその後をついて来た。
「おはよう。話はついたよ。問題なしだ」
「あらそう。まあ、そうだろうとは思ってたわよ」
「お前なあ」
パーシーががっかりした顔で言った。
「まあ、いいじやないか。実際に、ヒドラを倒してくれたのはクロアなんだしな」
「そうそう、クロアがいなかったら相当ヤバかったと思うぞ」
テリットとブロームが言った。
「そうよ。少しは感謝しなさい」
クロアは涼しい顔で言った。
「・・・まったく」
さすがに支部長もあきれ顔だった。
そのころ、ミヒール司祭はアティムからかなり南西に行ったウゼマスの街にいた。
「では、そのアルアビスという街に行ってみます」
「はい。うちの街の冒険者たちは、アルアビスの冒険者から柔道を習いましたが、アルアビスの冒険者も他の街で習ったみたいですので、そこで聞けばかなり重要なことがわかるんじゃないかと思います」
ミヒール司祭が、見送りに出て来たウゼマスのギルド支部長とそんな話をしていると、目の前を腰に拳銃を下げた冒険者が通った。
ミヒール司祭は、拳銃を初めて見たと思ったので、ギルド支部長に聞いた。
「あの冒険者が腰に下げているのは魔法道具ですか?見慣れない形をしてますね」
「いえ、あれは拳銃と言う火薬を応用した武器です」
「火薬を応用した武器?どういう仕掛けですか?」
「ああ、少しお待ちください」
支部長は、依頼掲示板を見ていたその冒険者のところに行って拳銃を借りて来た。
「これが拳銃です。この円柱状の部分を横に倒すと、ここに弾丸というものが入っておりまして・・・」
支部長は、そう言いながらシリンダを倒して弾丸を一つ取り出した。
「この筒状の物の先端が金属になっているんですが、中には火薬が入ってまして、お尻の方を拳銃のここに付いてる撃鉄で叩くと、火薬が爆発してこの先端の金属が飛び出すという仕組みになっています」
「ほお」
「これが非常に強力でして、頭に当たればグリベラーですら一発で倒せるので、討伐がずいぶん楽になったと、うちの冒険者の間では評判です」
「討伐が楽になった?・・・もしや!・・・この拳銃というものは昔からあったものですか?」
「いえ、うちの街に入って来たのは半月ぐらい前ですね」
「なんと!・・・いつごろどこで考案されたものだかわかりますか?」
「ああ、それならアティムというアルアビスのさらに先の街ですが、いつごろかまではちょっと」
「アティム!・・・それでは、考案した者の名前はわかりますか?」
「ええっと・・・拳銃を考案した人ってなんて名前だっけ?」
支部長は拳銃を借りて来た冒険者に聞いた。
「トキオだったと思うよ。そこにある、ダーツと、いつもやってる腕相撲やじゃけんも確かそうだ」
「なんと!なんと!なんと!」
「ど、どうされました?」
ミヒール司祭が急に涙を流し始めたので支部長はひどく驚いた。
「その方こそが、我々が探していた方なのです。ありがとう、ありがとう!」
ミヒール司祭は、そう言いながら支部長と拳銃を貸した男の手を両手で強く握ってから大急ぎで表に止めてあった馬車に飛び乗った。
「馭者さん、大急ぎでアティムの街までお願いします!」
「アティム?かなり遠いですよ。夜になるかもしれない」
「構いません!料金を3倍払いますからできるだけ早く!」
「お!そうですか!それなら、日のあるうちに着けるように飛ばします!」
「助かります!とにかく急ぎで!」
「はいよ。揺れるからその厚いクッションに座って、支柱にでも掴まっててくださいよ」
「わかりました」
「行きます!」
馭者は馬に鞭をくれると、街の東口に向かって猛ダッシュして行った。
その様子を、支部長と冒険者は呆然と見送った。




