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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第64話 報道規制

 アティムのギルドに戻ると、かなり遅い時間だったのにミレリアは受付に座って待っていた。


「あ!戻られたんですね!終わったんですか?」

「ああ、終わったよ」

 ブロームが答えた。


「良かった・・・魔獣相手だから心配してたんですよ」


「それがねえ、魔獣だけですまなかったのよ」

 アウレラが言った。


「え?」

「魔獣はおとりみたいなもんだったのよ。大量のオークに囲まれてね。今までならかなりヤバかったんだけど、この拳銃が活躍してくれて、それはなんとかなったんだけど・・・」

「まさか!魔獣に襲われて誰かがケガをしたんですか?」


「いや、軍の兵士が何人かやられたが、うちから行った人間で大きなケガをしたヤツはいないと思う」

 ブロームが答えた。

「魔獣も、トキオとクロアと、アルアビスの魔法使い二人が始末してくれたのよ」

「え?たった4人で魔獣を倒しちゃったんですか?」

「そうだけど、驚くところはそこじゃない」

 ブロームが、少し楽しそうな顔で言った。

「え?え?」


「そのあと、魔人が突然現れてね」

「え!?魔人ですか!」

「そう。でも、それはトキオが一人で倒した」

「えー!すごーい!」


「いや、その魔人がかなり頭の悪い奴で、しかも、俺たちを見くびって油断してたからね」

 トキオが答えた。


「でも、驚くところはそこでもないんだな、これが」

「え?え?え?」

「魔人が死んだと思ったら、地面の中からヒドラが出て来たんだよ。しかも、前に出て来たのよりはるかに大きいのが」

「えー!?前のだって、15マインぐらいあったんでしょ?それより大きなヤツですか?」

「そう。上級魔法使いが言うには、今回のが完全体で、前のはそうじゃなかったらしいんだな」

「そうなんですか!それで、そんなに大きなヒドラを軍や上級魔法使いはどうしたんですか?」

「ああ、全然相手にならなかったみたいだ」

「え?じゃあ、どうやって」

「お待たせしました。ここが一番驚くところだ・・・・・クロアが一撃で倒した」

「え、え、ええーーーーー!?」


「そこまで驚くことないんじゃない?それとブローム、その変にもったいつけた話の仕方やめて」

 クロアが言った。


「驚きますよ!前に、上級魔法使いや、軍直属の冒険者を含めて総がかりでやっと倒したヒドラですよ。しかも、その時よりもっと大きかったんでしょ?」

「まあ、今回使った魔法は大きさは関係ないわね」

「どんな魔法使ったんですか?」

「あー、そこ説明するのめんどくさいなあ。正直言って、かなり疲れちゃったしね」


 そこで、ミレリアはハッとした顔になった。

「あ!いけない!忘れてました!飲食コーナーに、皆さんが戻られたら食べていただくように夜食が用意してあります」

「なんだー、それ、早く言ってよ。あたし、お腹ペコペコなんだから」

 アウレラが言った。


「俺もー」

「俺もだ」

「私も」

 皆も同じだった。



「じゃあ、こちらへどうぞ。あ、お酒もありますからね」

「あら、いいわねー」

「じゃあ、クロア、お酒飲みながら話を聞かせてもらえます?」

「ええー?・・・まあ、しょうがないわねえ」

 クロアは、お酒で完全に釣られたようだった。


「トキオさんも、ぜひ!」

 ミレリアは、興味津々な顔で言った。


「うーん、まあ、討伐の打ち上げってことでいいかあ」


 そう答えてミレリアたちのあとをついて行ったが、


「あたしも隣で飲む!」


 そう言って、アウレラがトキオの腕にしがみついて来た。


 その体勢になると巨乳が当たるので、トキオは拒否する理由がなくなるのだった。



 皆で酒盛りを始めたら、一緒に討伐に行っていた者たちが徐々に戻って来たが、皆、クロアのところへやって来て、ねぎらいの言葉をかけたり、話を聞きたがったりした。


「もう、そんなにみんな別々に質問しないで!全員戻ってきたら話すから!まずは、ゆっくりお酒飲ませてよ!」


「わかったわかった」

「じゃあ、討伐が成功したことを祝して、乾杯だな」

「さんせーい」


「マルケル、音頭取りしてくれよ」

 ブロームが言った。


「ああ、わかった。じゃあ、みんな、恐怖の魔女の称号がウソじゃなかったクロアと、魔人を倒したトキオに乾杯!」

「かんぱーい!」


 そうやっていきなり盛り上がったので、そこからはもう、クロアとトキオの武勇談を肴に飲む、ただの酒盛りになった。





「・・・で、以上」


 パーシーは二人のギルド支部長への説明を終えた。

 馬車の中では話が終わらなかったで、結局、アルアビスのギルドに戻ってきて、支部長室ですべてを説明し終わったのだった。


「そうか・・・驚いたな」

「まったくだな」

 二人の支部長は、ひどく驚いていた。


「しかし、困ったな」

「そうなんだよ」

 ケリー支部長の言葉をすべて聞かずに、パーシーはあいずちを打った。。


「何がだ?」

 アルアビスのギルド支部長であるレジナルドが聞いた。


「いや、今回のことでクロアが王国軍に呼び出されて色々と質問されるんじゃないかと思ってね。上級魔法使いになるには色々とキャリアも必要だし、ギルドは軍とは別の組織だからいきなり軍の所属にさせられることはないと思うが、色々とクロアの仕事に支障が出る気がしてね。俺は、元々、あの子の腕は買ってたんだ」

「俺もだ。いつも態度は偉そうだが、あいつの魔法は本物だからな。まあ、ここまでスゴいとは思わなかったけど。それと、あの魔法を何度も使えと言われると、クロアの体に支障が出そうで怖いってのもある」


「そうか。それなら、軍には違う内容で説明した方がいいだろうな」

「ああ、俺たちも帰りの馬車の中でそういう話をしてたんだ」


「トキオがやったことにしたらどうだ?」

 ケリーが言った。


「ああ・・・いいかもな」

「トキオが光魔法を使えることはこの街の王国軍でもすでに知られている。しかし、前回のヒドラ討伐の時にも使わなかったから、ここらのような辺境にいる軍の関係者クラスじゃ、誰も実際の光魔法なんて見たことないはずだ。それと、光魔法は使える者がめったにいないから神格化されてる部分がある。だから、光魔法があれほど強力だったと説明すれば納得してもらえるんじゃないかな」

「確かに、トキオはクロアの左に立ってたから、上級魔法使いのいた位置からじゃクロアが水魔法を放つと同時にトキオが光魔法を放ったってことにしても納得はしてくれそうだな」

「でも、それじゃ、今度はトキオの仕事に支障が出るんじゃないか?」

 レジナルドが言った。


「いや、それは大丈夫だろう。今言ったように、光魔法は神格化されている部分があるから、そんなにしつこくは聞かれないと思う。それと、トキオの色々な功績は軍も認めているから、彼に強引に何かを依頼するということはしないだろう」

「ああ、確かにな。じゃあ、それでいくか。ここの冒険者にもそう話しておくよ」

「すまないが、お願いする。誰かが漏らす可能性があるから、真実を知っているのはごく一部の人間だけにしておいた方がいいだろう」

 ケリーは、そう言うと立ち上がった。


「じゃあ、パーシー、目撃していたうちの冒険者たちにも伝えないといけないから、早くアティムに戻ろう」

「そうだな」

「じゃあ、レジナルド、あとは頼んだぞ」

「わかった。気をつけてな。正面から出るとうちの冒険者に色々と聞かれるかもしれないから裏から出た方がいいな。戻って来た馬車がいるはずだから、好きなのを使ってくれ」

「ありがとう。じゃあ」


 ケリーとパーシーはレジナルドに一礼すると、アルアビスのギルドを後にした。




 ケリーとパーシーがアティムのギルドに戻ってみると、大宴会状態になっていて唖然とした。


「な、なんだこれは」


「ああ、支部長、パーシー、やっと戻ったか―」

 エドが二人を見つけるとそう言ったが、すでにかなり酔っている感じだった。


「お前たち、なんで酒盛りなんかしてるんだ?」

「えー?・・・だって、トキオとクロアの活躍で魔人と魔獣を2体も討伐したんだよー。お祝いしなきゃ―」

「ああ、そういうことか。しょうがないな」



 そこでケリーは、大きく息を吸い込むとかなりの大声で言った。

「みんなちょっと聞いてくれ!」


 皆は話すのをやめて一斉にケリーを見た。


「今日のトキオとクロアの活躍はみんなも知ってる通りだが、色々と王国軍から聞かれる恐れがある。真実の通りに説明するとクロアが大変なことになりそうだから、ちょっと違う説明をすることにした」


「あー、それそれ。今、みんなでそれも考えてたんだよ」

 エドが言った。


「お?そうか。結論は出たのか?」

「結論は・・・・・全部トキオがやったことにする!これしかないだろ?」


 その言葉でケリーはニヤッとした。


「なんだ、みんなわかっるてるのか。それならば問題ない。トキオもそれでいいか?」

「ああ、まあ、上級魔法使いも俺が光魔法を使うと思ってたみたいだから、だぶん、その方が納得してくれると思うよ。フライシャは、アルアビスの冒険者も見て知ってるけど、俺が使ったのが光魔法のすべてなのかは知らないし。軍の関係者なんて、今まで見たこともなかったらしいから、もっとわからないと思うんでそれが一番面倒がないんじゃない?」

「トキオが納得してくれれば問題はない。とにかく、みんなはクロアが何をしたかを口外しないで欲しい。家族にもだ」


「了解ー」

「わかったー」

「言わないよー」



「頼んだよ・・・じゃあ、飲もうか」


「なんだ、支部長も飲みたいんじゃーん」

 エドがそう言ったので、皆は笑った。



 しかし、この時はまだ、もうすぐトキオがアティムからいなくなるとは誰も思っていなかった。


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